木造・鉄骨・RC… 注文住宅の構造・工法 知っておきたい種類と特徴

2025.12.26

注文住宅を検討する際、つい間取りやデザインに目が向きがちですが、実は「構造・工法」は住まいの性能を左右する非常に重要なポイントです。

構造・工法によって耐震性や断熱性、デザインの自由度、リフォームのしやすさなどが大きく変わるため、家づくりの初期段階から理解しておくことが大切です。

この記事では、注文住宅で採用される主な構造・工法の種類と、その特徴・メリット・デメリットを分かりやすく紹介します。

代表的な構造・工法とその特徴

建物を支える“骨組み”のことを 構造、その骨組みをどのように作るかという“つくり方”を 工法 といいます。

住宅の構造は大きく「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造(RC造)」の3種類に分かれ、さらにその構造をどのように施工するかによって

「木造軸組工法(在来工法)」
「2×4(ツーバイフォー)工法」
「鉄骨造(S造)」
「鉄筋コンクリート造(RC造)」

といった主要工法に分類されます。 ここからは、それぞれの特徴やメリット・デメリットを順番に見ていきましょう。

◆間取りやデザインの自由度が高い
 「木造軸組工法」

木造軸組工法は、日本に古くから伝わる伝統的な工法で、「在来工法」とも呼ばれます。

基礎の上に土台 → 柱 → 梁を組み上げて骨組みを作り、壁には「筋かい」という斜めの材を入れて補強する方法です。

日本の風土に適したこの工法は、長い歴史を持ちながら進化を続けており、和風から洋風まで幅広いデザインに対応できます。

◇メリット

間取り・デザインの自由度が高い

柱や梁の配置を調整することで開放的な空間を作ることができ、窓やドアなどの開口部も大きく設けられるため、通風や採光が良好になります。

特に、窓の大きさや位置を自由に設計できることで、明るく快適な居住空間を実現しやすいのが魅力です。

リフォーム・増築がしやすい

ライフスタイルの変化に応じて間取りを変更しやすいのも特徴です。
例えば、子ども部屋を仕切ったり、バリアフリー化したりといった改修工事にも対応しやすく、長く住むほどこの柔軟性の恩恵を感じることができます。

対応できる建築会社が多い

多くの建築会社や工務店が扱っているため、プランやコストの選択肢が幅広い点もメリットです。

職人の技術力を活かしたこだわりの住宅を建てたい方から、限られた予算で効率的に家を建てたい方まで、幅広いニーズに応えられる工法といえます。


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◇デメリット

品質が職人の技術力に左右されやすい

施工の品質が職人の技術に依存するため、熟練した職人が必要になります。技術不足の場合、強度や仕上がりに影響が出てしまう可能性があるため、施工会社選びが重要です。

木材ゆえの湿気・シロアリ対策が必要

木材を使用するため、シロアリ対策や湿気による劣化を防ぐための定期的なメンテナンスが求められます。

長く安心して暮らすためには、防蟻処理や換気計画などを含めた対策が欠かせません。

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◆気密性・断熱性に優れた
 「2×4(ツーバイフォー)工法」

2×4工法は、アメリカで普及した「木造枠組壁工法」で、断面サイズが2×4インチの角材を使用することからその名が付けられました。

この角材で壁・床・屋根の「面」を構成し、それらを箱のように組み合わせて建物を支えるのが大きな特徴です。

メリット

気密性・断熱性が高い

隙間が少ない構造のため、外気の影響を受けにくく、冷暖房効率が向上します。

省エネ性能の高い住宅を実現しやすく、環境への配慮やランニングコストの削減を重視する方に人気です。

さらに、「2×6工法」というバリエーションでは、より厚い断熱材を使用できるため、寒冷地でも快適な室内環境を保ちやすくなります。

耐震性が高い

面で建物を支える構造のため、地震や風圧などの力を分散しやすく、耐震性・安定性に優れています。

施工品質が安定しやすい

部材が規格化されており、工場で部材を加工して現場で組み立てる方式のため、職人の技術に左右されにくく、施工品質が安定しやすい工法です。
施工期間が比較的短く、効率よく住宅を建てられる点もメリットです。


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◇デメリット

間取りの自由度がやや低い

柱や梁ではなく「壁」で建物を支える構造のため、木造軸組工法と比べると間取りの自由度はやや劣ります。

壁が構造の一部となるため、大きな開口部を設けたい場合などには制約が生じることがあります。

将来のリフォームや増築が難しいこと

構造上、抜けない壁が多くなるため、大規模な間取り変更や増築が難しいケースも少なくありません。

将来的に間取りを変える可能性がありそうな場合は、事前にしっかり計画しておく必要があります。

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◆安定した高品質を実現しやすい
「鉄骨造(S造)」

鉄骨造は、柱や梁に鉄骨を使用する構造で、「重量鉄骨工法」と「軽量鉄骨工法」の2種類があります。

重量鉄骨工法は中・高層建築に適し、軽量鉄骨工法は2~3階建ての住宅や小規模建築物で採用されることが多い工法です。

◇メリット

強度が安定している

鉄骨は金属であるため、木材のような品質のばらつきが少なく、強度や寸法が均一な部材を使用できます。 そのため、安定した高品質の構造を実現しやすいのが特徴です。

大空間を作りやすい

柱の本数を減らすことができるため、大空間をつくりやすく、間取りの自由度も高くなります。

柱や梁を大きく配置することで、広々としたリビングや吹き抜けを実現しやすく、住宅のデザインに柔軟性が生まれます。

耐久性が高い・シロアリの心配が少ない

鉄骨造は耐久性が高く、シロアリ被害の心配がほとんどありません。
長期的に安心して暮らせる住宅を建てたい方に適した構造です。


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◇デメリット

建築コストが上がりやすい。
断熱対策も必須に

建物の重量が大きくなるため、基礎工事や地盤改良に高いコストがかかる場合があります。

また、鉄は熱を伝えやすいため、しっかりとした断熱対策を行う必要があります。

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◆耐震性・耐火性に優れた
「鉄筋コンクリート造(RC造)」

鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造・工法です。

鉄筋は引張力、コンクリートは圧縮力に強く、互いの弱点を補完し合うことで高い耐久性を発揮します。

この構造には、「壁式構造」や「ラーメン構造」といった種類があり、建物の用途や設計に応じて使い分けることができます。

◇メリット

耐震性・耐火性・耐久性が非常に高い

災害に対する安全性が高く、万が一の火災や地震にも強い構造です。

長期的に安心して暮らせる住まいを目指す場合に適しています。

デザインの自由度が高い

型枠を使用することで自由な形状の建築が可能なため、デザイン性を重視する住宅にも多く採用されています。

建築家が意匠を凝らした個性的な住宅や、吹き抜け・大空間を取り入れたモダンなデザインとの相性も良い構造です。


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◇デメリット

工期が長くなりやすい

コンクリートの打設・養生などに時間がかかるため、工期が7〜9カ月程度と、他の工法に比べて長くなる傾向があります。

建築コストが高め断熱対策・カビ対策が必要

建築コストも比較的高めで、コンクリートは熱を蓄えやすく外気温の影響も受けやすいため、断熱材の追加や結露・カビ防止対策が重要です。


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このように、構造・工法によって、性能・コスト・デザイン・将来の可変性・暮らしやすさは大きく変わります。 優先したいポイントを整理したうえで、建築会社に相談するのがおすすめです。