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コーヒーを飲みながら桜を眺める 贅沢なひとときを過ごせる家

戸塚駅から車を走らせ約15分。ゆるやかな坂道をあがると、大きく枝を広げ、見事に咲き誇った桜の木が目に入る。そして少し先に視線を移すと、今度は満月のような照明が窓に浮かぶ2階建てが見える。そこは安藤さんご家族が暮らす場所。実はこの家、お施主さんが大工というちょっと変わった事例だ。設計を担当したのは、10年以上にわたり安藤さんと苦楽をともにしてきた建築家、秋山怜史さん

10年前からの構想が実現した桜の家

「初めて担当した物件の施工をしてくれたのが安藤さん。右も左もわからなかった僕に、現場のことを一から教えてくれました」。そう話す秋山さんを、安藤さんは真面目な人と評し、「よく木工事のことを聞きにきたよね。木組の組み方を教えたこともあった」と懐かしそうに目を細める。

「家を建てたいという話は、10年くらい前からしていたんです。ここには奥さんが育った家が建っていて、築60年を超えていました。リフォームのほうが楽なんだけど、古い家だから土台が低いし、裏山の麓だから水も吸っちゃってる。それを考えると建て直すしかなかった」。

10年前から繰り返されてきた「いつか」の話。それが実行に移ったきっかけをうかがうと、「シロアリが出ちゃったんです。古いからいろんなところにひずみがあって、冬は隙間風もひどかったし」と、キッチンから奥さまの声が届く。

何度も話に出てきたのが、「とにかく暖かく」という言葉だった。それを叶えるべく、断熱にはかなりこだわり、気密性の高い外断熱を採用したという。その効果あって、特にリビングは窓が多く、開けているのに十分暖かい。

ちなみに断熱剤は、安藤さん自ら貼ったという。安藤さんは、職人歴の長い大ベテランだ。「1ミリにこだわる土台作りが大切。そこをきちんとすれば、“建てる”というより、家が勝手に“建つ”」と大工としてのこだわりを語る口ぶりには、その経験の深みが感じられる。

そんな大先輩、しかもこの世界で自分を育ててくれた人から、自宅の設計を依頼されるなんて、建築家冥利に尽きる話である。とはいえ、プレッシャーも相当のものだったのではないだろうか。しかし、返ってきたのは「プレッシャーよりも、楽しさのほうが上だった」という頼もしい声だ。

とはいえ、設計には3年もの時間を要したそう。「あれもこれも入れたくなって、気づいたら70坪ぐらいの話になっていた。さすがに広すぎるって、修正するのに時間がかかった」。安藤さんが図面を読めるため、普通の施主とではありえない、FAXを使った図面のやり取りが繰り返された。結局、当初の予定の約2/3の面積におさえ、それでも入れたかった要素はほとんど削ぎ落とされずに実現したと言う。

建築家として仕事をするにあたって、施主とのコミュニケーションが重要なのは言うまでもない。しかしそれと同時に、図面を形にする現場との良好な関係も必要だ。まるで安藤家の一員のようにそこになじむ秋山さんからは、人との関係を丁寧に築く人柄がうかがえた。「お施主さんの『人』を見るのを大切にしています。他愛ない会話から人とその土地を知ること。敷地の特徴をどこまで読み込むかが設計に大きく影響するからです。そして、お施主さんがそこで生活している姿を想像することも大切ですね」。
  • 桜の木の近くに建つ素敵な一軒家

  • 奥さまからのリクエストは水回りの広さ。写真への映り込みを避け避難したスタッフ含め5人が入れる広さがある。さらに食器棚の裏には、小さな書斎スペースも。全部で10畳

  • こだわりのベランダは、夫婦ふたりでコーヒーやお酒を飲みながら景色を楽しむのに十分な広さ。アウトドアベンチに腰掛けると、別荘にいる気分

切り取られた風景はまるで一枚の絵画のよう

ここで生まれ育った奥さんが、子供の頃からあったという桜の木。出かけようと1階におりたとき、正面の細長い窓に、桜の淡いピンクが見事に映える。そして振り向くと、二階まで続く広い窓には、青々とした竹が揺れる。

この土地で育った奥さまにとって、竹やぶは背景でしかたなかった。婿養子としてやってきた安藤さんに、「これを見せないなんてもったいない」と言われても、「冬は枯れ葉がたまって汚いですし、むしろ隠すものという感覚で生きてきました。だからいくら主人に言われても、本当に?って半信半疑だったんです」。

しかし、家ができあがり、窓から見える竹やぶを見て今までのイメージが変わったという。「今まではゴミ捨て場のようなイメージしかなかったんですけど、こんなに青々としてきれいなものだったなんて。主人がマメに草刈りもしてくれるんですよ」とうれしそうだ。

正面の桜、裏山の竹、そしてキッチンに立ち目の前に見える高窓には、山の景色がのぞく。どの窓も一枚の絵画のように、美しく自然を切り取っている。どこにどう抜けば、どんな景色が見えるのか、じゃぁ、天井の高さはどうするか。開口部の位置は?など、試行錯誤のすえ、今の形に収まった。

どれも窓のサイズが絶妙で、大げさになりすぎることなくそこにはまり、季節や時間の移ろいに合わせて、自然の様々な顔を楽しませてくれる。
  • 2階の窓からも桜が見え、ベランダに出れば、自宅で花見が楽しめる

  • 2階へと続く階段は、そのままロフトにもつながる。どこに空間を作るか悩んだ末、下は収納スペースになり、必然的に天井高は上がった。そしてそれが窓の位置決めにも影響を与えたという

抜けのよさにこだわった広々とした玄関ホール

軒裏や玄関の扉、上框の天井。そして床。至るところに木材が使われ、まるでロッジに来たかのような気分に浸れる。「実は1階と2階で床板も違うんです」。

同じ無垢材でも、カバ材を使った1階のほうが色が薄く柔らかい。飾りを最小限に抑えたシンプルな壁面に、やさしい彩りを添えてくれる。そしてナラ材を使った2階は、1階よりも濃い色で、より部屋にぬくもりを与えてくれる。

こだわったのは床だけではない、秋山さんの「抜けをつくりたい」という気持ちを反映した玄関ホールはなんと8畳という空間だ。そこから2階へとつなぐ階段は、ダークトーンで落ち着きを与えながらも、圧迫感のないデザイン。当初階段はもっと玄関に近い場所に、一直線で付けられる予定だったそう。

「一直線だと場所をとるから、踊り場をつけて曲がらせない?」って言ったらこんなに広くなっちゃったとは安藤さん。「秋山さんが上げてきた図面に、広すぎると赤字を入れたのに、戻ってき図面でまた広くなってるんだもん」と安藤さんは笑う。

とはいえ、地元の消防団など人がよく集う家。広いから酔っ払った人も安心して通れるとまんざらでもない様子。もちろんこれは、安藤さんのことをよく知っていて、何がOKか見極めてのことだ。ちなみにふたりは無類のお酒好き。仕事の話をしながらよく酒を酌み交わしたそう。
  • ベランダの屋根の軒裏が室内の明かりを反射し、家全体が明るく見え、遠くからでも目立つ。帰り道にこの明かりが見えると、もうすぐ家だという安心感に包まれる

満月のようにぽっかり浮かぶ照明が、360度やさしく照らす

「主役である家の邪魔になることを避けたかった」と選ばれた球体の照明は、外から家を眺めたとき、一番に目がいくところだ。ぽっかり宙に浮かぶ姿は、まるで満月のよう。

「家に届いたとき、あまりの大きさに驚いた」と安藤さんご夫婦は語るが、実際に天井から吊るしてみたら、「あぁいいねぇ」としっくりきたそう。安藤さん自ら調整してつけたというコードの長さも絶妙で、外から見たときに、窓からキレイに顔を出すのだ。

リビングにはこの照明が4つ。明かりをつけると、窓に明かりが映り込み、照明がいくつも連なっているように見え幻想的だ。「球体で360度光が届くからか、すごく明るいんです」。すべてを付けなくても、生活するには十分の明るさが手に入る。
  • 満月のようにぽっかり浮かぶ照明が、360度やさしく照らす

  • 満月のようにぽっかり浮かぶ照明が、360度やさしく照らす

お家のデータ

家族構成
夫婦

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