設計を軸に土地活用の企画、運営もアシスト
森を守り、街を元気にする職住一体の賃貸

「株式会社ウミネコアーキ」は、設計を中心に、コンセプト立案から竣工後の運営までをワンストップで担ってくれる注目の設計事務所。新横浜に誕生した小商いOKの賃貸住宅「森庭山荘」を例に、若手クリエイターたちによる土地活用の魅力を紹介する。

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「株式会社ウミネコアーキ」は、設計を中心に、コンセプト立案から竣工後の運営までをワンストップで担ってくれる注目の設計事務所。新横浜に誕生した小商いOKの賃貸住宅「森庭山荘」を例に、若手クリエイターたちによる土地活用の魅力を紹介する。

建築は何もないところに人の集まりを生んで文化や交流を創出し、経済を活性化させるすごい力を秘めている。例えば、空き地は放っておけば空き地でしかないが、何か建物ができれば人が集まっておしゃべりを楽しんだり、共通の趣味に興じたりする。文化施設や商業施設があれば催し物や買い物に訪れる多くの人々で賑わって、地域は活気に満ちていく。

建築家の多くは、自身が設計する建築がそんな役割を果たすことを願って日々の仕事に臨んでいる。だが一方で、設計者は引き渡し後の運営にノータッチというのが一般的。このビジネス構造によって設計の意図や思いが十分に伝わらず、せっかく生まれた「場」が本来の力を発揮できずにいるケースも少なくない。

じゃあ、設計だけでなく最初の企画から竣工後の運営までトータルで行えば、完成した建築のポテンシャルを最大限に引き出し、土地オーナー、建物の利用者、ひいては地域のハッピーも生み出せるのではないか──。

新横浜に、そうした思いを胸にオールラウンドな活動をする設計事務所がある。一級建築士・宅地建物取引士の両資格を有する若林拓哉さんが設立した株式会社ウミネコアーキ(以下、ウミネコアーキ)だ。

「あくまでも事業の軸は設計で、住宅、商業施設、オフィスなど、幅広い建築の設計を承っています。けれどご要望があれば各分野のスペシャリストであるパートナーたちとも連携し、設計に伴う土地活用の企画コンセプト立案、不動産業、竣工後の運営・広告宣伝までをワンストップでお手伝いしています」と若林さん。

これからご紹介するのはまさにその一例で、企画・設計・募集・運営の全てを若林さんたちが担当。一連の流れを大きく3つのステップに分け、完成した建築とウミネコアーキの仕事の魅力をお伝えしたい。
  • 新横浜駅から徒歩11分。駅周辺のビル群を望む小高い住宅街に立つ「森庭山荘」。写真左奥から時計回りに、斜面下の森に面した森棟と庭棟、写真右が斜面の傾斜に沿って建てられた山棟。L字を成した3棟が庭を囲んだ配置となっている

    新横浜駅から徒歩11分。駅周辺のビル群を望む小高い住宅街に立つ「森庭山荘」。写真左奥から時計回りに、斜面下の森に面した森棟と庭棟、写真右が斜面の傾斜に沿って建てられた山棟。L字を成した3棟が庭を囲んだ配置となっている

  • 緑に映える赤い屋根、地形を生かした個性的なデザインが目を引く。敷地の入口では、3棟の配置を示す案内板が訪れた人をお出迎え。写真右、建物手前にある郵便受けはウミネコアーキでDIY。イームズチェアを思わせる脚は百葉箱用のもの。センスあふれる素材使いが楽しい

    緑に映える赤い屋根、地形を生かした個性的なデザインが目を引く。敷地の入口では、3棟の配置を示す案内板が訪れた人をお出迎え。写真右、建物手前にある郵便受けはウミネコアーキでDIY。イームズチェアを思わせる脚は百葉箱用のもの。センスあふれる素材使いが楽しい

  • 斜面はもともとの地形を生かし、ひな壇状に整地。平らにならすよりも土の掘削量が少なくて済むというメリットもある。写真左の山棟も、傾斜のある地形に素直に従ったデザイン。屋根や通路が山脈のようなラインを描いているのが面白い

    斜面はもともとの地形を生かし、ひな壇状に整地。平らにならすよりも土の掘削量が少なくて済むというメリットもある。写真左の山棟も、傾斜のある地形に素直に従ったデザイン。屋根や通路が山脈のようなラインを描いているのが面白い

  • 写真手前から庭棟、森棟。この2つの棟の1階住戸の前にはレインガーデンがつくられている。斜面の上から流れてくる雨水はここに貯留されてゆっくり土に浸透し、オーバーフローした分が下の森に流れるという仕組み。豪雨など急な増水の際、住宅浸水を防ぐのに役立つ

    写真手前から庭棟、森棟。この2つの棟の1階住戸の前にはレインガーデンがつくられている。斜面の上から流れてくる雨水はここに貯留されてゆっくり土に浸透し、オーバーフローした分が下の森に流れるという仕組み。豪雨など急な増水の際、住宅浸水を防ぐのに役立つ

【Step1】オーナーの課題に応え、
入居者にもメリット多数の土地活用を立案

新横浜駅から徒歩11分。駅周辺の高層ビルを望む小高い丘の住宅街に、L字を成して並んだ3棟の建物が立っている。ウミネコアーキが企画・設計を手がけ、現在は運営も行っている賃貸住宅「森庭山荘(もりにわさんそう)」だ。

きっかけは若林さんの親族でもあるオーナーから、「所有地に収益物件をつくりたい」との相談を受けたこと。

「計画地は南から北に下るなだらかな斜面で、斜面の上には道路が走り、斜面下方、つまり北側にはオーナー所有の森があります。この森の適切な管理はオーナーにとって課題の1つであり、地域の環境保全の文脈からも向き合うべきテーマといえました」

そこで若林さんが考えたのは、「計画地に賃貸住宅をつくり、何らかの形で森を使いたい人に住んでもらえたら、賃料で収益を得ながら森の管理ができるのではないか」というアイデアだ。

個人がプライベートで森を活用するには限界があるが、「職」を絡めれば頻度的にも物量的にも活用推進が期待できる。例えば料理人が窯の薪や山菜を森から調達し、家具職人やアーティストが森から素材を得るというように。

そもそも新横浜は、在来線はもとより日本の大動脈の東海道新幹線も利用できてアクセス至便。フットワーク軽く商売をしたい人には願ってもない地の利がある。しかも職住一体なのだから、店舗単独の家賃は不要。入居者にとってもメリットづくしのこのアイデアはオーナーから評価され、「住戸で小商いができる職住一体の賃貸住宅」のプロジェクトがスタートすることとなった。
  • 共用通路。雨天時にうれしい深い庇は上部の鉄骨で支えている。おかげで柱を立てずに済み、通路はすっきり

    共用通路。雨天時にうれしい深い庇は上部の鉄骨で支えている。おかげで柱を立てずに済み、通路はすっきり

  • 山棟の住戸。店舗スペースから奥のインナーバルコニーへ通り土間が伸びる。内装は現しの柱などで木の温かみをプラス。空間の用途で色のトーンを変えており、通り土間などのパブリックゾーンは少し暗めの落ち着いた色使い。正面の窓越しに見える光や緑とのコントラストが際立つ

    山棟の住戸。店舗スペースから奥のインナーバルコニーへ通り土間が伸びる。内装は現しの柱などで木の温かみをプラス。空間の用途で色のトーンを変えており、通り土間などのパブリックゾーンは少し暗めの落ち着いた色使い。正面の窓越しに見える光や緑とのコントラストが際立つ

  • 山棟、庭棟は全住戸に窓辺のベンチを設置。座ったり、好きなものを飾ったり、楽しく使える

    山棟、庭棟は全住戸に窓辺のベンチを設置。座ったり、好きなものを飾ったり、楽しく使える

【Step2】環境を守って生かした
店舗スペース付きの快適住戸をつくる

方向性が固まれば、次にすべきは「環境を生かしつつ、生活と小商いを快適に楽しめる建築をつくること」。これについて若林さんは、広域の地理・土地調査から着手。斜面を流れる“水の通り道”を確保することが森や土壌環境の保全につながると分析し、プランニングを行った。

中でも、環境面でとりわけ意識したのは基礎工事で、(1)必要以上に土を掘削しない (2)雨水が土に浸透、あるいは斜面下方の森に流れるようにする、という2点を重視。「森庭山荘」は庭をL字で囲む「山棟」「森棟」「庭棟」の3棟で構成されているのだが、斜面の傾斜に沿って建てられた山棟では、地面を平らにするより土の掘削量が少なくて済むひな壇状の基礎を造成。斜面下の森に面した森棟・庭棟は鋼管杭で建物を浮かせる高床式の基礎にして、水の通り道を確保した。

次に住戸のプランだが、こちらは1LDK~2LDKが3棟全体で計18戸。どの住戸も玄関を入ったところが小商い向けの店舗スペースで、そこから奥のインナーバルコニーに向かう通り土間があり、奥に進むにつれて個室などのプライバシー空間に移行する間取りとなっている。

ちなみに住戸は店舗スペースを中心にDIYが可能で、自分らしくアレンジOK。3棟いずれも1階は飲食店の営業ができ、山棟は住戸前の屋外スペースにテラス席の設置も可能。森棟には入居者全員が使える共用スペースがあり、飲食店をはじめとする小商い店舗の延長として使えるほか、入居者同士の交流会やイベントなどを行う際にも利用できる。

入居後の活動に夢が広がるプランだが、住戸のプライベートゾーンは窓やインナーバルコニーを介して周囲の緑を楽しめるようにつくられており、森林リゾートのような暮らしがかなうことも見逃せない。職住一体といえども、住まいとしての豊かさ、快適性にこだわっている点も「森庭山荘」の大きな魅力だ。
  • 山棟、庭棟は全住戸に窓辺のベンチを設置。座ったり、好きなものを飾ったり、楽しく使える

    山棟、庭棟は全住戸に窓辺のベンチを設置。座ったり、好きなものを飾ったり、楽しく使える

  • 山棟の住戸。土間から個室を見る。窓から差す光の陰影で空間の味わいが増し、心がホッと和む

    山棟の住戸。土間から個室を見る。窓から差す光の陰影で空間の味わいが増し、心がホッと和む

  • 森に面した森棟、庭棟の個室には緑を眺められる窓が複数ある。写真左下はインナーバルコニーに面した地窓。立っているとき、座っているときで森の見え方が変わり、室内で過ごす時間がいっそう楽しくなる

    森に面した森棟、庭棟の個室には緑を眺められる窓が複数ある。写真左下はインナーバルコニーに面した地窓。立っているとき、座っているときで森の見え方が変わり、室内で過ごす時間がいっそう楽しくなる

【Step3】共感してくれる入居者を募集
大切な資産が地域で親しまれる喜びを

本プロジェクトにおけるステップの3つ目は、端的に言うと入居者募集。もう少し突っ込むと、「都会にいながら森との共生を楽しめて、やりたいことにもチャレンジできる。この価値をわかってくれる入居者を募ること」だ。

これについてはウミネコアーキのチーム力で専用の募集サイトを制作し、不動産業の一環として仲介業務も行っている。設計者がこうして募集にも関わるメリットは、ポータルサイトよりも物件のコンセプトが正しく伝わり、入居者とのマッチング精度が高まること。実際、コンセプトに共感し、何らかの思いやストーリーを持った入居者が集まりつつあるとのこと。いずれは「森庭山荘」そのものが商店街のように活気づくのではないか……と、今後を想像するだけでどんどん楽しくなってくる。

土地活用は安定した収益が最重要のミッションだ。けれどそれだけではなく、志のある活用がなされ、代々受け継いだ土地が地域の笑顔を生む中心地になれたらオーナーはどんなにかうれしいだろう。建築をつくり、生かすところまでしっかり伴走してくれるウミネコアーキと一緒なら、そんな未来も夢ではない。
  • 庭棟の住戸は浴室がインナーバルコニーに面しており、バスコート感覚で屋外の景色を楽しめる

    庭棟の住戸は浴室がインナーバルコニーに面しており、バスコート感覚で屋外の景色を楽しめる

  • 庭棟の住戸。玄関を入るとシックな通り土間の先に明るい緑が見え、思わず笑顔になってしまう。キッチンと個室を仕切る建具は(写真右)、緑と引き立て合う赤をセレクト。どの住戸も、差し色としてところどころに赤を入れている

    庭棟の住戸。玄関を入るとシックな通り土間の先に明るい緑が見え、思わず笑顔になってしまう。キッチンと個室を仕切る建具は(写真右)、緑と引き立て合う赤をセレクト。どの住戸も、差し色としてところどころに赤を入れている

基本データ

作品名
森庭山荘
所在地
神奈川県横浜市
敷地面積
1392.12㎡
延床面積
949.04㎡