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生まれは石垣島。この地で新たに暮らす人々を応援する店舗兼住宅

従兄弟から依頼が、故郷である石垣島での建築のきっかけに

「従兄弟から依頼があり、生まれ故郷である石垣島での建築を手掛けるきっかけになったんです。」

シンクロアーキテクツ代表の仲吉厚志さんは、そう話しを切り出した。

「思いのほか、施工業者の方や施主さまとの関係が非常にスムーズでおもしろかったこともあり、これはまたやってみたいぞと思ったんですね。」

そんなある日、石垣島で古民家をベースにした店舗兼住宅のカフェを造りたいというオファーが舞い込んだ。

現代の技術を用いて挑んだ店舗兼住宅の「古民家風カフェ」とは?

仲吉さんが手掛けることになった店舗兼住宅は、石垣島にある「中村屋」さん。カレーライスが絶品と評判の古民家風カフェだ。

「当初は古民家を再生したいというご依頼でした。中村屋のオーナーさまは瓦屋根の古民家を探していて、改修して店舗(飲食店)兼住宅にしたいとのことです。しかし、手に入れられた家屋が80年も前のものでかなり傷んでおり、増築された箇所の状態も芳しくなく、構造材はすでに腐っていました。」

中村屋のオーナーさまは料理雑誌の編集をされていた方で、「古民家再生」にこだわりをお持ちだったという。結果的に、古民家再生プランを踏襲しつつ、新たに建物を木造での基礎の部分を造ることになった。

施工には4カ月ほど要したという。中村屋のオーナーさまからはどのようなリクエストがあったのだろうか。

「80年前の古民家の素材をできるだけ活かしてほしいというリクエストがありました。私としてもアルミサッシなどは避け、すべて木造にすることにこだわりました。」

古い家屋を取り壊す際に、瓦や木材などの素材を捨てずに使えるものを選んだのだという。その結果、木材は梁などの構造材としてではなくシンボル的な柱として、またカウンターや棚の一部として生まれ変わったのだ。瓦も、庭のアクセントだけでなく、強風時に砂が舞い上がらないよう、新たな役目を担うことになった。

では、仲吉さんが現代の技術を用いて挑んだ「古民家を表現する」方法とはどのようなものだったのだろうか。

「外観はあくまで古民家の佇まいを感じさせつつ、構造材には『プレカット』という一般的な技術を用いて家屋を組み立てていくのです。接合部分には金物を用いて耐震性を高めています。」

石垣島という立地上、本州よりも強力な勢力を持つ台風が襲来する。しかし、大地震にも耐えうる強靱さを誇るため、大型台風程度ではびくともしない。

「ここはうまくいったと思うのは、建物の構造のダイナミックさですね。民家の文献を調べまして、大梁の部分や、木造ならではの雰囲気を表現できたのではないかと思います。中でも天井の高低はメリハリをつけました。もっとも高いところで5メートル以上あるんです。斜めになっている梁の部分は『フウタイ』(登り梁の意味)というのですが、鹿児島県から曲がっている木材を見つけてきて船で運んできたんです。」

天井にある美しい曲線を描いた梁は、建物の強度を維持する役目を担うだけでなく、アクセントとしての役割を持つのだ。

「難しかったのは店舗とプライベートなスペースの線引きですね。最近は明確に分けたいという方が多いのですが、今回の施主さまはプライベートな部分が多少外から見えてもいいと仰っていたので、そのあたりも配慮いたしました。」

開放感を意識した設計が功を奏したのか、お住まいの近くある小学校に通うお子さんたちが通学途中に工事の様子を眺め、そのうち大工さんと会話を交わすようになったという。お年寄りの方も「古民家風」ということで、写真を撮る光景も見られた。そんな中村屋さんも、すっかり石垣島の風景に溶け込んでおり、今や地域になくてならない存在となっているようだ。

【中村屋】
住所:沖縄県石垣市石垣215
Tel:0980-87-5075
営業時間:(昼)11:30~14:30(夜)予約のみ
定休日:水曜日
食べログ:http://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47010937/

木とコンクリートの調和が美しい、人気のカフェハンバーガー屋

仲吉さんが石垣島で手掛けた店舗兼住宅には、木とコンクリートを調和させた事例もあるという。

「石垣島にある『ウリウリカフェ』という、ハンバーガーが美味しいと評判のお店です。」

「ウリウリカフェ」さんの店舗兼住宅は、木とコンクリートという異なる素材を見事に調和させ、水平線を強調した設計を心掛けた作品だ。

「施主さまがお若い方で、店舗とプライベートなスペースをきちんと分けたいとのご依頼でした。東京にお住まいだったとき、飲食店を経営されているわけではなかったんです。石垣島で店舗を構えて、どうやって土地に馴染んでいくか。そのあたりのフォローケアも行いつつ、施主さまのリクエストに沿った設計をさせていただきました。」

施主であるウリウリカフェのオーナーさまは愛犬家とのことで、ドッグカフェの役割も担っている。また海外からのお客様や、バイクで旅をしてたり、トライアスロンが目的で石垣島を訪れている方が来店することも珍しくないという。

「施主さまはコンクリートならではの雰囲気がお好きで、そこに木のエッセンスを加えることを心掛けました。ちょうど景観条例が施行されたタイミングで、これをポジティブに捉えて屋根に赤瓦を敷いてみたんです。あとは、あまり既製品を使っていないところでしょうか。厨房器具は既製品ですが、住宅のキッチンまわりは特注品です。」

一見すると、コンクリートならではのモダンさと、木のぬくもりが見事に調和する店舗兼住宅となったように映る。しかし実際には、一筋縄ではいかなかったと仲吉さんは語る。

「琉球赤瓦には種類があって、コンクリートの外観に合うものをセレクトしました。コンクリートも単なる打ちっ放しではなく、琉球石灰岩が混じっていて、周囲の景色に馴染むように心掛けました。住宅と店舗が混じっているような雰囲気も狙っていますね。」

では、店舗とプライベートなスペースをきちんと分けたいというリクエストをどのようにしてクリアしたのだろうか。

「実は、店舗用と住居用、2つのキッチンがあるんです。壁一つで隔てて、プライバシーは完璧に確保されていますよ。」

石垣島という土地にすっかり馴染んだ「ウリウリカフェ」さん。食事は売り切れ次第終了とのことで、石垣島を訪れる際には早い時間に行くのが良さそうだ。

【ウリウリカフェ(UliUli Cafe)】
住所:沖縄県石垣市伊原間2-511
Tel:0980-89-2002
営業時間:
[金土日月火]11:00-17:00 (LO16:30) *
[水]11:00-15:00 (LO14:30) *
*食事は売り切れ次第終了
定休日:木曜日/第一・第三金曜日
URL:http://www.nbb-ishigaki.jp/~uliuli/
食べログ:http://tabelog.com/okinawa/A4705/A470501/47003229/

仲吉さんが設計するうえで譲れない理念とは?

仲吉さんが設計するうえで譲れない理念はどういったものなのだろうか。

「単に建物を設計するのではなく、住まう方の暮らしや地域との関わり、その場所に馴染むことなどを考えますね。最近のマンションは玄関を入るとすぐに部屋があります。戸建てだとリビングや階段を通る欧米のような暮らしができるプランを心掛けています。」

確かに、玄関から家族共有のスペースを通らずに、直接、自分の部屋に出入りできる導線の住まいも珍しくない。それは、東京であっても石垣島でも変わらないと仲吉さんは語る。

また設計士の中には、自分が手掛けた作品に対して施主が手を加えることを好まない方もいるのだとか。

「施主さまのものですし、どんどん、自由にやってください。工事が終わり、施主さまが住み始めてからが本当のスタートだと思っていますから。」と柔やかに語る。

家を設計するだけではなく、その土地に馴染むようにさまざまな工夫と配慮を心掛けている仲吉さん。人生の一大決心の末に新天地で生活を決めた方にとって、非常に心強い存在であることは間違いない。