暮らしを最適化する「減築」で
理想の住まいを実現!

かつてご両親と暮らしていた家を守りながら、一人暮らしをしていた50代の施主様。今の家は5LDKと広すぎるため、そろそろ自分に合う住まいを建てたいと、建築家を紹介する会社に相談。そこで紹介を受けたのが須藤大建築設計事務所の須藤さんだった。この要望に対し、2階建ての家を平屋にする「減築」という形で施主様の終の住処を完成させた須藤さん。なぜ新築ではなく、減築だったのか…。気になる家づくりの詳細を伺った。

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2階部分をそのまま減築し
最適な空間へ

当初、今の家を売り、違う土地を買って新築を建てたいと要望していたという施主様。しかし、須藤さんは「50代という施主様の年齢を考えると、新たな土地に家を建てるより、今の家をそのまま活かした方が良いのでは…」と感じたそう。そこで思いついたのが、今の住まいを施主様に合う形に改修してリサイズする、「減築」という手法だった。

「減築はすでにある建物を小さくして、自分に合ったパッケージに作り替えるという方法です。既存の家を活かしたまま建物を小さくするため、耐震性が上がるというメリットもあります。また、新築よりも環境負荷を抑えられるところは、やはり大きなメリットではないかと考えています」と話す須藤さん。
この減築というアイディアを聞いた施主様も、その案に納得。早速プラン作りが始まった。

施主様の実家は、延床面積197.08㎡の2階建て、5LDKという間取り。明らかに一人暮らしには広すぎ、使い勝手が良くない。そこで須藤さんは、2階部分を減築し、平屋の2LDKに変更するプランを提案することに。

「減築プラン自体はすぐに通ったのですが、2LDKの空間プランに関しては、少し難航しました」と振り返る須藤さん。コスト面でなかなか折り合わず、最終的には10を超えるプランを提案。最終的に、壁を極力減らしたシンプルなプランを採用することとなった。
  • シンプルな印象の白い外観。手前の高い部分はガレージで、上は物置として利用。そして右側は平屋の居住空間となっている

    シンプルな印象の白い外観。手前の高い部分はガレージで、上は物置として利用。そして右側は平屋の居住空間となっている

  • 南側から見た外観。夏は太陽高度が高いので光が入るが、冬は太陽高度が下がるため、ハイサイドで光を確保した。道路側にはコストを抑えた塀を設置。道路側を一番高くし、斜めに高さを下げることで圧迫感を抑えている

    南側から見た外観。夏は太陽高度が高いので光が入るが、冬は太陽高度が下がるため、ハイサイドで光を確保した。道路側にはコストを抑えた塀を設置。道路側を一番高くし、斜めに高さを下げることで圧迫感を抑えている

  • 夕景のテラス。道路側がほんのり見えるが、歩行者からは意識的にあまり見えないよう塀のつくりを工夫している

    夕景のテラス。道路側がほんのり見えるが、歩行者からは意識的にあまり見えないよう塀のつくりを工夫している

家の中心に据えたハイサイド窓で
光だまりをつくり、明るい空間に

白で統一されたシンプルな外観。玄関にはステンレスで覆った木製の引戸が用いられており、とてもモダンな雰囲気に仕上がっている。玄関に入ると腰掛けベンチと天井が抜けた欄間、リビングに入ってすぐ右にはPC作業ができるワークスペースも設置した。

収納スペースを平面の中心に、LDK+和室、水回り、寝室が配置されており、これらを回遊できるよう生活動線が工夫されている。仏壇を置く必要があったため、リビングからフラットに続く畳の和室も設け、双方でオープンにつながる広い空間に。そして、このLDKには施主様の要望だった掘りごたつも設置。かつての家も座卓を中心としたリビングであり、より快適で床に近い生活を楽しめるようになっている。

LDKはとても明るい空間だが、実はこのLDKの採光の確保が、今回須藤さんが最も苦労したところだった。

「日差しの入る南側は隣棟間隔が4ⅿしかありません。南側隣家は2階建て、こちらは減築で平屋になると、夏場は日差しが入っても、冬場の日差しが入らなくなるというデメリットがありました」。これを解決するために考えたのが、天井面をくりぬいてハイサイドを設け、そこから陽光を入れるというアイディアだ。

「直接光が入ると内部の陰影が強くなるので、下にある収納面に光をあて、室内に拡散させることで、柔らかい光が入るようにしました」と話す須藤さん。実現にあたっては、模型を作って光の入り方を確認したという。

結果、須藤さんの計算どおり、ハイサイドから入る光が収納面に反射して部屋中に光を届けており、陽光が降りそそぐ明るい空間が実現した。

「減築」というアイディアのおかげで、かつての家を活かしながら完成した施主様の終の住処。この家で暮らし始めた施主様も、間取りの使い勝手の良さや、断熱性、防音性の高さにとても満足されているという。

「施主様は映画を観るのがお好きなのですが、今回壁に使用した吸音材のおかげで、かなり音を大きくしても外に音が漏れないと喜んでいらっしゃいました」と、須藤さんも嬉しそうに笑う。

既存の家をリサイズするというアイディアで、新たな住まいに生まれ変わらせる減築というテクニック。家の建て替えの選択肢として、これからもたくさんの可能性を見せてくれそうだ。
  • 日中のLDK+和室。リビングの床は抗菌効果もあり、歪みにくい竹材が用いられている
。奥には仏壇が配されているほか、ご両親がコレクションしていた土面がオブジェとして飾られている

    日中のLDK+和室。リビングの床は抗菌効果もあり、歪みにくい竹材が用いられている
    。奥には仏壇が配されているほか、ご両親がコレクションしていた土面がオブジェとして飾られている

  • LDKと水回りを隔てている壁替わりの収納。ハイサイドからの光が収納に反射され、LDK、水回りともに光が届く。手前は施主様の要望で作られた掘りごたつ

    LDKと水回りを隔てている壁替わりの収納。ハイサイドからの光が収納に反射され、LDK、水回りともに光が届く。手前は施主様の要望で作られた掘りごたつ

  • 別角度から見た夜のLDK。今回の住まいではほとんど新材を使っているが、ハイサイドの梁にはあえて解体で発生した廃材を使うことで味わいも演出した

    別角度から見た夜のLDK。今回の住まいではほとんど新材を使っているが、ハイサイドの梁にはあえて解体で発生した廃材を使うことで味わいも演出した

  • 廊下の書斎スペース。木の雰囲気を入れて欲しいという要望に応え、扉には天然木をスライスした突き板を張ることで木のぬくもりを出している

    廊下の書斎スペース。木の雰囲気を入れて欲しいという要望に応え、扉には天然木をスライスした突き板を張ることで木のぬくもりを出している

撮影:成田 亮

間取り図

  • 間取図

  • Before

  • After

基本データ

作品名
光陰の窓
施主
W邸
所在地
青森県弘前市
家族構成
単身者
敷地面積
199.9㎡
延床面積
117.59㎡
予 算
〜2000万円