緑を眺めてゆったり、食卓で賑やか。
戸建ならさまざまな空間を!

静かな時間も賑やかな時間もバランスよく織り交ぜて

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それぞれの空間づくりに気の利いた工夫がたくさん!

 ご主人と奥さまで気になるところが違うというのは、よくあることだ。Mさんご夫婦もそうで、構造や材料、数字的な情報が気になるご主人と、インテリアの雰囲気やデザインが気になる奥さまとで、評価のポイントが違っていた。そんなこともあってか、なかなかピッタリの建築家に巡り会えず、何人もの建築家をあたった。どちらの評価のポイントも含めて、家全体をバランスよく考えてくれる長浜さんに出会い、ようやく家づくりを任せられる人に出会ったと感じられたという。

 Mさんご夫婦が家を建てようと用意していた土地は、裏手に雑木林があることが気に入って購入した郊外の敷地。雑木林を眺めて静かに過ごせる部屋が欲しいと希望していた。一方では、料理好きのご主人から友人を招いてバーベキューをしたいという希望も。「欲しい部屋を敷地のなかに押し込むこともできなくはなかったのですが、無理に詰め込んでも建物としては面白くない。そこで半地下の部屋をつくることにしました。さまざまな希望や条件のバランスをとっていくなかでは、普通の家とは違ったような方法も出てきます。たとえば、この家には、いわゆる玄関がありません。そういったことにも柔軟に考えていただけるお客さまだったので、選択肢の幅も広がりました。すべてが良い方向におさまったのではないかと思います。」と長浜さん。


 この土地の最大の長所である雑木林は保全緑地になっていて、人の出入りが制限されている。人の視線を気にせずに済むため、大きな窓を設けて心置きなく眺めることができる。ただ、問題は雑木林のある方角が北であること。大きく開けてしまうと寒くなることは明白だった。Mさんご夫婦が優先したのは、暖房効率よりも気持ちの良い眺め。窓の下に温水パネルをつけて寒さ対策をし、木々が望める窓をつくった。ダイニングを抜けると、目の前の窓いっぱいに緑の風景が広がる。

「雑木林って、根元はあまり美しくないんですよね。よっぽど手入れされているところでもない限り草が生えていたりするので、本当に眺めていたいのは上の方なんです。そこで、半地下で床があがっているところから眺めるようにしました。」と長浜さん。ステージのように高くなったところは、窓辺の緑の下でくつろげるリビングに。さらに、リビングの上を吹き抜けにすることで、2階からも眺めを楽しめるようにした。


 そして、リビングに隣り合う家の中心には、ダイニングキッチンをおいた。食事意外でもなにかと家族が集まってくる憩いの場だ。Mさんご夫婦は、毎日の食事を用意する奥さまも、休日になると料理の腕を振るうご主人もキッチンに立つ。体格も料理の目的も異なるご夫婦ではキッチンに関する意見も対立したが、ふたりとも使いやすくなるように考えて、オリジナルのキッチンをつくった。バーベキューができるテラスはダイニングにつなげて中庭のようにした。「ちょうど道路があるのが南側で、そこを庭にすると道路から丸見えになってしまうんですね。高い塀でもたてれば見えないんでしょうけど、それはそれで街並になじまない。たとえ、明るい庭ができても、近所の人にとって好ましくない家になってしまうと、また居心地が悪くなります。そこから、中庭を囲むようなかたちにするという考えがうまれてきました」

 かくして、静かに味わう緑と、賑やかに楽しむ食を両立できる家が誕生した。「マンションのようなひとつの空間しかなければ、明るい部屋、開放感のある部屋でいいでしょう。でも、せっかくの戸建てですから。開放感のあるところ、暗くて落ちつくところといったように、さまざまなシーンが楽しめるといいですよね」。
  • 駐車場の奥に見えるゲートを抜けると、テラスにつながる。庭の緑は、その後、ぐんぐん大きくなり、今ではかなり立派になっている

    駐車場の奥に見えるゲートを抜けると、テラスにつながる。庭の緑は、その後、ぐんぐん大きくなり、今ではかなり立派になっている

  • 木立を眺めて、落ちついた時間を過ごせるリビング

    木立を眺めて、落ちついた時間を過ごせるリビング

  • 2階の子ども部屋から顔を出す子どもたち。吹き抜け部分を介して、2階同士や1階の人と会話ができる

    2階の子ども部屋から顔を出す子どもたち。吹き抜け部分を介して、2階同士や1階の人と会話ができる

多彩な趣味を思う存分堪能できる空間の工夫

 せっかく戸建にするなら変化に富んだ空間にという長浜さんが、もうひとつ心がけていたのは生活の楽しみを満喫できる空間。

 Mさんご一家は、料理はもちろんのこと、多彩な趣味を持っている。まず、家族全員が本好きで、本を良く読む。リビングの端に設けられたライブラリースペースはプランが変遷するなかでも最後まで残った。ここに本棚を設けたのは奥さまの希望。「ご家族が読んだ本をその辺に置いていってしまって、奥さまがその本を全部、片付けていたそうなんです。ちゃんと本を置く場所をつくって片付けるようにしたいということで、壁に本棚をつけました」と長浜さん。

 楽器も家族全員が弾く。音楽室をつくることは当初から考えていた。バイオリンやチェロの練習をしたり、先生に来てもらってレッスンをしたり。奥さまとお子さんがメインだが、ご主人も使う。半地下した音楽室は音がもれにくく、力強い曲も気兼ねなく演奏できる。

 ご飯を食べ、洗濯をして、という毎日の生活だけでなく、自由に楽しむ余暇も気持ちよく過ごせるよう、良く考えられた家。「住み始めて10年近く経った今でも、毎朝起きるのが楽しみです」という“建て主の声”が寄せられている。
  • リビングに続く書斎コーナー。ここにも学校のお知らせや仕事の書類が収まる棚をつけて散らからないようにした。窓辺の書斎は作業もはかどりそう

    リビングに続く書斎コーナー。ここにも学校のお知らせや仕事の書類が収まる棚をつけて散らからないようにした。窓辺の書斎は作業もはかどりそう

  • 音楽室でバイオリンを練習中。鏡を置いて、フォームチェックをすることもできる。右上の窓の向こうはLDK

    音楽室でバイオリンを練習中。鏡を置いて、フォームチェックをすることもできる。右上の窓の向こうはLDK

撮影:黒住建築写真事務所 黒住直臣(KUROZUMI NAOOMI)

基本データ

施主
M邸
所在地
千葉県市川市
家族構成
夫婦+子供3人
敷地面積
165.00㎡
延床面積
139.53㎡