リビングの中にお風呂?
海外のヴィラのようなバスルーム

施主のこだわりに寄り添い、世界に一つだけの建築を作り続ける片山さんが作ったのは、リビングの中にお風呂がある家、ではなく「日本に居ながらにして、海外のヴィラに滞在しているような気分になれる」なんとも贅沢なバスルームでした。

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サーファーの聖地で非日常を
唯一無二のお風呂場

初めてこの別荘を訪れた人はその光景に驚き、きっとこんなことを思うだろう。「あ!リビングにお風呂がある!」と。

三方に大きく取られた窓からは太陽の光が降り注ぎ、明るく開放的な空間。テレビやミニキッチンもあるこの部屋には、ソファーやテーブル、スツールなど品の良い家具とともに、透き通るような白さと柔らかなフォルムが美しい浴槽が置かれている。リビングにお風呂を設えたのだと思うのも無理はないが、実はこの部屋はバスルームなのだ。

九十九里浜の南部、千葉県長生郡一宮町。日本屈指のサーフタウンとして名高いこの町は、東京オリンピックの会場となっている釣ヶ崎海岸を有する。その海岸からほど近くに別荘を有しているのが、施主のMさん。Mさんもこの聖地の波に魅せられたサーファーの1人だ。Mさんは普段は都内で勤務し、住居も都内に構えているものの、趣味のサーフィンが高じ、数年前にこの地に別荘を購入。週末や休日のサーフィンライフを楽しんでいたが、さらなる充実を図るため隣地を購入したのに伴い、お風呂場の増築を考えたのだという。

その設計を任されたのは、施主のこだわりにじっくりと寄り添い、丁寧にプランニング。そして唯一無二の建築に仕上げることに定評のある、片山正樹建築計画事務所の片山さんだった。

「もともとのお話では、今の3分の1くらいの広さで、大きなお風呂場をというお話だったんです」と片山さん。Mさんからの要望は、バリや沖縄のリゾートヴィラを感じさせる開放的な浴室したいということだった。

Mさんとの対話を重ねていくうちに出てきたのが、単にお風呂に入る場であるバスルームではなく、寛げる場としてのバスルームというコンセプト。都会を離れ、趣味のサーフィンを楽しみ、海外のリゾートのようなのんびりした非日常を味わえる空間。「風呂に入りながらテレビが見たい」「湯上がりにソファーでのんびりできるといいよね」といったアイデアを盛り込むうちに導き出されたのが、リビングに浴槽が置かれたようなバスルームにするというプランだった。

施主との対話を重視し、じっくりと寄り添って要望を汲み取る。そして洗練されたデザインの建築を実現するばかりか、使い勝手・性能・コストにまでこだわった建物をつくるのが、片山さんのポリシー。ときには1つの物件で何十ものプランや模型を作ることもあるのだという。その労力を惜しまないからこそ、施主のこだわりを上手く実現した唯一無二の建築に仕上げることができるのだ。

実際、Mさんの物件でも当初のプランよりもかなり大きな変更があったものの、最終プランの模型を見たMさんが「おおー!」と声をあげ「バリの感じが出ている!」とコメントするほどMさんの想像を超えるプランを提案できたのだ。
  • エントランス側から見たMさん邸。塀が目隠しとなり、ここが風呂場だとは思えない外観となっている。砂を落とすためのシャワーも完備

    エントランス側から見たMさん邸。塀が目隠しとなり、ここが風呂場だとは思えない外観となっている。砂を落とすためのシャワーも完備

  • 広く開けた庭には、バーベキューも可能なスペースや、テントを張ることも可能な芝が広がる

    広く開けた庭には、バーベキューも可能なスペースや、テントを張ることも可能な芝が広がる

  • 庭との境には片山さんがアレンジした植栽が施され、四季折々に目を楽しませてくれる

    庭との境には片山さんがアレンジした植栽が施され、四季折々に目を楽しませてくれる

  • ウッドデッキは、強い日差しを遮りながらも風の心地よさを感じられるスペース。昇降式テーブルでアウトドアリビングにも

    ウッドデッキは、強い日差しを遮りながらも風の心地よさを感じられるスペース。昇降式テーブルでアウトドアリビングにも

  • 屋上テラスに昇れば、遠くまで景色が見渡せる。夜にはベンチに座り、満点の星空を独り占め

    屋上テラスに昇れば、遠くまで景色が見渡せる。夜にはベンチに座り、満点の星空を独り占め

楽しむのは自分だけじゃない
人々が集うおもてなしの場にも

Mさんからの要望にはもうひとつ。それは、人が集まって楽しめる家と庭にしたいというものだった。この別荘を自分のサーフィンの基地として独り占めするのではなく、友人・知人をおもてなしできる場とすること。その要望を、片山さんは、いくつもの仕掛けで叶えてみせた。

まず1つ目が、この家の特徴ともいえるこの浴室。ソファーやテーブル、テレビやキッチンもあり、エアコンや床暖も完備。人々が集うパーティースペースとしても十分な広さをもっている。

大きくとられたウッドデッキも、日差しを避けながらも風の心地よさを感じられるアウトドアリビングだ。ウッドデッキの一部は、上部に引き上げることで掘りごたつ式のテーブルになるという仕掛けも設けた。

屋上部分は大きなテラスに。夜は部屋の灯りで邪魔されることなく満点の星空を眺める絶好のスポット。作り付けのベンチに座り星空を眺めると、時が経つのも忘れてしまいそう。

広く開けた庭には、バーベキューも可能なスペースや、テントを張ることも可能な芝が広がる。実際Mさんの友人が訪れBBQをしたり、芝にテントを張って寝泊まりしたこともあるのだという。

片山さんは、こういったおもてなしの設備の数々をただ設けたのではない。ランドスケープデザイン、インテリア、植栽といったデザイン性はもとより、冷暖房や日差しの入り方といった快適性まで実現してみせた。家具・建具は一部オリジナルで作成。サッシも最大級のペアガラスを使った特注品。植栽に至っては、この土地特有の潮風にも強く、毎日ここにいるわけではないMさんでも手入れに手間のかからない樹木を厳選したのだという。

機能・デザイン・環境・そして暮らしやすさまで兼ね備えてしまう片山さんの力量には驚かされるばかりだ。

片山さんの作品には、何一つとして同じテイストのものがない。いわゆる「片山さんっぽい建築」というものが存在せず、それぞれ唯一無二の物件となっている。それは、施主一人ひとりにじっくりと向き合っている証。

唯一の共通点といえば、施主や家族、訪れる人々が片山さんの作った家に満足し、快適な生活を送っているということだろう。これからも片山さんは、クライアントに寄り添い、ここにしかない建物を生み出し続けるに違いない。
  • 3方向に設けられた大きな窓が、抜群の開放感を演出

    3方向に設けられた大きな窓が、抜群の開放感を演出

  • 窓を開け放つと、庭とシームレスにつながる。エアコンや床暖はIOTでつながり、スマホでオンオフが可能

    窓を開け放つと、庭とシームレスにつながる。エアコンや床暖はIOTでつながり、スマホでオンオフが可能

  • エントランスの塀は、浴室の目隠しにも。白壁と白砂利で清涼感を演出

    エントランスの塀は、浴室の目隠しにも。白壁と白砂利で清涼感を演出

  • 各所に配した間接照明が浴室を柔らかく照らす

    各所に配した間接照明が浴室を柔らかく照らす

基本データ

作品名
M邸
所在地
千葉県長生郡一宮町
敷地面積
747.86㎡
延床面積
36.85㎡