3人の建築家のアイディアが結集!
斜面地で実現した理想の住まい

奈良県、生駒市の斜面地に建つH邸。一見デメリットとも思える傾斜をうまく生かし、Hさんが希望する住まいを完成させたのが、atelier thuの坪井飛鳥さん、細貝貴宏さん、上田 哲史さんの3名だ。それぞれが得意分野でアイディアを出し合って進められたという今回の家づくり。その詳細についてお話を伺った。

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スキップフロアを採用し
1階と2階の空間をゆるやかに結ぶ

Hさんが家づくりの候補として選んだのは、急斜面で、かつ小さな既存建物が建つ土地。「価格は安いが、この土地に希望の家が建てられるのだろうか」。と悩み、相談に訪れたのが、atelier thuだ。実はHさんは、坪井さん、細貝さん、上田さんと同じ大学・同じ研究室で学んでいたご友人なのだという。

さっそくHさんと共にその土地に足を運んだatelier thuの3名。実際に見てみると、北側が斜面。この斜面の土砂を、フェンスのようなもので防いでいるという状態だった。「通常だと斜面側の土砂を擁壁で受けるのですが、そのためには造成が必要でした」。と、振り返る。

しかし、造成するとかなりコストがかかってしまうため、限られた予算内に収めるのは難しい…。どうするのが最善か3人でアイディアを出し合った結果、造成はせず、既存建物を解体して残された平地の部分に家を建てることに。さらに建物基礎を立ち上げて、北側の土砂を受けるというプランを考え出した。

ちなみにHさんの希望は、「ウッドデッキのある平屋」である。しかし、残された平地の面積を考えると、平屋では必要な居住スペースを確保するのが難しい。そこで思いついたのが、建物は2階建てにするものの、1階と2階とで空間が分断されないよう。スキップフロアで一体化するという方法だった。

「ロフトの寝室を元に、各場所の床レベルを変化させることで、外観は平屋のような建物になるよう、高さのボリュームを抑えていくことにしました」。と話すatelier thuの3名。こうして、フロアの高さに変化を付けた建物のイメージが出来上がったのだという。

もともと敷地は小高い丘の中腹で、南側の大半が傾斜地。敷地の北側には小さな緑地が残っていたこともあり、建物を斜面に沿うようにつくることで、北側の森と南側の斜面が家の空間を通してつながり、豊かな空間ができるのではと考えたのだそう。3人が思い描いていたのは、斜面をデメリットと考えず、土地を最大限に生かした住まい。そのゴールに向かって3人の英知が結集し、H邸はいよいよ完成を迎えることとなる
  • 道路側から見たH邸の外観。土地を造成しない代わりに建物基礎を立ち上げ、建物自体で北側の土砂を受けられるよう工夫された

    道路側から見たH邸の外観。土地を造成しない代わりに建物基礎を立ち上げ、建物自体で北側の土砂を受けられるよう工夫された

  • 広々としたウッドデッキ。高低差で視線が気にならないようになっているため、気兼ねなくくつろぐことができる

    広々としたウッドデッキ。高低差で視線が気にならないようになっているため、気兼ねなくくつろぐことができる

  • 森の中の小路といった雰囲気の、玄関へのアプローチ。建物全体に木の素材が用いられているため、外の自然との一体感が感じられる

    森の中の小路といった雰囲気の、玄関へのアプローチ。建物全体に木の素材が用いられているため、外の自然との一体感が感じられる

3人でコンペをするように
アイディアを出し合い提案

三角屋根が特徴のH邸。外壁には徳島杉が用いられており、シンプルでありながら、温かみのある外観となっている。1階部分にLDKや水回りなどの広い空間を確保するため、入口はあえて2階に設置。アプローチを抜けて中に入ると、広い土間の玄関がある。その左右には、子ども部屋とベッドルームが。内装には杉材が用いられており、外の自然と一体化するよう工夫されている。

1階に降りると、そこにはリビングダイニングとキッチン、そして水回りが。リビングダイニングは、南側の開口部や寝室のトップライトから太陽光が降り注ぐ、とても明るい空間だ。キッチンに立った時に南側の丘を望めるよう目線の高さを考えて設計されており、住宅地であるにもかかわらず、森の中にいるような気分を味わうことができる。

このように開いた空間に対し、クローゼットやお風呂など外に開かない空間は、道路側に配置。プライベートな部分は外の視線などが気にならないよう、細やかに配慮されている。

実際にこの家に住み始めたHさんからは、「休みの日の朝には鳥や草木の揺れる音などが聴こえてきて、とても癒されます。また、高さを抑えた美しい外観にもとても満足しています」。と喜びの声が届いているそう。また、「外観や内装は木のみで作られているので、これからの経年変化を楽しみたいと思います」。とも話されているという。

これに対し、「私たちも5年後、10年後を見て設計しているので、経年して家が土地になじんでゆく姿をお客様に楽しんでほしいですね」と話すatelier thuの3名。木材の色が変わったり、生活感が出てきたり…。これからの変化がとても楽しみだという。

傾斜地という課題はあったものの、それをものともせず、みごとにHさんの理想通りの住まいをつくりあげた、坪井さん、細貝さん、上田さん。最後に、3人でプランニングすることの良さはどこにあるのかを尋ねてみたところ、こんな答えが返って来た。
「アイディアや知識が3倍になることですね。もともと3人とも毛色が違う建築事務所に勤めていたので、それぞれが違うアプローチで提案でき、土地の可能性を最大限に探ることができたのだと思います」。

まるで、3人の設計者がコンペをするように、プランを練り上げていったというatelier thu。3人の個性豊かな建築家たちの、今後のさらなる活躍が楽しみだ。
  • 広い収納を備えた土間の玄関。奥のスキップフロアはスタディールームとベッドルームにつながっており、さらに左側にある階段を降りると、リビングスペースがある

    広い収納を備えた土間の玄関。奥のスキップフロアはスタディールームとベッドルームにつながっており、さらに左側にある階段を降りると、リビングスペースがある

  • 木の風合いと外の自然がみごとにマッチした、1階のリビングダイニング。外にはHさんの希望だった広いウッドデッキが備えられている

    木の風合いと外の自然がみごとにマッチした、1階のリビングダイニング。外にはHさんの希望だった広いウッドデッキが備えられている

  • リビングダイニング。収納は今回造作し、全体のテイストを合わせた。左手奥は一段下がったキッチンとなっており、料理をしながら外の景色を望むことができる

    リビングダイニング。収納は今回造作し、全体のテイストを合わせた。左手奥は一段下がったキッチンとなっており、料理をしながら外の景色を望むことができる

  • 2階ベッドルームとスタディールーム。1階とは吹き抜けでつながっており、どこにいても家族の気配を感じることができる

    2階ベッドルームとスタディールーム。1階とは吹き抜けでつながっており、どこにいても家族の気配を感じることができる

間取り図

  • 1F間取り図

  • 2F間取り図

基本データ

施主
H邸
所在地
奈良県生駒市
家族構成
夫婦
敷地面積
274.59㎡
延床面積
112.61㎡
予 算
2000万円台