吹き抜けの通り土間で家族を繋ぐ
大人3人暮らしのシェアハウス

第一に住まう人の暮らしやすさ、快適さを大前提とし、お施主様家族の日常に合ったプラン提案にこだわっている建築家の川嶌さん。子育てが終わったご夫婦とお母様の3人暮らしとなるK様邸は、「晩年を、どう寄り添って暮らしていくか」をコンセプトに、暮らし方までを提案し、「家」というカタチで表現した実例だ。

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ライフスタイルに合わせた
大人3人暮らしの住まい方を提案

K様ご家族が以前住んでいた家は、約80坪の大きな家で昔ながらの日本家屋。K様ご夫婦とお母様の3人で暮らすには部屋数が多く掃除も大変、建物の耐震面も心配、キッチン、洗面などの水回り設備も新しくしないといけない時期と、暮らしにくさや不安が大きくなっていた。そこで、3人暮らしに最適なコンパクトな家を新築して移り住むことを決め、川島建築事務所に相談。

K様からのご要望は、大人3人がゆっくり、ゆったりと暮らせる落ち着いた住まい。子育てが終わり、K様、奥様、お母様がそれぞれにプライベートの時間も大切にしながら、一緒の暮らしを満喫できる空間にしたいとのこと。川嶌さんは、そんなK様ご家族3人での暮らしにフィットした住まい空間づくりを意識し、「3人がどう住み分ければいいか」「どう、晩年を寄り添っていくか?」をコンセプトとして考えた。それぞれのプライベートの空間と、家族の一体感を感じさせる空間を両方備え、程よい距離感で暮らせる家にしようと考えた。そこから生まれた発想が、「通り土間のある、親子のシェアハウス」だった。

間取りは3LDK+通り土間+家事室+ロフトで、片持ちのアプローチ階段から玄関に入ると、土間の空間が裏口まで繋がっており、奥様の部屋、お母様の部屋を順に配している。土間から直接、各部屋へ出入りできるスタイルで、いわゆるシェアハウスのような感覚だ。お母様の部屋には和室も備えているので、友人が訪ねてきても、他の家族に気兼ねすることなく寛いでもらえる。

2階にはK様の部屋と、共用空間としてのLDK、奥様の書斎代わりの家事室を設置。K様の部屋は書斎兼プライベートルームとしてリモートでも仕事ができるように、カウンターや壁一面の書棚、ベッドとなるスペースも造作。部屋の中から梯子を上っていくことで、2.37坪(約4.74畳)のロフトにも繋がっていて、趣味の時間も十分に楽しめる、こだわりの詰まった隠れ家的な空間になっている。
  • 正面から見た外観。大きなFIX窓が目立つ存在感のある外観スタイルだ

    正面から見た外観。大きなFIX窓が目立つ存在感のある外観スタイルだ

  • 吹き抜けの開放感あふれる玄関土間。大きなFIX窓、明かり取り窓を設けることで採光性豊かに

    吹き抜けの開放感あふれる玄関土間。大きなFIX窓、明かり取り窓を設けることで採光性豊かに

スープの冷めない距離感の中で
空間をシェアして暮らす家

通り土間の天井は吹き抜けにして、吹き抜けで繋がる2階のLDKと1階の玄関ホールは、あえて壁や建具で仕切らずに、玄関ホールもLDKの一部であるかのように空間を一体化。
「この吹き抜けの通り土間は、ムダな空間でもありますが、共用で利用できる空間としての役割もありますし、1階と2階の空間が吹き抜けで繋がることで、家中の空気の流れがよくなり、トップライトからの光も入ってくるんです」と川嶌さん。「快適な暮らしを叶えるには、人の流れ=動線と同じく、換気=家全体の空間で空気が流れることも大切ですから」。

通り土間は、壁、天井ともにシナ合板で仕上げた木の温かみあふれる空間でもある。また、随所に天窓を設けることで、室内へとふんだんに外光を取り入れることができ、効率的に換気も行える。さらに、気候の変化や雨音なども感じさせてくれるため、家の中にいながらも外部と繋がる感覚も残している。

家中の床は無垢のフローリング、壁はシナ合板に紙製のクロスを貼って、健康に害があるといわれるホルムアルデヒドを発生させない素材を使用。住まう人のカラダにやさしい健康住宅仕様。吹き抜け空間のあるLDKには床暖房も入れることで、冬場でも室内の暖かさを確保するなど、快適に過ごすための間取り、設備、仕様を多彩に取り入れ、コンパクトながら贅沢なつくりの住まいが完成。K様ご家族も実際に暮らしはじめてから、「土間が広くて使い勝手がいい」「どこの空間にも光がさりげなく入ってくるので、気持ち的にも湿っぽい空間がないので快適です」と、暮らし心地のよさを実感しているという。

「住まいを設計するということは、お客様の生活である日常と、非日常をバランスよく作るということ」。建築家として、住居設計に対して、そんな思いを抱いている川嶌さん。このK様邸の新築に当たって、間取りやインテリアのプランニングだけではなく、「どういうふうに住むのか」という住まい方までを提案。川嶌さんいわく、「スープの冷めない距離感の中で、空間をシェアして暮らす」スタイル。子育てが終わった夫婦の、新しい暮らしのスタイルを叶える家づくりだと言えるのかもしれない。
  • 通り土間&吹き抜けで、1階~2階の空間がすべて一体に繋がっている

    通り土間&吹き抜けで、1階~2階の空間がすべて一体に繋がっている

  • 勾配天井で開放感を感じさせてくれる2階のLDK。上部には天窓も設けている

    勾配天井で開放感を感じさせてくれる2階のLDK。上部には天窓も設けている

  • 見晴らしのいい大きなFIX窓から外光がたっぷりと注ぎ込まれる昼間のロフト。LDKを一望できるガラス窓を通して、光が下層空間へとまわっていく

    見晴らしのいい大きなFIX窓から外光がたっぷりと注ぎ込まれる昼間のロフト。LDKを一望できるガラス窓を通して、光が下層空間へとまわっていく

撮影:メイクフォト 水野

基本データ

作品名
南新町の家
施主
K邸
所在地
愛知県尾張旭市
家族構成
夫婦+母
敷地面積
128.88㎡
延床面積
111.33㎡
予 算
3000万円台