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個性的な外観に懐かしい室内!”住みこなす”大事さに気付く家

Oさん夫妻が建築家の河野健昇、陽子夫妻に依頼したのは「もとからあったような家」。周囲は畑が点在するのんびりした住宅街。完成したO邸はその穏やかな景色にしっくり馴染み、外観も邸内も、洗練されているのに温かなノスタルジーを感じさせる。

デザインと素材で生まれる洗練と懐かしさ

正面から見るとバンザイをしているような家だ。左右の外壁が斜めに広がり、ちょっと扇にも似ている。その大きな灰白色の壁面に映える、明るい茶色の玄関引き戸。緑の多いのどかな住宅街に建つO邸は、遠目にも目立つ個性的なルックスをしている。

 玄関前には3台分の広い駐車スペースとアプローチがある。道路としっかり距離をとり、5~6m奥まったところに佇む平屋の家屋は実に堂々としているが、人を寄せつけない威圧感はない。むしろ、バンザイの形に不思議な愛嬌を感じてしまい、親しみを覚える。

 結婚を機に家を建てることにしたOさん夫妻は、「もとからあったような家」を希望した。生まれ育った土地に、周囲の景色から浮きそうな「見るからに新築」という風貌の建物をつくるのは避けたかった。

 依頼を受けたのは、夫婦そろって建築家である河野健昇さんと陽子さん。O邸は河野夫妻が一緒に練った案かと思いきや、「河野と私がそれぞれのプランを出したら、Oさんが2つに切ってくっつけてくださいました」と、陽子さんが笑いながら教えてくれた。

 完成したO邸は、素材と色の取り合わせが絶妙だ。それはそのまま、Oさんの希望である「もとからあったような」佇まいにするための工夫でもある。外壁はガルバリウム鋼板とスギ板、玄関の引き戸はサワラを使用。塗装は灰白色と茶で仕上げた。この「灰白と茶」という色合わせ、鋼板と木部の素材感のメリハリがクールとナチュラルを共存させ、“目立つけれど浮かない”独特の外観をつくり出す。

 邸内も素材や色使いが楽しい。サワラの玄関引き戸を開けて中に入ると、小さな土間の先にすぐまたヒノキの引き戸がある。この引き戸を開けると広がるのが、最大天井高4mの大きな土間。土間の床は墨を入れたモルタルにグレーのタイルを貼ったもの。左手にはオープンにできる畳の和室。土間の中央には音大卒の奥さまのグランドピアノがどーんと置かれ、小さな和風ライブ会場のようである。

 リビングなどの床には、オイル仕上げのスギ板を使用した。深みのある色に趣を感じるが、「スギの床はすごくいいですね。冬は感触が暖かく、夏はさっぱりしています」と、Oさんは色味と共に快適さも気に入っている様子。

 邸内の主な壁は塗り壁で、土間やリビングは白の珪藻土。壁には塗り壁のほか、和紙壁紙も取り入れた。和室の床の間に用いた朱色の無地、画家の絵をデザインしたものなどさまざまだが、中でもOさんが好きだというのが寝室の壁の和紙壁紙。やさしい和のグリーンでスギの床と馴染み、見るからにリラックスして眠れそうな空間だ。この寝室のみならず、O邸は和の色調が巧みにちりばめられており、どのスペースも心落ち着く雰囲気となっている。

「でもね、Oさんは壁にカジュアルなシールを貼ったりしていたんですよ」と陽子さん。和のトーンを活かしたシックなテイストの内装なのに、カジュアルなシール……? 一瞬反応に迷うが、陽子さんの表情はどこか満足げである。

「私は、それが嬉しかったんですよ。出来上がった家をそのまま大切に使ってくださるのはもちろん嬉しい。でも、ご自身の感性で遊び心豊かに家を楽しんでいらっしゃると、“自分の家”として住みこなしてくださっているんだと思えて、本当に嬉しいです」

 家は、そこに住む人があって初めて生きる。建築家のこだわりを結集させようが、どれほどの思い入れがあってつくろうが、主役はあくまで住む人たち。暮らしの中で自由に「住みこなしてくれる」ことこそが、建築家としての幸せだ──。シールの一件を何度も「嬉しい」と口にする陽子さんの笑顔には、そんな思いがにじみ出ているかのようだった。
  • 【写真1】外観 正面/Oさんの実家の畑だったという敷地は、約150坪。柿の木のある家や、畑も多いおっとりした風情の住宅街に不思議と馴染むO邸は、Oさんの希望だった平屋造り。広々した駐車スペースと長いアプローチの先に堂々と佇む

  • 【写真2】玄関/居住空間として広い土間を設けているため、その前に小さめの土間をつくってある。写真手前の玄関の引き戸は耐水性の高いサワラ。ガラスのある戸と格子のみの戸の2重になっていて、格子戸だけを閉めれば風を通せる。そのすぐ先にある引き戸はヒノキを使用。紺色の下駄箱は河野さんを通して家具職人にオーダーした造り付け

  • 【写真3】土間/玄関を入ると、最大天井高4mの大きな土間が広がる。ここは奥さまのグランドピアノを置くためのスペース。床は墨を入れたモルタルにタイルを貼った。重いピアノを置いてもキズがつきにくく、音響にも効果的だそう

  • 【写真4】土間/玄関を入ると、最大天井高4mの大きな土間が広がる。ここは奥さまのグランドピアノを置くためのスペース。床は墨を入れたモルタルにタイルを貼った。重いピアノを置いてもキズがつきにくく、音響にも効果的だそう

  • 【写真5】和室/土間から一段上がったところが和室。生活空間を通らずに来客を案内できる。小さな畳スペースではなく、ゆったり8畳あり、“本当に使える和室”として大活躍。和室の塗り壁はほかのスペースよりワントーン黄味が効き、畳と好相性。障子は河野さんの勧めで両面張りに。断熱のほか、格子に埃がたまらないのがメリットだ

個性的な屋根のカタチは北の光を活かすため

バンザイしている正面の“顔”が印象的なO邸の外観で、もうひとつ、気にせずにはいられないものがある。北に向かって、一部が斜めに飛び出すような屋根の形状だ。しかも、突起した部分の内側には窓がある。外側ではなく、“内側”に、だ。

 聞けば、この窓は室内でハイサイドの窓となり、北の陽光を高い位置から採り込み広範囲を照らす役割があるという。陽子さんいわく、「打ち合わせの際、Oさんが北の光を活かしたいとおっしゃっていたので、そのご要望に応えたのです」

 ならば、天井に北へ高くなる勾配をつけ、北の壁の高い位置に窓をつくり、屋根を斜めにする“片流れ屋根”でもよさそうなものだ。だがO邸は時折見かけるそれとは明らかに違う。なぜこのような屋根にしたのだろうか。

 陽子さんに質問してみると、興味深い答えが返ってきた。「採光面で効果的な高さを出して片流れの屋根にすると、天井が高くなり過ぎてOさんのお宅の場合はバランスが悪いんです。また、北側の外観が高い壁だけになって、のっぺりした印象になるんですね。それでは表情がなくて寂しいので、変化をつけてやわらかさを出しました」

 だとすれば、不可解なのが窓の角度。斜めの突起は、北に向かってお辞儀をしているような格好だ。その“お辞儀”の折れ曲がった内側にハイサイドの窓を設置しているのである。

 せっかく窓をつくっても、これでは光が入らないのでは?と思うが、「採光には問題ない角度にしています。また、通気用にジャロジー窓も設けていますが、この角度だと天候の悪い日も雨が入ってこないんですよ」とのこと。素人には目からウロコな話の連続に感心しきり。すると、陽子さんはいたずらっぽく笑って付け加えた。「あとは、この方がかっこいいからです」

 住まいは雨を避け、暑さ寒さをしのぐためのものであり、風が通って明るく快適、使い勝手がいいことは大前提。とはいえ、機能もさることながら見た目も大事。仕事からの帰り道、自分の家を目にしただけで嬉しくなる。眺めるたびに愛着が湧いてくる。そんな家だったらもっといい。
【河野 健昇さん コメント】

「もとからあったような家」「平屋」「北からの光を活かす」という3つの大きなご要望に対し、まずは素材や色使いでアンティーク風の空気感を演出。敷地が150坪と広いので平屋でも贅沢な空間使いが可能でしたが、廊下は設けず、ご家族のコミュニケーションが図りやすい一体感と回遊性の高い間取りとしています。北の光を活かす屋根の形は、デザイン性と共に室内の天井の高さを調整する意味合いも大きいです。結果的にちょっと個
【夫婦+子ども1人】

ピカピカの新築ではなく、以前からあったような落ち着きのある家をお願いしました。ウッドデッキテラスや広い土間は、河野さんの勧めもあって取り入れたものです。土間は雰囲気があっていいですね。寒さが厳しい地域のため、床暖房も入れていただきました。おかげで、土間といえども快適に冬を過ごせます。テラスは日常的に使っていて、子どもが駆け回る格好の遊び場。どの空間もとても気に入っていますが、妻は趣味で着付けを楽し
  • 【写真13】外観 北側/北に向かって斜めに突き出た屋根は、デザイン性と共に北の光の活用や、室内の天井の高さの調整などの意味も持つ。傾斜の内側にある窓は土間とLDKのハイサイドの窓。北から差す光がやわらかく入る

  • 【写真14】リビング・ダイニング・キッチン/上部のハイサイドの窓は、屋根の北に飛び出す部分に設置されたもの。高い位置の開口が、開放感と明るさをもたらす。写真左のテレビ台や食器棚は、下駄箱と同じ家具職人による造り付け

  • 【写真15】土間 ハイサイド窓/斜めに突き出た屋根を利用したハイサイドの窓は、土間にもある。土間は両脇をジャロジー窓としてあり、リモコン操作で開閉可能。Oさんによると、窓面が下に向かって傾斜しているので「かなり荒天の日にジャロジー窓を開けても、雨が入ってきません」とのこと

  • 【写真16】キッチン/業務用のコンロなど、料理好きなOさん夫妻らしいアイテムがそろった広いキッチンは、リビング・ダイニングから一段下がったところにある。シンクとつながるカウンターテーブルに座ると、キッチンに立つ人との目線がちょうどいい。床は土間と続いていて、素材も同じくモルタルにタイルを張った。水はねによる劣化が少なく、掃除もしやすい

  • 【写真17】バスルーム/すっきりとしたバスルームも広々。「冬、寒さが厳しい地域なので北に配置したくない」「お風呂から庭を眺めたい」という希望に応え、南の庭に面した場所にある。庭には外部からの目隠しになる塀も設けた

お家のデータ

所在地
埼玉県
家族構成
夫婦

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