
キーワードはリゾートを想起させる“楽園”
仕事や料理を満喫できる、非日常空間
リゾートのヴィラといっても多種多様
まずはイメージの共有からスタート
“その場所で、自分らしく住まうこと”にこだわったデザインで、心地よい空間づくりを目指している。2児の子育て中でもあり、女性ならではのきめ細やかな設計が好評を得ているそうだ。
今回の作品は、独立前に勤務していた設計事務所でスタッフとして担当したお施主様からの依頼だった。当時関わったお施主様が自宅にとても満足し、今回の依頼につながったという。
しかし会社経営をしているお施主様からの依頼内容は、かなりユニークなものだった。
・今回は自宅ではなく、別宅
・お客様を料理でおもてなししたり、仕事もすることができる場所
という内容までは普通のものだろう。
しかし一番強い要望が、
・“リゾートのヴィラ”のようなイメージにしてほしい
というものだったのだ。
お施主様がタヒチへ旅行に行った際、宿泊したヴィラが気に入ったので、このような希望となったそうだ。
三村さんは、まず最初にイメージの共有から始めることにした。
リゾートのヴィラといっても、内装や外観はさまざまだ。そこで写真集など多くの資料を見ながら、お施主様のイメージを可視化する打ち合わせが繰り返された。
三村さんはこの工程の重要性について、こう語ってくれた。
「部屋数など、要件面のご要望は具体的なものなので、問題ありません。しかし、デザインや雰囲気といった感覚的なものは、人それぞれです。当然、私の感覚や感性が、お施主様と異なることもあります。だからこそ、お施主様の感覚を可視化することが重要なのです」。
「今回は“リゾートのヴィラ”のようなイメージということでしたので、特に慎重に打ち合わせを繰り返しました。ですから何十枚も写真を一緒に見ながら、『これはイメージと近い、これは違う』といった確認を繰り返しました」。
こうしてお施主様が希望するイメージを、可視化することができた。三村さんはお施主様の感覚を理解することができ、次章でご紹介するこの作品の内外装の各部に活かされることとなったのだ。
マンションが立ち並びリゾート感のない立地
どのように、非日常の世界を創造したのか
最初に実施した現地調査で把握できたのは、リゾート感のない立地だった。近隣にはオフィスや高層のマンションが立ち並ぶ。そこで、外から室内に入る動きの中で、大きく空気感を変える仕掛けが必要だと判断した。
その仕掛けの概要は、以下のようなものだった。
まず、ピロティのアプローチを長く取り、植栽や照明などで徐々に非日常の空間へ近づく期待感を演出。
玄関を入ると、吹き抜けがある立体的なワンルームの開放的な空間が出迎えることとした。“タヒチのヴィラ”は吹き抜けで天井に木材の使用をしていることが多く、お施主様のイメージもそのようなものだったからだ。
周辺のマンションからの視線などを考えると、外部から閉ざされた空間とせざるを得ない。しかしそれでは、リゾート感が出ない。光や風を感じてこそのリゾートだからだ。
そこで提案したのが、もっとも外部視線の影響が少ない位置への螺旋階段の採用と、その横に大きな窓を設けることだった。この螺旋階段エリアから光と風を取り込み、その他のエリアに誘導する案だ。
仕上げや素材にもこだわった。もっとも重要だと考えたのは、吹き抜けの天井だ。敷地は間口が狭く、奥に長いものだった。したがって、建物も細長くなる。先述したとおり、大きな立体的ワンルームのような空間で一番広い面積で視界に入り、リゾート感を出すことができる場所は天井のみだと考えた。そこで天井にレッドシダーを使い、その他の場所にも木材や・葦・タイルなどを採用した。
リゾート感の演出のための提案は、間取りにも及ぶ。
お施主様が料理を振る舞う、キッチン・ダイニングを最優先としたものだ。
一方で自宅ではないため、寝室や仕事をする場所は最小限にした。また、それらの場所には扉を設けず、どの場所でも開放感が得られるものを提案。
実はお施主様からの強い要望は“タヒチのヴィラ”のような空間というものだけで、それ以外の具体的な要望は数えるほどだった。
そこで三村さんは上記のような多くの提案をすることとなった。イメージはあるが、具体的な要望はないという方にとって、このように引き出しが多く、たくさんの提案をしてくれる建築家は心強いのではないだろうか。
この他にも、三村さんの提案や工夫、アイデアは各所に反映されている。詳細は、写真の説明文をご参照いただきたい。
お施主様の要望はすべて叶える
それ以上の提案をすることが建築家の使命
前章で触れた、お施主様からの要望をすべて解決していることだ。
たとえば、
・敷地が海抜0m地帯だったため、これを心配した奥様の要望により床上浸水対策を実施
・敷地の間口は狭いが、駐車場は欲しいということで駐車場を配置
というものだ。
床上浸水対策は、駐車場をスロープにして基礎の高さを上げ、さらに高く1階の床位置を設計することで、前面道路から1m高い1階床の高さを確保した。
駐車場の確保は難題だった。詳細な説明は省くが、構造計算を繰り返し、木造にも関わらず細い柱で駐車場上部の2階を支え、地震にも耐えられるものを実現。
三村さんは、こう語った。
「お施主様の要望を実現するのは当然のことです。普通は難しいと言われるような条件でも、解決方法を見つけ出すことができるのが注文住宅の長所だと思います」。
「注文住宅の利点は、他にもあります。要望に応えるだけでなく、お施主様が想像もしていない提案が可能となる点です」。
どういうことか。
たとえばこの作品には、多くのステンドグラスが使われている。お施主様の知人であるステンドグラス作家の作品を採用することで、心の余裕や満足感を得ることができる。
外装にもこだわった。自宅ではないため、週末や平日の日中に使用することが前提となる。そこで、維持管理が楽になるよう心がけた。壁は屋根と同じ素材で維持管理が少ないものとし、木材を使った部分も軒を通常よりも深くすることで、できる限り経年劣化を抑える設計としたのだ。
こうした三村さんの提案力は、他の作品でも高い評価を得ている。たとえば家事が楽になる動線プランや、かわいいと思える遊び心あふれるデザインは、お施主様の奥様から好評だそうだ。2児の母だからこそ、提案できる内容なのだろう。
当然のことながら、この作品のお施主様はとても満足しているという。
自分の漠然としたイメージを理解し、具体的な提案をしてくれる建築家。あるいは明確な要望はあるが、実現可能かどうかがわからない場合に対応してくれる建築家。そのような建築家を探している方は、一度コンタクトしてみることをお勧めしたい。
撮影:小川重雄
基本データ
| 作品名 | 東京都江東区 |
|---|---|
| 所在地 | RAKUEN (都心の週末住宅) |
| 敷地面積 | 58.17㎡ |
| 延床面積 | 63.72㎡ |
設計者情報
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