70歳を超えてからご自宅を新築したH様ご夫妻。足に不自由を抱える奥様のため、バリアフリーの住宅を計画した。機能だけに注目しがちなバリアフリーの概念を掘り下げ、快適な住空間に仕上げたのは建築家の清水國雄さん。ご夫妻より「老後を楽しむ理想の我が家」とこの上ない言葉を頂いたという家の秘密とは?
住まいは、構造、快適性、機能性の三つの基本的性能を満たさなければならないと考えています。 私たちは、基本的性能を満たし、なお”協働でつくる”、”山から始まる”、”すまい手参加の家造り”「時ノ寿木組みの家」の提案を行っています。 暮らしを見つめ、風土に合った暮しを育み、地域の風景となる家づくりが「時ノ寿木組みの家」です。 環境に負荷を与えない材料と構法でつくる、古民家に学び、建設から解体までの過程で廃棄物と云う名のゴミを出さない資源循環の家造りもまた「時ノ寿木組みの家」の取り組みの一つです。
建築家の詳細
アプローチから玄関へ向かう。西側に設ける窓は西日の影響を極力軽減するため、画像の左側の窓のように小さく開口。写真左の玄関ポーチは、雨天でも玄関先で濡れることがなく、また玄関の木製の格子戸の耐久性を高める目的で、軒を深く取っている
居間は南からの豊かな光が入ってくる。天井が高く開放的な、まさに「くつろぎの間」だ。右のふすまは寝室へ、左のふすまは書斎へと続く。廊下を省いて建具一枚で部屋と部屋を繋ぎ、車いすでの移動も楽々
小鳥も遊びに来るお庭にも気軽に出られるよう、居間とテラスの床はフラットに繋いだ。テラスも居間と同じ杉材を使用しているが、板と板の間に隙間を設け、水が下に抜けるように設えた。「赤身杉は油分を含んでいるので、雨風に耐えるという点では一番強いといえます」と清水さん
居間からキッチンを見る。上に見える二つの窓を開けると、テラスに続く掃き出しから居間を抜ける風の通り道ができる。緑豊かな庭の木立を通って入る風は心地よく、H様も穏やかなひとときを過ごされているという
和室。板戸は浴室へと続いており、反対側にはトイレに続く板戸もある。木材は、縦に支える柱は桧、横に走る梁などは杉と使い分けた。手を触れる場所には、手あかなどが付きにくい桧がより適しているという。桧は色味が白っぽく、杉は赤味がかっていて表情の違いも楽しめる
庭からテラスを眺める。庭は建物によりL字型に囲われ、程よく西からの光を遮る。テラスの屋根には光を通すよう、透明の波板を用いた
庭から建物を見る。縦格子に覆われているのは浴室の窓。日中、浴室内から外はよく見えるが外からは見通せない。昼風呂を存分に楽しめる仕掛けだ。木材の外壁は貼り方にもこだわる。雨風の影響を受けることが多く傷みが激しい下部は、1枚のみピンポイントで木材を交換できる