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趣味も仕事も!「思い出の実家」のリノベは生き方をどう変えた?

2015年11月30日 ── 神奈川県・リノベ・リフォーム ── 16590

 子どもたちも独立し、現在はふたり暮らしだというKさんご夫婦の住まいは、以前は奥さまの実家だった一軒家。建築家・秋山怜史さんはご夫婦の願いに真摯に向き合いながら、この家に詰まった大切な思い出は残しつつ、さまざまな工夫を凝らしてより住みやすい空間へとつくり替えた。

書いた人 KLASIC編集部

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    作った人 秋山怜史

    住んでいる人 夫婦

    そば打ちやおもてなし。夫婦それぞれが好きに使えるカウンター
    • キッチンカウンター/シンプルシックなモルタル仕上げのキッチンカウンター。「火からおろしたばかりのお鍋などもそのまま置けて、鍋敷き要らず。とても便利で使いやすいです」と奥さま

    • キッチン1/ガスコンロ上部とシンク上部にキッチンツールを引っかけることのできるバーを設置。あえて「見せる収納」とすることで、使いやすさを格段にアップさせた

    • キッチン2/料理によく登場するスパイスやオイル類は回転式のトレイに載せて。使い込むことによって生じたモルタル天板の傷や黒ずみも、“味”としてキッチンの雰囲気に溶け込んでいる

    • キッチン3/キッチン部分はモルタル仕上げの土間となっており、リビングダイニングより14センチ程度低くなっている。シンク下部にはあえて収納を設けなかった。必要に応じて移動式のワゴンやラックなどを入れて使うことで、自由な収納スペース確保が可能に

     大型商業施設や飲食店が軒を連ねる駅周辺を抜け、低層住居が立ち並ぶ閑静な住宅地の一角に建つK邸。それまで住んでいたマンションを手放し、奥さまのご実家だったというこの家をリノベーションしようと決めたのは「大切な思い出」がきっかけだった。

    「わたしが結婚して家を出たあと、ここには両親が住んでいました。その後ふたりとも亡くなり、当初は売りに出していたんです。ところが『売却後は家を取り壊し、庭もすべて更地にする』と聞いて。実は、庭に植えられている松の木は、両親がことのほか大切にしていたもの。思い出の詰まった木まで切られてしまうとなったらいてもたってもいられず『だったら改修工事をして、私たち家族が住もう』ということになりました」と奥さまは振り返る。

     「最初に打ち合わせをさせていただいたときは『キッチンのみの簡単なリフォームを』と考えていらっしゃったそうです」と、設計を担当した建築家・秋山怜史さん。でも、と奥さまは笑う。「改築したらこんな風に住みたい、という私たちの希望も、この家で起こった色々な昔話も全部聞いてくださった秋山さんの『1階をまるごと改修する』というご提案がとてもすばらしくて。主人も賛成してくれたので、キッチンだけという当初の計画を変更し、秋山さんのプランでいこうと決めたんです」

     料理づくりやおもてなしが大好きな奥さまの希望のひとつは、作業しやすい大きなカウンター。そのオーダーに応え、秋山さんはモルタル仕上げの広々とした変形カウンターを設けた。「モルタルはシミがついたり、ヒビが入ったりする可能性もないわけではない。その反面、使い込むと独特の光沢が生まれ、なんともいえない良い風合いになります。そういったモルタルの特徴を楽しんで使ってくださっています」と秋山さん。奥さまも「これだけ大きくとっていただいたので、手狭さを感じることなく調理ができます。床を土間にしたのも掃除がしやすくて、本当に使い勝手がいいですね。おかげで台所に立つ時間が増えました」と大満足の様子。

     カウンターの一部はダイニングスペースにせり出している。ダイニングはキッチンよりも一段高くなっているため、座って使うのにちょうどいい高さ。「カウンターがちょっと変わったこの形になったのは、ご主人の希望が『そば打ちのできる場所がほしい』ということが発端なんです。カウンターの端の部分は床が高い分、そば打ちをするのにちょうどいい高さになりました」と秋山さん。「打ち合わせのときに、主人が出した唯一のリクエストなんですよ」と、奥さまが笑顔で付け加えた。

    視線の抜け、明るい色調。部屋を広く見せるテクニック
    • リビング~ダイニング/床にはメープルの無垢材を使用。写真右のダイニングテーブルの設計や、テーブル上部のペンダントライトのセレクトも秋山さんの手によるもの。必要に応じ、完成した空間の雰囲気に合わせた家具の設計や選定なども行っている

    • ダイニング~ワークスペース扉/ワークスペースの扉には引き戸をつけ、空間を有効に活用できるように。壁紙には吸湿効果があるといわれる珪藻土のクロスを採用した

    • ワークスペース/コンパクトなスペースのため、リビングとの仕切り壁の上部を開けたほか、外の樹木を眺めることのできる窓をつけて開放感を演出。窓は開閉式なので、風の通りもよい

    • 洗面所~脱衣所/「以前の間取りは少し窮屈だったとおっしゃっていたので、水まわりの動線はゆったりしたつくりを意識しました」と秋山さん。棚の高さは、市販の収納カゴがぴったり収まるように調整してつくられた

    • バスルーム/旦那さまが空調関係の会社にお勤めとのことで、バスルームを含め全館空調を導入した。「家じゅうどこにいても24時間快適に過ごせます。電気代も思っていたほど高額ではなかったので、とり入れて大正解でした」と奥さま

     WEB関連のデザイナーである奥さまのもうひとつの希望は、1階に自身のワークスペースを設けることだった。「落ち着いて仕事がしやすく、かといって閉鎖的な環境でもない場所を、とお願いしました」と奥さま。これを受け、秋山さんはリビングダイニングと隣り合うような形でコンパクトなワークスペースを設け、庭に面している部分の奥行きを140センチほど増築した。さらに秋山さんは「完全な個室にはしたくなかったので、仕切り壁の上部を開けました。どちらの場所にいても人の気配を感じられるほか、ワークスペースをとることで少し狭くなってしまったリビングダイニングから見た“視線の抜け”をつくり、空間をより広く見せる効果をねらっています」というプロならではの“技”を教えてくれた。


     広く見せるテクニックはほかにもある。「仕切り壁の上部に天井を照らすような形でライトを入れ込みました。間接照明には奥行きを感じさせる効果があり、実際よりも広い印象を与えることができます。さらに、ダウンライトや床置きのフロアランプなど、高さの違う照明をバランスよく配置し、立体感のあるインテリアを提案しました」。庭側の増築部分はすべてガラスサッシに。「太陽の光や風がたっぷり入るので、開放感があるのもうれしいですが、いちばんの喜びは庭に植えられた松の木がよく見えること。草木の手入れも楽しんでいます」

     リノベーションしていちばんよかったことは?という問いに、奥さまはこう答えてくれた。「いかに仕事をしやすくするか、という要望もお伝えしながら改築した結果、立派なワークスペースもつくってもらいました。だから、今まで以上に仕事をがんばろう、と竣工当初は思っていたんです。だけど、暮らしていくうちに、料理の面白さや草木の手入れをする喜びなど、仕事以外で感じられる楽しみをあらためて知ることになりました。これまでがんばってきた分、今は仕事をセーブし、ゆったりと毎日を過ごしています。住まいを変えることで、気持ちまで変わっちゃった。私にとって秋山さんは『生き方を変えてくれた人』なのかもしれませんね


    作った人:秋山怜史さんコメント

     Kさんご家族には何度もお話する機会を設けていただき、この家にまつわる思い出をたくさん伺いました。そうすることで「残したいところ」と「改善したい部分」が明確になり、まったく新しい間取りでありながらも、どこか昔の記憶を呼び起こさせるような空間ができたと思っています。空間に合わせて設えたテーブルやスツールを含め、Kさまにはとてもご満足いただき、完成から5年が経った今でも家族ぐるみのお付き合いをさせていただいています。

    住んでる人:ご夫婦コメント

     築40年ほどになるこの家を、こんなに快適な住まいにつくり替えてくださった秋山さんには、本当に感謝しています。暮らし始めてからもう5年。その割には汚れなどもつきにくく、ずっと気持ちよく過ごせています。秋山さんは内装に合わせた家具の設計や、照明器具のセレクトなども請け負ってくださり、プロならではのインテリアの仕上りにはとても満足。この出会いを大切に、これからもいろいろとご相談させていただこうと考えています。

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