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急斜面を逆手に絶好の借景! 目を落とせば室内にも本気の庭

2015年09月24日 ── 埼玉県・家づくり ── 20040

 狭い都心を抜け出して、のびのびと暮らしたいと、郊外へ出ることを決めたSさんご夫婦。安価に手に入れた急斜面の土地を活かそうと、庭と家をトータルで設計する建築家である勝田無一さんに相談。念願の自然のなかでゆったり過ごせる住まいを実現しました。

書いた人 茅野小百合

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    作った人 勝田 無一

    住んでいる人 夫婦+子ども2人

    敷地の特徴を生かした、吹き抜けと家のなかのテラス

    【写真】道路に面した部分は駐車スペースになっている。ゲートを入って、左右で折り返しながら玄関まで、アプローチが続く

    【写真】アプローチ部分。三角のデッキを右手にみて、玄関まで後少し。最後は段もゆるやかに

    【写真】草花を見ながら上っていけば、歩くのも楽しい。土止めにしている枕木はひとつ50〜60kgはある重たいもの。勝田さんと工務店さんがすべて運び上げた苦労の賜物

     街のなかの狭い家に住んでいたSさんご夫婦。通勤は不便でも広いところでのびのび暮らしたいと、郊外へ出ることを決めた。山の上の良い場所は手が届かず、安く手に入ったのは傾斜地。家を建てて、そこで生活するには外構の整備も必要だった。外に出て自然に触れることが好きだから、庭も楽しみたい。庭や外構も含めて、設計してくれる建築家を探していて、ガーデナー建築家の勝田さんに出会った。

    「景色も眺めたいし、庭仕事もしたい。作業の合間にちょっとお茶が飲めるようなところもほしい、というお話でしたから、インナーテラスをおすすめしました。インナーテラスというのは、土間のような半屋外の空間です。土間といっても暗い感じはなく、明るく開放的な空間です」と勝田さん。それまでの事例を紹介したところ、Sさんご夫婦も気に入り、庭と家をトータルで設計することが決まった。


     早速、現場を見に行くと、かなり急な勾配の傾斜地。敷地の奥へ向かって上っていき、道路の方をふりかえると、向かいの山の美しい稜線が目に入った。この景色を活かさない手はないと、Sさんご夫婦と勝田さんは話し合った。雄大な景色を味わえるテラスをつくり、大きな吹き抜けにして奥のリビングからも山並みを眺められるようにしよう、勝田さんの頭にイメージが広がっていった。

     そこで、ふと頭をよぎったのが、今後のこと。最も高くなっている敷地の奥に建物を寄せると、道路から家までは1階分ぐらいの高さをのぼらなくてはならない。今は元気なSさんご夫婦でも、年をとったら階段をあがるのが大変ではないかと、勝田さんはエレベーターをつけて渡り廊下で家までつなぐプランも提案した。しかし、エレベーターをつけるとなれば、それなりの工事になる。検討の末、エレベーターはあきらめることに。ゆるやかな勾配なら、家まで少し歩くのも悪くないだろうと、アプローチを工夫することになった。

    「上るのが大変だからといって、道路の際(きわ)に建てたのでは、せっかくの眺望がもったいないですから。やはり建物は1番上にして、アプローチガーデンを楽しみながら上がっていくのもいいだろうということになりました。そこで、玄関までのアプローチの道のつけ方も、延段やスロープで変化をつけました。最後は疲れてくるだろうからスロープにして、なるべく負担を感じさせないようにしています。道の両脇には草花を植えて、玄関までの道のりも飽きないようにしました」と勝田さん。

     そして、玄関先にはインナーテラスを設けた。何段ものぼってきた分、見晴らしは抜群に良い。斜面の上にあって、すっと外に出られないという意味でも、この家にはインナーテラスが適していた。インナーテラスは、屋根があり、窓や壁で囲まれた完全なる室内にある。隣接するリビングとの境には壁がなく、リビングの一角にテラス席があるような印象だ。室内ではあるものの、使い勝手は外の庭と同じ。土足であがれて、愛犬も駆け回れる。テラスをふちどるように作られた庭には、好きな植物を植えることもできる。もちろん、窓の外は最高の景色だ。

     この景色をなるべくそのまま切り取って、家のなかでも楽しめるよう、インナーテラスの部分は吹き抜けにした。大きく開いた窓を通して、リビングからも眼下に広がる街の景色と遠くの山並みが同時に視界に入る。「ちょうど夕日が沈むのも見えるんです。リビングは随分、楽しんでいただいているようですよ」と勝田さん。

     通勤時間が延びても惜しくない、自然を感じてゆったり暮らせる住まいが実現した。

    【写真】インナーテラスを2階から見下ろしたところ。ご主人が中国で買ってきたテーブルセットを置いて。奥の開口部は玄関につながる入り口、右側の階段をのぼった先はリビング。階段脇には愛犬の足を洗うための水道も

    【写真】最初に植えてあったのはマリーゴールド。「マリーゴールドの球根には土を耕せる良いバクテリアがいるんですよ。花が終わったらかき混ぜてもらうと、土が肥えます。その後は好きな花を何でも」とガーデナー視点のアドバイス

    【写真】リビング側からの眺め。インナーテラス、三角のデッキを介して、外の景色が一望できる。景色が活きる、大きな吹き抜けは勝田さんの得意分野

    廊下に洗面スペースを置き、朝日に包まれて歯を磨く生活

    【写真】2階の洗面スペース。狭い洗面室をつくるよりも、かえって広々と使うことができる。カウンター下には収納もたっぷり

    【写真】吹き抜けを囲む2階の廊下部分。洗面スペースの脇には、つくり付けの本棚も。勝田さん曰く、快適な吹き抜けの三種の神器はペアガラス、シーリングファン、床暖房。中ほどに写っているシーリングファンは空気をかき混ぜる役割

    【写真】2階の窓辺。歯磨きをしながら見られるのが、この景色。吹き抜けの周りにはキャットウォークをつけて業者をよばなくても、自分で窓ふきができるようにしてある

    【写真】2階の吹き抜け部分から下を見下ろしたところ。インナーテラスと1階のリビングの端が見えていて、階下の家族とコミュニケーションもとれる

     外の景色のスケール感に負けないよう、大きく吹き抜け空間をとったS邸。広い吹き抜けがあるということは、2階の床の面積が小さくなるということでもある。夫婦の寝室に、子ども部屋がふた部屋、書斎にクローゼット。1階にも洗面スペースはあるが、2階にもほしい。すべてをぎゅうぎゅうに詰め込むこともできたが、Sさんご夫婦がここに住まいを定めたのは、ゆったりと暮らしたかったから。そこで、勝田さんが提案したのは、洗面スペースを部屋にせずに、廊下に洗面カウンターをつくってしまってはどうかというアイデアだった。

    「もともと、楽しくなければ住宅じゃないというのを信条に住宅設計をしています。何の変哲もない日常の生活行為でも、ちょっとした変化を与えることで、毎日が楽しくなるのではないかという発想なんですね。歯磨きって、だいたい狭い洗面所で鏡に向かってするのが普通でしょう。でも、朝日のはいる吹き抜けで歯を磨いてもいいんじゃないかというのが僕の提案です。吹き抜けの下はリビングですから、家族とコミュニケーションもできる。わざわざ部屋をつくらなくても、その方が気持ちいいですよね」

    作った人 勝田 無一

     吹き抜けにすると暖房を心配される方が多いのですが、窓で断熱ができていて、床暖房が入っていれば、まず問題ありません。床暖房は輻射暖房で足元が暖まりますから、温度設定も下げられます。シーリングファンをつけて空気を動かしてやれば、経済的です。これまで何軒も吹き抜けのある家を建ててきましたが、一度もクレームはありませんでした。きっと快適に過ごしていただけると思いますよ。

    スペック
    所在地
    埼玉県所沢市
    家族構成
    夫婦+子どもふたり
    構造
    木造
    規模
    2階建て
    竣工年月
    2006年2006月
    敷地面積
    510.69㎡
    延床面積
    206.00㎡
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