趣味のBBQを思う存分堪能!
2つのリビングとキッチンと庭がつながる家

家づくりにあたって、最初はあまり要望がなかったという施主様ご夫婦。今回設計を担当した須藤大建築設計事務所の須藤さんは、会話を繰り返すことで丁寧に施主様の要望を引き出し、その暮らしに合った住まいを形にしていったという。こうして完成した住宅は、趣味のBBQを楽しむための工夫が随所に凝らされた、まさに施主様理想の住まいだった。

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ダイニングを設けない代わりに
2つのリビングを配置

アパート暮らしだった30代の施主様ご夫婦。めぼしい土地が見つかったタイミングで家の設計を依頼したのが、高校時代の同級生である須藤さんだった。

当時の打ち合わせを振り返り、須藤さんはこう語る。
「最初、大きな窓と明るい家の設定以外は施主様からあまり細かな要望が出てきませんでした。しかし、何度か会話を繰り返していくなかで、夫婦はBBQをするのがとても好きで、BBQができるスペースを希望していること、そして、キッチンとリビング、庭を行き来できることを重視していることがわかってきたんです」。

要望を踏まえ、プランを考え始めた須藤さん。しかし施主様が購入した土地は、西側はアパートのバルコニー、北側は隣家のリビングの窓、東側は店舗の駐車場に面しており、3方向からの視線を受ける。施主様の要望であるBBQができる庭とテラス、そして大きな窓と明るい家を実現するためには、外から視線をコントロールする必要があった。

これらの課題を一つ一つクリアにしながらたどり着いたのが、2つのリビングとキッチン、そこに行き来できる庭の田の字配置である。

キッチンからリビングを介さず庭に出られるようにしたいという要望から、キッチンスペースの横にテラスを設置。キッチンは外履きでも出入りできるようにコンクリート土間床を採用し、ここにダイニングと併用のカウンターを設置した。

須藤さんも最初は「ダイニングは必要ではないか…?」と思ったそうだが、施主様から共働きで朝は忙しいため、ダイニングの片付けの煩わしい手間を省きたいという話を聞き、このようなプランを考えたそう。暮らす人のライフスタイルをしっかりと想像し、丁寧にプランに反映する。そんな須藤さんの姿勢が、このようなところからも感じられる。

ちなみに、須藤さんの想像力は、これに留まらない。「施主様一家には子どもがいるため、子どもの誕生日会などのイベントを考えるとダイニングに変わるスペースは必要になる」と考えたのだ。

そこで須藤さんが提案したのが、パブリックリビングの隣にプライベートリビングを設けるという方法。プライベートリビングはパブリックリビングよりも少し床を下げた5畳ほどのスペースで、下半分空いた垂れ壁で仕切られている。子どもが遊んでいても目が届き、子どもは包まれるような安心感の中で自由に遊べるように工夫もされているのだ。

こうして、2つのリビングと、カウンター付きのキッチン。そして、キッチンから直接、アプローチできるテラスを中心にプランが出来上がっていった。
  • 高さ5mの吹き抜けを見たところ。2階の異型窓から光が入り、1階の大きな窓はカーテンを閉めても明るいリビング。家全体の断熱性を高めたほか、床暖房で冬も温かい

    高さ5mの吹き抜けを見たところ。2階の異型窓から光が入り、1階の大きな窓はカーテンを閉めても明るいリビング。家全体の断熱性を高めたほか、床暖房で冬も温かい

  • リビングから見たプライベートリビング。下が半分開いた垂れ壁が設けられており、子どもたちが遊んでいる様子を見守ることができる

    リビングから見たプライベートリビング。下が半分開いた垂れ壁が設けられており、子どもたちが遊んでいる様子を見守ることができる

  • 夕景の吹き抜け。鉄骨の梁に照明を設置してアンビエント効果で落ち着いた空間である

    夕景の吹き抜け。鉄骨の梁に照明を設置してアンビエント効果で落ち着いた空間である

  • テラスから見た夜のリビング。外からの視線は塀が隔ててくれるため、カーテンを開けていてもそれほど気にならない

    テラスから見た夜のリビング。外からの視線は塀が隔ててくれるため、カーテンを開けていてもそれほど気にならない

キッチンとテラスの関係に大満足
仲間とBBQを楽しむ暮らしが実現

リビングの天井は5m以上の高さがある吹き抜け。さらに幅が5.4mほどある大きな窓が外のウッドデッキテラスを介して庭へとつながっており、非常に開放感のある空間となっている。しかし、、大きな窓は一方で断熱性が落ちるという問題もあるのだそう。
「可能な限り大きな窓を確保したかったのですが、そうするとどうしても外気と接する面が増え、暖房効率が落ちてしまいます。そのため断熱性の高いペアガラスを特注。さらに壁に付加断熱を用いることで、家全体の断熱性能を上げるよう工夫しています」。
この工夫の結果、断熱性を確保しつつ、大きな窓を設けることができた。

1階はパブリックな空間に対して、2階は家族のプライベートな空間となっている。廊下の座卓カウンターは、旦那さんが仕事をしたり、子どもが勉強したりできるスペースに。また、吹き抜け壁面にはプロジェクターを照射できるようになっており、BBQのときにはここで映画を上映して、ゲストと一緒に楽しめるのだという。さらに廊下の奥には子ども部屋、夫婦の寝室、そして将来子どもが増えたときに子ども部屋を増やせるよう、多目的スペースも設けられた。

開口部の配置と異形窓を利用して三方向の視線をうまく避けながら明るい家が実現した。リビング、キッチン、テラスの田の字配置は、施主様ご夫婦にもとても好評だそう。施主様はさっそく職場の家族や奥様の友人を自宅に招き、BBQも楽しんでいるという。

ほぼノープランからスタートした家づくりだったが、最後はしっかりと施主様の希望を叶える家が完成。これもひとえに、要望を丁寧に引き出し、形にしていった設計者の力量といえるだろう。最後に須藤さんから、どんな人に設計を依頼して欲しいか? を尋ねてみたところ、こんな答えが返って来た。

「家を建てたいものの、どこから手を付けたらいいかわからない…という人は大歓迎です。あとは自分なりの家が欲しい人、こだわりの家を建てたい人にぜひご相談に来ていただきたいですね。施主の潜在的な要望を聞き出すのは得意ですし、多くのプランを提案しながら、施主のイメージを汲み取っていく過程で、その人の暮らし方を見つけていく作業を丁寧に行います。施主の方が何を求めているのかを捉えていくのが僕たちの仕事ですし、そのためのプラン作りはいくらでもやらせていただきたいと思っています」。
  • パブリックリビングから見えるテラス。左手には洞窟っぽく段差をつけたプライベートリビングを配置、幅5.4mの大きな窓は熱伝導率の低いペアガラスを特注して断熱性能を高めている

    パブリックリビングから見えるテラス。左手には洞窟っぽく段差をつけたプライベートリビングを配置、幅5.4mの大きな窓は熱伝導率の低いペアガラスを特注して断熱性能を高めている

  • キッチンカウンター。共働きで食事の時間を大切にするため、コミュニケーションを図れるように、レンジフードを天井に埋め込んだ。天井には汚れがつきにくい素材を使っているため安心

    キッチンカウンター。共働きで食事の時間を大切にするため、コミュニケーションを図れるように、レンジフードを天井に埋め込んだ。天井には汚れがつきにくい素材を使っているため安心

  • 店舗に面している2階寝室の窓。異形窓を設けることで、目線を避けつつ、採光を確保している

    店舗に面している2階寝室の窓。異形窓を設けることで、目線を避けつつ、採光を確保している

  • 別角度の外観。斜めの曲線が稜線のように折り重なる、シンプルながら計算され尽くした美しいデザイン

    別角度の外観。斜めの曲線が稜線のように折り重なる、シンプルながら計算され尽くした美しいデザイン

間取り図

  • 間取図 1F

  • 間取図 2F

  • 立面・断面図

基本データ

作品名
稜線の傘
施主
S邸
所在地
青森県青森市
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
234.87㎡
延床面積
116.15㎡
予 算
2000万円台