敷地は、空が広いのどかな住宅地のバス道から一本裏に入った一角にあります。周辺は、近年敷地が細分化され、一般的な大きさの家も増えてきましたが、昔から大きなお屋敷が建ち並ぶような町です。そんな場所に木造平屋建て、建築面積49坪・延べ床面積49坪の大きなお屋敷を提案しました。
プランニングの過程でまず意識したのは、周囲から完全にプライバシーが守られた屋外スペースをつくること。そこで広い敷地ならではの利点をいかし、建物の真ん中に屋外スペース=中庭をレイアウトしました。建物も平屋なので、冬場でも光が入りやすい、より環境の良い中庭とすることができます。
この中庭は、LDKと連続したスペースです。見るためのガーデンでもなく、年に数回しか使わない野ざらしのテラスでもない、新しい外部空間=アウトドアリビングとして機能します。夏の強い日差しを遮る工夫、雨をしのげる屋根やパラソル、常設されたソファやテーブルといった家具。外部と内部の境界を曖昧にし、自然と外に出てしまうようなデザイン──庭でもテラスでもなく、あくまでもリビングを目指しました。LDK29帖+アウトドアリビング20帖、合計約50帖の広がりを感じることができる、家族団欒のスペースとなります。
周辺環境、敷地条件、内部空間、町並みへの配慮、中庭のプライバシー、これらを総合的に考えて建物と屋根のかたちを決定した結果、屋根が中庭を囲むようにカタツムリのように渦巻いたカタチになりました。これが「カタツムリの家」の由来です。
撮影:Akiyoshi Fukuzawa