サーフと石垣島!
憧れの別荘を実現した沖縄ならではの機能とは?

 沖縄県、石垣島にUさんご夫婦が建てたのは、広い土地を活かしてリビングルームと寝室を別棟にし、屋根付きのデッキでつないだ「2棟構成の家」。2つの空間を行き来するのに一度外に出るというユニークなアイディアを提案した、石垣島出身の建築家、仲吉さんの家づくりに迫る。

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沖縄では珍しい木造建築で、自然と溶け込む住まいを実現!

 誰もが1度は憧れる、沖縄離島の別荘。今回、石垣島でその夢を実現したのが、施主であるUさんご夫妻だ。もともとサーフィンが趣味というUさんは、海と繁華街に近いという立地の良さに惹かれ、この土地を購入することを決めた。設計を担当したのは、石垣島出身の建築家である仲吉さん。Uさんはホームページで見た仲吉さんの家のテイストを気に入り、この石垣島の家だけでなく、東京のご自宅の設計も依頼したのだという。

 東京の家が完成した後に始まった、石垣島の家づくり。まず仲吉さんが考えたのが「コンクリート造にするか、木造にするか」という問題だった。「沖縄県内では台風やシロアリ、塩害を考慮して建築される住宅の約77%が鉄筋コンクリート造なのですが、現在は工法が進化しているため、木造でもこれらの課題に耐えられる住宅ができるんです」と仲吉さん。当時はコンクリートの価格が値上がりしていたこともあり、今回は木造を提案することに。Uさんもこの提案を受け入れ、沖縄では珍しい木造の家づくりがスタートした。

 このU邸を外から見ると、とても広い建物のように見える。それもそのはず、U邸はLDKとベッドルームを別棟にし、その間を屋根付きのデッキでつなげるという2棟構成となっているのだ。この分棟形式は、島の古民家ではよく見られるスタイルだそう。2棟はガジュマルの木を植栽した中庭を囲んでL字形に配置されており、いずれの部屋からも庭を眺めることができる。この庭には昔からある井戸があり、こちらを活かしたいというUさんの希望も生かされているのだという。「東京都は違う広い土地を贅沢に使いたかった」と話す仲吉さん。東京のご自宅が狭小だったこともあり、石垣島の家はゆとりを持った造りにしたいというのが、Uさんと仲吉さんに共通する思いだった。
  • 中庭側から見た外観/外壁には杉の梁を使用しており、木造建築らしい自然な雰囲気を醸し出している

    中庭側から見た外観/外壁には杉の梁を使用しており、木造建築らしい自然な雰囲気を醸し出している

  • 道路側から見た外観/人目が気になる道路側は閉じることでプライバシーを確保しつつ、室内に圧迫感が出ないよう高窓を設けた

    道路側から見た外観/人目が気になる道路側は閉じることでプライバシーを確保しつつ、室内に圧迫感が出ないよう高窓を設けた

  • 屋根付きデッキ/10畳の広さがあるデッキは、さながらアウトリビング。床には防腐処理を施した杉が使われている

    屋根付きデッキ/10畳の広さがあるデッキは、さながらアウトリビング。床には防腐処理を施した杉が使われている

18畳のリビングはご夫婦で座って寛ぐゆとりの空間

 「ゆとりのある空間を作りたい」。
この思いは、室内にも生きている。18畳と広々としたリビングには庭を望む大きな窓が設けられており。その向こうには約10畳の屋根付きデッキがある。このデッキがアウトリビングとなるため、視覚的にも開放感たっぷりだ。リビングの床材は、優しい色のウォールナット。中心には建築会社からのプレゼントだという楠のローテーブルがあり、床に座ってゆったりとした時間を過ごすことができるよう工夫されている。

 リビングの横に配されたキッチンは既製品だが、より木造の家になじむよう、周りに珪藻土を塗った。このキッチンがリビングよりも低くなっているのは「キッチンに立つ人とリビングに座るゲストとの目線の差が少しでも小さくなるように」という配慮からだそう。このように住む人の目線に立った家づくりも、仲吉さんならではといえるだろう。

 ちなみにこのリビングには「より自然に暮らしてほしい」という意味で、温度差換気ができる煙突状の換気塔が備えられている。ここを開くことで、天井に溜まった熱い空気を逃がすことができる。この換気塔があることで、沖縄の風を家に上手く取り込むことができるという。さらに、通常40-50cmの床下を70-80㎝の高床式にしているのも、沖縄の湿度の高さを考慮してのこと。これも、沖縄の気候を知り尽くした仲吉さんだからこそ思いつくアイディアなのだ。

 こうして完成した、石垣島のU邸。Uさんご夫婦も「ここに年に数回訪れるのが楽しみです」と話しているという。Uさんが不動産業を営まれているということもあり、これからは仲吉さんと一緒に、沖縄に木造の家を増やす活動をしていきたいと新たな夢が広がっているそう。コンクリート造が当たり前だった沖縄の常識が変わる日も、そう遠くはないかもしれない。
  • キッチンから見たリビング/別荘ということでシンプルにしつらえられたキッチン。ここに立つと大きく開けた窓から庭の風景を眺めることができる

    キッチンから見たリビング/別荘ということでシンプルにしつらえられたキッチン。ここに立つと大きく開けた窓から庭の風景を眺めることができる

  • キッチンに降りる段差/リビングのゲストとの目線が合うよう、30㎝ほど低い位置に設置されたキッチン台

    キッチンに降りる段差/リビングのゲストとの目線が合うよう、30㎝ほど低い位置に設置されたキッチン台

基本データ

施主
U邸
所在地
沖縄県石垣市
家族構成
夫婦
敷地面積
384.88㎡
延床面積
107.74㎡