R庇の家-EB01

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この住宅が計画された江別市は大学や専門学校が多く、文教都市というイメージが強いですが、雄大な石狩川が育んだ自然環境と実り豊かな農地を持ちながら、近年は札幌のベッドタウンとして、住宅地や商業エリアが充実してきた街です。また、良質な粘土が採れることから、レンガの街として長年親しまれてきました。

そのような特色がある街で快適な生活をおくることが出来るような空間をオーナーご夫妻と一緒に考えました。

こだわりの設計のポイントをご紹介します。

01.日照にこだわる

この住宅には特徴的な2種類の庇が設けられています。前面道路が南西にある「南入り」の敷地ですので、一番日当たりが良い部分に玄関とリビングが並ぶ事になりますが、ここに特徴的な1つ目の庇【R庇】があります。この大型の庇は夏場の直射日光を極力遮り、冬場の積雪から玄関ポーチとリビングの大窓を守る役割を持ちます。庇の出幅は1200mm以上とかなり深いのですが、軒天部分を下見板を使った曲面にすることで、空に向かって解放感があり、かつ構造的な安定性を確保できるデザインとしています。(意匠特許申請中)

もう一つは2階に設けた放射状の庇【パラボラ庇】です。2階の窓は眺望の楽しみと日照を考え、やや横長ですが、その窓を守るように庇を配置し、日照と風雨のコントロールはもちろん、空の眺望を犠牲にしない為にパラボラ状にしています。パラボラ庇の設置個所はオーナーから提示頂いた3Dモデリングによる日影検討資料を踏まえながら、意匠性も考慮して最終的に決めることが出来ました。

02.共用部の使い勝手にこだわる

先ず玄関ホールですが、土間部分も含め6.5畳とゆったりした空間に、リビング側からの柔らかい光が差し込む明るく開放的な構成です。 玄関ホールの奥にはドレッサー兼洗面所が独立して設けられており、外出前の身支度や帰宅後の手洗いや消毒がスムーズに行うことが出来ます。 さらにその奥にユーティリティが連続していることで、着替えまで行った後にリビングに繋がるという見事な回遊動線となっており、オーナーが家族の日常使いを十分に考えた特徴的な空間構成となっています。 階段室を利用した吹抜空間は、あえて手摺壁にはせずにスチール製独立手摺としながら、ゆとりのある2階ホールも相まって、開放的な空間となりました。更に採光と換気、眺望を兼ねたハイサイド窓を設けることで、住宅の中心に明るく風通しの良い機能的な共用スペースを実現しています。

03.断熱、暖房にこだわる

断熱仕様はグラスウール換算で壁200mm、屋根455mm、基礎断熱はFP板で内外合計125mm、窓はトリプルガラスを基本にすることで、UA値は0.22w/㎡Kを実現しています。完成後の気密測定による隙間相当面積C値は0.17c㎡/㎡と超高気密を実現しており、高い施工性により断熱・気密性能の高さが証明されています。  暖房は1階を温水床暖房とし、床下空間ごと温めることにより躯体の蓄熱も相まって、厳寒期でも安定的に床面温度をキープできる様にしています。

04.耐震性、防火性能にこだわる

基準法による耐震性を上回る、耐震等級2を基本としていますが、オーナー希望により地域係数z=1.0(通常より1割増)をクリアしています。 防火性においては省令準耐火構造を採用しており、火災時に寝室のある2階部分への延焼を極力避けるように配慮しています。

05.メンテナンス性、素材にこだわる

外壁は耐久性の高いガルバリウム鋼板金属サイディングを基本としながら、風雨に曝されることが少ないR庇下の壁部分は板張りとすることで、住宅の顔を柔らかく質感の高い表情としています。  玄関ホールと外部ポーチの床には近隣の米澤煉瓦で焼成されたレンガを採用することで、素材感のあるあたたかな表情を出すことが出来ました。

06.将来の建て替え、解体への配慮

建物を支える杭工事は通常のコンクリート杭とはせずに、砕石を柱状に転圧して地盤改良するハイスピード工法を採用しました。その理由は後世で建物解体が生じた場合に撤去困難にならない様にとの配慮によるものですが、セメント等は一切使用せず、砕石のみですので解体後に地中に残っていても問題はありません。また砕石杭はそれ自体が地下水の吸収体となるため、地震による液状化対策にも有効です。

建物は完成しましたが、外構工事はオーナーのお父様が地元レンガを使いながら時間をかけて行われるとのことで、オーナーご家族で最後の仕上げをすることになっています。本当の意味での完成はこれからですが、拝見出来るのが今から楽しみです。

基本データ