コンクリート×光のデザイン演出が秀逸
3階建て+地下室のガレージハウス

作品性を重要視した設計ではなく、第一に住まう人の暮らしやすさ、快適さを大前提とし、お施主様家族の日常に合ったプラン提案にこだわっている建築家の川嶌さん。30年以上に渡って多彩な住まいづくりの実績があるなかで、T様邸はコンクリートとの素材感に、光の取り入れ方に、工夫を凝らした個性が光る実例だ。

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コンクリートで囲まれた空間のなか
光を生かしたデザインで開放感を演出

T様邸は、約38坪の土地に建つ地下1階、地上3階建ての鉄筋コンクリート造。最初から「コンクリートの家」を希望されており、デザイン性にこだわりが深く、素材にはコンクリート、鉄、タイル、ガラスを主に使ったスタイリッシュな家をイメージしていた。また、車2台分のインナーガレージと、フリースペースとして利用できる地下の空間も欲しいとのこと。

「鉄筋コンクリート造のご依頼は、結構多いんです。コンクリートは価格が上昇傾向にありますが、素材感を気に入っている方や、地震、津波などの災害に対する安心感を求める方にとって、鉄筋コンクリート造はニーズが高いようですね」と川嶌さん。そんなT様のご希望に対して、まずは敷地を確認し、周囲の街の雰囲気とも考えあわせて、都市の中の住宅として、できるだけシンプルなデザインにすることを意識した。

また、外に対してオープンにするのではなく、視線は遮りながら、プライバシー性を保てる空間をイメージ。その上で、室内への採光性を確保しつつ、開放感を感じられる空間づくりをテーマにプランニングを進めていった。まず、外観スタイルは、敷地の手前から奥へと建物の幅を段々と広げていくことで、外光を家の随所に取り入れることができる形に。敷地面積に対して、建物の小ささを感じさせない存在感のある外観だ。1階のインナーガレージには、オーバースライダーの電動シャッターを採用。シルバーと外壁のコンクリートの質感に無機質なシルバーの色目がマッチしたデザインで、また、開閉もスマートなため、よりスタイリッシュさが際立つ。

室内は、コンクリート打ち放し仕上げなので、インテリアをシンプルにする分、暖色の間接照明を多用することで、デザインのアクセントになっている。さらに、壁や天井はペンキ仕上げで無機質なイメージに仕立てつつ、冷たさを感じないように採光面でも設計に工夫を凝らしたという。吹き抜けの玄関ホールは地下から3階まで空間が繋がり、トップライトを設けることで、全フロアに採光が行き届くよう配慮。また、バルコニーから差し込む陽射しも大きな窓を通してリビングにたっぷりと届くようにしている。結果、外光で室内が明るく照らされる昼間と、間接照明の暖色の温かみを感じられる夜の雰囲気とで、イメージが変わるインテリアデザインを実現している。
  • 昼間の外観は、夜の雰囲気とはイメージが大きく変わり、コンクリート外壁の質感が生きたデザインに

    昼間の外観は、夜の雰囲気とはイメージが大きく変わり、コンクリート外壁の質感が生きたデザインに

  • 夜の外観。室内からの光が玄関ポーチを明るく照らしているため、夜の出入りの際にも安心

    夜の外観。室内からの光が玄関ポーチを明るく照らしているため、夜の出入りの際にも安心

  • 家中の各空間に光をしっかりと届けられるよう配慮し、奥へ行くに従って建物が外側へ広がるデザインに

    家中の各空間に光をしっかりと届けられるよう配慮し、奥へ行くに従って建物が外側へ広がるデザインに

「いかに気持ちよく過ごせるか」や
暮らしやすい生活動線は大前提に

建築家として、デザイン性に工夫を凝らすことはもちろんだが、川嶌さんの設計では、住まう人の暮らしやすさを大前提としている。「いかに気持ちよく過ごせるかを一番大切にしています。住みやすい生活動線などは必ず確保した上で、少し個性を加えたデザインを提案しています」と川嶌さん。お施主様のこだわりを反映した提案や、空間に対して遊び心のある提案で、予算の中でメリハリのあるバランスの良い設計にしたいと常に考えているという。

T様邸では、ご要望のあった地下室に対しての提案がそう。1階はインナーガレージだが、2~3階はプライベートな居住空間となる設計のなか、「地下は来客用などのパブリックな空間として使い分けることを提案しました」と川嶌さん。広い地下室は、仲間と趣味を楽しむスペースや、リモートワーク用のスペースなど、T様ご家族のその時々のライフスタイルに合わせた多彩な用途が叶えられる、使い勝手のよい空間として活用できる。そのために、地下室への階段は玄関ホールから、外履きのままで直接、降りられるような設計に。

また、暮らしやすい生活動線という点では、家族の寝室、洗面&浴室は3階に設けることで、入浴や着替え、就寝をこのフロア内で済ませられるような間取りをご提案。朝の支度、夜の就寝の際に、階段の昇り降りをする必要がないよう、スマートな動線を考えてのことだ。

家づくりのスタートでは、まず、要望をすべて出し切ってもらうように丁寧にヒアリングを行うという川嶌さん。そこから予算面も考慮して、できることとできないことを丁寧に伝え、ご要望により近づけるような代替案を提案しながら、プランを話し合っていくことで、お施主様ご自身にとっても、悔いの残らない満足な家づくりが叶えられる。デザイン性にこだわりの深いT様は、階段のトップライトから差し込む光が、ストリップ階段の隙間から木漏れ日のように降り注ぐシーンも気に入っているという。
「T様邸は、コンクリートの質感を随所にあらわした全体的に無機質な空間です。木質をあらわさない仕上がりは冷たさをも感じますが、施主ご家族様の嗜好やライフスタイルに合った、快適で過ごしやすい生活空間をつくることができたと思います」。
  • 照明には蛍光色を使わず、暖色のものを多く採用することで、コンクリートに囲まれた空間でも、ほんのり暖かみを感じさせてくれる

    照明には蛍光色を使わず、暖色のものを多く採用することで、コンクリートに囲まれた空間でも、ほんのり暖かみを感じさせてくれる

  • 地下室は大きなFIX窓を設けることで、玄関ホールからの光を室内に採り入れている

    地下室は大きなFIX窓を設けることで、玄関ホールからの光を室内に採り入れている

  • 3階のホールから見た階段。上部のトップライトから、光が差し込む様子が分かる

    3階のホールから見た階段。上部のトップライトから、光が差し込む様子が分かる

撮影:メイクフォト 水野

基本データ

作品名
T.M.House
施主
T邸
所在地
愛知県名古屋市
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
124.97㎡
延床面積
226.25㎡