狭い「路地状敷地」で実現した
2世帯が緩やかにつながる家

間口が1.5ⅿと非常に細く、個性的な外観を持つI邸。建っているのは、竿部分の長さが14ⅿもある、旗竿の路地状敷地だ。この土地の難しさを個性と捉え、形状を活かした家づくりを実現したのが、建築家である日比生寛史さんである。その豊かな発想力が存分に発揮された、Iさんと日比生さんの家づくりをご紹介しよう。

この建築家に
相談する・
わせる
(無料です)

難しい旗竿の敷地を
前向きに捉えて設計に挑む

間口が狭く、奥行きが長い路地状敷地に建つI邸。その細長い外観は、一見住宅に見えないほど、縦長のフォルムである。設計を担当した日比生寛史さんは、クライアントであるIさんと出会った頃を振り返りこう語る。「Iさんはすでにこの土地を見つけていらっしゃったのですが、竿の部分が14ⅿとかなり長い旗竿地で、普通の発想では、この竿部分のスペースは駐車場以外の利用方法が考えられない土地でした。」

この形状から一度はIさんの候補からも外れていたというが、東京でも人気の住宅地だけに他に出物もなく、予算の都合もあって、ここに家を建てることを決めたのだという。ちなみにIさんは他にもいくつかの会社から設計プランを出してもらっていたが、そのすべてが、この長い竿部分を駐車場3台分のスペースにするというものだった。

「旗竿の敷地を好んで買う人はいませんが、場所にこだわった場合、予算上選択肢がなく選ぶという人も少なくありません。しかし、土地にはその土地なりの個性があります。せっかくなら、それを活かしたいと思いました。」そう語る日比生さん。Iさんが購入したこの土地に関しても、竿の部分を前向きに捉えて、他社では駐車場にとしての活用法しか提案出来なかったこのスペースを、豊かな生活空間の一部にするというプランを考えることにした。
  • 土間のギャラリーを設けたことで、この土間が幅1.5mの家の顔に。普通の玄関だと寂しいため、外観にガラスと金属板を多用して、あえて住宅に見えないようにした

    土間のギャラリーを設けたことで、この土間が幅1.5mの家の顔に。普通の玄関だと寂しいため、外観にガラスと金属板を多用して、あえて住宅に見えないようにした

長さ14ⅿの竿部分を
3つの個性豊かな住空間に

設計開始当初、I邸に住むのはIさんご夫婦と、お母様の3人の予定だった。Iさんから日比生さんに伝えられた要望は、2世帯それぞれのプライバシーは守りつつ、緩やかにつながる家であることだけでしたが、しかし、その後の雑談の中で夫婦の共通の趣味がロードバイクと絵画(モダンアート)が好きだということが分かり、ロードバイクと絵画を飾り、ギャラリーのようなスペースが出来ると楽しいかもしれないという発想が生まれたのだという。

そこで日比生さんがまず考えたのが、1階をお母様のスペース、2階をIさん夫婦のリビング・ダイニング・キッチン(共有スペース)、そして、3階をIさん夫婦の寝室にするというプランだった。2つの世帯が、2階の共有スペースでゆるく繋がるイメージだ。

そして、懸案事項でもあり、日比生さんの腕の見せどころでもある縦長の竿部分は、1階をロードバイクが置ける土間ギャラリー、2階を細長い居室、そして3階をルーフバルコニーにすることに決めた。こうして駐車場にとしてしか使えないといわれていたスペースは、みごとに豊かな住空間に生まれ変わったのである。

具体的な間取りを見ると、1階に土間ギャラリーと、お母様の居室+水回り。2階に吹き抜けのあるLDKと個室、奥様のパウダールーム兼ご主人の書斎。そして3階には、夫婦の寝室が配されている。ちなみに、2階の個室は幅約1ⅿ、長さが約7ⅿとかなり縦長ではあるが、いまはIさんにお子さんが生まれ、ここが子ども部屋として使われているのだそう。狭い敷地ながら、家族全員のスペースをしっかり確保できているところは実に見事である。
  • 1階の土間ギャラリーには、お施主様の趣味である自転車を展示できるボードが設置されている

    1階の土間ギャラリーには、お施主様の趣味である自転車を展示できるボードが設置されている

  • 2階に設けられた、まるでトンネルのような個室。両サイドに机やベッドを置き、子ども部屋として使うことができる

    2階に設けられた、まるでトンネルのような個室。両サイドに机やベッドを置き、子ども部屋として使うことができる

狭い居住空間でも
豊かに暮らせるよう工夫

ちなみにI邸では、部屋の配置以外にも、2世帯が気兼ねなく暮らせるような配慮が随所に凝らされている。1階の洗面室と浴室、トイレは2世帯共用であるが、トイレには入口を2カ所設け、どちらからでも使用できるようになっているのだ。

また、決して広くはない空間ながら、生活にゆとりが持てるような工夫もされている。たとえば3階の寝室にはルーフガーデンにつながる小さなバルコニーを設け、寝る前に夫婦でお酒を楽しめるスペースに。さらに、寝室は低い天井の圧迫感を避けると共に、2階の気配を伝えるため、リビングと一体となるような構成となっている。

一見すると、家を建てるのが難しいと思われたI邸の土地。しかし最終的には、Iさんも大満足の家ができ上がった。クライアントであるIさんも「こんなに自分たちに相応しい家ができるとは思わなかった」。と非常に喜んでいらっしゃるそう。普通の住宅にはない細長い土間ギャラリーや、ルーフガーデンがこの家の主役となっており、好きな絵などを飾って活用しているのだという。

このように、一見条件が厳しい家でも、その個性をしっかりと活かし、他社ではできない<生活を豊かにする+α>の提案を成し遂げた日比生さん。これから家を建てたいという人に向けてこう話す。「土地は一見条件が良さそうに見えても道路幅員による容積率の制限や、斜線規制などで思った通りの家が建てられないこともあります。また、地盤によっては、杭工事で数百万かかってしまうなど、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースも少なくありません。これから土地を探すという方であれば、できれば土地探しの段階からお手伝いさせていただけたら満足のいく家造づくりが出来ると思います」。
  • リビングから見たピクチャーウィンドウ。隣家の庭木が見事な借景となり、緑を見ながら落ち着ける空間が実現した

    リビングから見たピクチャーウィンドウ。隣家の庭木が見事な借景となり、緑を見ながら落ち着ける空間が実現した

  • キッチンから見たパウダールーム。アーチ形に切り抜かれた洞窟のような入口がその先の空間につながるような、奥行き感を演出している

    キッチンから見たパウダールーム。アーチ形に切り抜かれた洞窟のような入口がその先の空間につながるような、奥行き感を演出している

  • 奥様の要望で2階に設けられたパウダールーム兼ご主人の書斎。壁にかけられている鏡の奥は収納になっており、間接照明で空間を彩る

    奥様の要望で2階に設けられたパウダールーム兼ご主人の書斎。壁にかけられている鏡の奥は収納になっており、間接照明で空間を彩る

間取り図

  • 1F間取り図

  • 2F間取り図

  • 3F間取り図

お家のデータ

施主
I邸
所在地
東京都世田谷区
家族構成
2世帯
敷地面積
96.59㎡
延床面積
118.13㎡
予 算
2000万円台

この記事に関わるキーワード