敷地は、神戸の坂をぐんぐんと上がった十文字山の際、街を見下ろす閑静な高台の一角にあります。この町はもともと富豪ヘルマン氏の巨大な屋敷跡地を昭和40年代に造成開発されてできた背景を持ち、昔から高級住宅街として、そのゆったりとした佇まいが魅力的なところです。そんな場所へ、木造二階建て、建築面積195平米、延べ床面積234平米の大きな邸宅を計画しました。
プランニングの過程で最も意識したのは、敷地の西から南西にかけて隣接している公園です。とくに南西は公園の土地のレベルが4.6mも低く、プライバシーも十分守りやすいことから、大きく開いてその緑と光を取り入れたいと考えました。そこで、この南西に家族が集う広々とした天井の高いLDKを配置し、そこを軸とした空間構成を行うこととしました。
その他、周辺環境を読み解き、諸条件を考慮した結果、1階と2階が交差し/捻れ/絡まって、まるで糸が縒り合うようなかたちの家となりました。名づけて「縒り合う家」(よりあういえ)です。
南西の開放的な2層吹き抜け/51平米のLDKには、さらに階段の踊り場を拡張した〈和室ライブラリー〉や、吹き抜けを介して2階にある〈スタディリビング〉と〈ラウンジ〉を接続させ、さらなる広がりを追求しました。家族がさまざまな場所/レベルでそれぞれに過ごしながら、お互いに息づかいを感じつつ暮らすことができる空間となっています。
また2階には、良好な周辺環境をいかして3つの景色の良いテラスを設けました。夕暮れ時を日常的に楽しめる、広々とした〈サンセットテラス〉、ホテルのバーラウンジのようにしっとり静かに小人数で夜景とお酒を楽しむ〈アウトドアラウンジ〉、主寝室にある〈プライベートバルコニー〉──季節やシーンに合わせ、ぜひ存分に外部空間を暮らしに取り入れていただけたらと思います。
ご家族がそれぞれ快適に楽しく過ごしつつ、「縒り合う」ことでより固い絆で結ばれる……そんなコンセプトの大邸宅です。
撮影:Akiyoshi Fukuzawa