和モダンと表現される家は多いが、山上聖司さんが設計したI邸は、よくある和モダンとは一線を画す本物志向の「現代和モダン」。確かな知見で日本建築の魅力をバランスよく取り入れたI邸は、真に上質な空間に住まう幸せを感じさせてくれる住宅だ。
この建築家に黒いガルバリウム鋼板でつくられた立体的な屋根と、木、塗り壁、コンクリート打ち放しをバランスよく組み合わせた「現代和モダン」な外観。洗練されているが近寄りがたさはなく、どことなく郷愁をおぼえる温かみもある
エントランス部の床は白目地の黒いピンコロ石。ラフな雰囲気があり、洗練された外観にノスタルジックな魅力を添える。写真手前はガレージ兼倉庫への扉。レトロな取っ手を用いて上下に鉄鋲を打ち、モダンな和のデザインに。その奥の木製引き戸を開けると中庭。その左奥が玄関
上方から見たI邸。起伏が美しい数寄屋風の屋根が和の雰囲気を醸す。写真右側のコンクリート打ち放し部分はご主人が趣味の車整備を楽しむガレージ兼倉庫。屋上は人口芝で緑化されており、青空の下でバーベキューなどができる
数寄屋をイメージした屋根は、平部と軒の2段に分かれている。平部の屋根の厚みを引き継がずにすむので軒を薄くデザインでき、シャープな印象。2段の屋根は段ごとに葺き方を変え表情豊かに仕上げている
玄関前は道路側(写真左)をコンクリート壁で覆い、プライバシーを確保。中庭側(写真右)のコンクリート壁は型枠に杉板を使用することにより現れる柔らかな木目が自然のニュアンスとともに高級感を演出
LDKの入口からの眺め。開放感あふれるLDKは、天井高が最大4.5m。大黒柱と天井はヒノキ、梁は地松、床は無垢のホワイトオーク、壁は珪藻土、窓は木製サッシ。上質な自然素材の風合いが和の風情と高級感をもたらす
LDKから玄関方向を見る。写真右奥の一角が和室。写真右の上部はロフト。写真左の中庭側はウッドテラスに続く大開口のほか上部にドーマー窓もあり、ここから入る光や風がロフトに設けた窓へ気持ちよく通る
中庭にはシマトネリコがそびえ、みずみずしい緑が目を楽しませる。木製サッシで仕切ったウッドテラスとLDKは段差がなく、中庭と邸内の一体感が高い。軒天にヒノキを張った深い軒は和の風情たっぷり。直射を遮り、近隣の高層マンションからの視線をカットする役割も果たす
撮影:スタジオ・イルカ