親世帯・子世帯が、 互いに心地よく生活する 「二世帯住宅特集」

二世帯住宅には、玄関やキッチン・水回りを両世帯一緒に使用する「完全共有型」、その一部を共通する「部分共有型」、そして玄関・キッチンなど全てが世帯別々にある「分離型」があります。
いずれの共通点も、同じ屋根の下に住む者同士、それぞれのいい距離感で、心地よく生活できる空間があること。

ここでは、それぞれの希望や理想に合った、二世帯住宅を実現した事例を紹介いたします。
ぜひみなさまの住まいづくりの参考にしてください。

広いウッドデッキと室内が一体化 開放感溢れる店舗併用二世帯住宅

福島県福島市 / かみてつのいえ

土地の形を活かしながら有効に使うべく、建物を雁行に配置。また、建物を中央に配置せず奥に寄せることで、要望があった客用3台分と、自家用車3台分(+東側に予備として縦列1台分)の駐車場スペースも確保することに成功した。

また、「店舗は店舗、住宅部分は住宅部分と認識しやすいよう、店舗部分は平屋建ての下屋として独立性を持たせ、住居部分は親世帯を1階に、子世帯を2階に配置する2階建の計画を基本としました」。と語る清さん。こうして、現在のO邸の形がある程度定まってくることとなる。

築90年の生家を新たな住まいに! 建築家が自ら設計した「理想の二世帯住宅」

福岡市城南区 / M邸

2階に上がると、吹き抜けを中心として左側に2人の子ども用の子ども部屋と、松隈さんご夫婦の寝室が。さらに右側には松隈さんの仕事場ともなるライブラリーを備えたパブリックスペースと、お父様用の部屋が用意されている。お父様は事業をされているため、その事務作業の場として使われているそうだ。

通常の二世帯住宅のように、親世代と子世代の間取りが明確に分かれていないのも、松隈邸のユニークなところ。その理由について、松隈さんはこう語る。
「以前の家も三世帯の大家族で暮らしていたため、もともと世代で空間を分けるという感覚がなかったんです。両親も高齢になっていたので、いつでも目が届くよう、あえて世帯で空間を分けない間取りを心がけました」。

“スープの冷めない”程よい距離感。 二世帯住宅における、ひとつの最適解。

愛知県春日井市 / M邸

「今回の計画の中で、既存の家をリノベーションするか、もしくは建て替えるかという選択が、間違いなく一番悩んだことです」と箕輪さん。ご両親が建てた木造2階建ての住宅は、箕輪さん自身もここで生まれ高校生まで育った大好きな家。ご両親が建てた当初は南側に梅林が広がり、その梅林を眺めるようリビングが配置されていた。ただ箕輪さんが中学生の頃、梅林はゴルフ練習場に変わってしまった。気持ちのよかったリビングは、外からの視線のためほぼ使われない状態になってしまったという。
「せっかくのリビングなのに使われないのはもったいない。また、両親が家の中に閉じこもったような暮らしをしているのは変えてあげたいな」という思いから、箕輪さんは建て替えをご両親に提案した。

ご両親と箕輪さんの家族、2世帯3世代が同居する家をプランニングするにあたり、箕輪さんが基本テーマとして掲げたのが「二世帯の距離感」。いらぬ気遣いを避けると同時に、お互いのプライベートな空間を確保するため、1階と2階で世帯の空間をセパレート。ただ、ひとつ屋根の下に暮らす、ひとつの家族。完全に分かれて暮らすのではなく、何となく気配が分かる、家族の息づかいが伝わる、そんな“程よい距離感”のある暮らしを実現するため、箕輪さんが導き出したのが「L字型の家」だ。

異なる街並み、テナントと住居、2つの世帯 全てを調和させた、ストレスなく暮らせる家

東京都練馬区 / 光ヶ丘の家

施主であるお母さまが、息子さん夫妻と一緒に暮らすために自宅の建て替えを、と始まった光が丘の家づくり。建て替え前の家と同じように、1階にはテナントを入れ、上の階に3人が住む家を建てたいという要望だった。

平井さんはテナントと住居部分の間でプライバシーを守れるよう配慮し、1つの建物のなかにありながら、ほとんど干渉しないつくりとした。テナントは基本的に北面の幹線道路側からのみ出入りするように計画。ご家族の住居へは屋外階段を上り、西側2階の玄関から入る。

また、北面の外壁は、1階は黒、住居である2・3階を白に塗装した。テナントエリアと住居エリアの色をはっきりと切り替え、視覚的にもテナント部分の独立性を高めている。

それぞれの生活を大切に ほどよい距離感でつながる二世帯住宅

東京都大田区 / K邸

実家の建替で親子3人の二世帯住宅をというこの案件。住む人数が少ないにも関わらず、世帯それぞれに独立した玄関やキッチンなどを設けるのは、少々もったいない気もするが、藤江さんが分離型を提案したのには理由がある。

これまで海外で暮らしてきたKさんご夫妻には、親子であってもプライベートの確保はとても大切。一方のお母様にとっても、これまでご自身で家事をこなしてきたことや、友達を招いたりもしたいというライフスタイルがある。それを尊重し「自分でできるうちは自分でやる」というほうが、生活のハリが生まれ元気でいられるのではないかと藤江さんは考えたのだという。

「ただし、せっかくの二世帯住宅です。完全に独立しバラバラになってしまう関係ではなく、お互いの存在をいつでも身近に感じられる優しい関係性にしたい。そのために2つの建物の間にウッドデッキを設け、ゆるやかな間隔をとる配置を考えました」と藤江さんは語る。

美しさ、住みよさだけでなく 未来を見据えた土地活用まで

東京都世田谷区 / 大原の家

老境に差し掛かった施主のSさんご夫妻の建て替え計画。子供家族との2世帯住宅を建築する計画だが、一筋縄ではいかない事情があった。実はSさんは作曲家。建て替えにあたっては仕事場として、また弟子達を指導する場として音楽室を必要としていた。しかも近い将来訪れるであろう相続といったことも視野に入れ、できるだけこの環境も次の世代に継いでいきたいという気持ちがあった。

いわばこの案件は、ただ希望通りの建物をつくるだけでなく、将来を見据えた土地活用という側面ももっていたのだ。

Sさんが、この計画を託したのが、MTAの高橋真さん。高橋さんは培ってきたキャリアを通じ、個人住宅をはじめ、共同住宅や事務所といった様々な建築に携わってきたことで、土地活用や賃貸物件の収益性などにも豊富な知見を持っていた。

木製ルーバーが暮らしを守る、中庭でつながった二世帯住宅+アトリ

愛知県名古屋市 / S邸

木製のルーバーとガルバニウム鋼板の外壁に覆われた『猪高台の家』。実はこの家には「建築家の自邸+親の家+設計事務所」という3つの機能が盛り込まれている。「もともとは親が住まう普通の一軒家でした。私が家族を持ったため二世帯住宅にしたかったこと、同時に建築事務所を作りたかったこともあり、建て替えを決めました」と笹野さん。

住宅部分は親子各世帯の機能を完全に分離した二世帯住宅。笹野さんは子どもを含む家族で暮らす十分なスペースを、親世帯である母親は一人の暮らしながら近所に住まう姉家族が遊びに来ても泊まるのに困らない部屋数と、趣味であるピアノ室を、という希望があった。建築事務所には、笹野さん自身を含む最大5名が働けるワークスペースと打ち合わせルーム、資料室、トイレが必要。しかし、ここは敷地面積270㎡、第一種低層住居専用地域という建ぺい率や総床面積の制限が厳しい場所でもあった。「この土地条件に対して必要とされるボリュームはあまりに過大な印象で…。難解なパズルを解いているようで、何度もプランを組み立てては潰しての繰り返しでした」。