全ての居住空間から中庭を望む!
住宅密集地で叶えた開放感溢れる住まい

広い中庭を中心として、どの部屋からも中庭を望むことができるF邸。外の視線が全く気にならない開放的な住まいだが、実はこの家が建っているのは、住宅に囲まれた住宅密集地である。周囲からの視線が多い環境をいかにして打開し、理想の住まいをつくりあげたのか。今回設計を担当したmizuiro architects一級建築士事務所の葛西瑞樹さんにお話を伺った。

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広い中庭で建物をロの字に囲うスタイルで
1階・2階共に外からの視線を遮断

自宅でIT系の仕事をしている30代のFさんご夫婦。「狭いアパート暮らしをやめて広い家に住みたい」。と思い立ち、もともとお父様の家が建っていた土地に家を建てることを決めた。以前から住宅デザインに興味があったというFさんは、いくつか設計事務所を回った末、ホームページ経由で葛西さんにたどり着いたのだという。

Fさんとの打ち合わせを振り返り、葛西さんはこう語る。「Fさんの希望は、周囲の視線が気にならない、中庭のある家でした。ここでは、それ以上細かい要望はあえて聞いていません」。最初に細かい間取りなどを聞いてしまうと、家の形が決まってきてしまう。それを避けるため、最初は大まかな要望を聞き、そこから提案を行うのが葛西さんのスタイルなのだという。

もともと、外部空間を上手く取り入れることを得意とする葛西さん。そこで提案したのが、中庭を広く取り、その中庭をロの字型に建物で囲うというプランだった。ここで特に気を遣ったのが、建物の高さや、窓の配置だったという。
「近隣の家の窓の高さを全て調べたうえで、どの部屋からも外と目線が合わないよう、窓の配置や高さをとことん工夫しました」と話す葛西さん。そのこだわりの結果、果たしてどんな家ができあがったのか。次からその詳細をご紹介しよう。
  • シンプルな形を好むFさんの希望を叶えたシャープな印象の外観。壁にはガルバリウム鋼板、引き戸にはヒバの木が使われている

    シンプルな形を好むFさんの希望を叶えたシャープな印象の外観。壁にはガルバリウム鋼板、引き戸にはヒバの木が使われている

  • 中庭から見たリビング。リビングからは直接中庭に出ることができるため、バーベキューをするときの動線もスムーズ

    中庭から見たリビング。リビングからは直接中庭に出ることができるため、バーベキューをするときの動線もスムーズ

  • 中庭を囲むように建物が配置されているため、どの部屋からも中庭を望むことができる。中庭の音が外に漏れないため、気軽にバーベキューを楽しんだり、テントを張ってキャンプを楽しんだりできるそう

    中庭を囲むように建物が配置されているため、どの部屋からも中庭を望むことができる。中庭の音が外に漏れないため、気軽にバーベキューを楽しんだり、テントを張ってキャンプを楽しんだりできるそう

部屋の中と中庭を自由に行き来しつつ
バーベキューやキャンプを楽しむ暮らし

白い直線的なラインが印象的な、すっきりとした外観。「隣家や周辺環境と距離を置きながらも、あまり閉鎖的にしたくない」という意図により、中庭へと続く大きな引き戸が設けられている。引き戸を開放すると道路から中庭が見え、風の通り道ができる。建物への入口は少し目立たない場所にあり、中に入るとポーチ、アプローチを経て、玄関へとつながっている。外と中の緩衝材的な意味合いを持つこれらのスペースがあるおかげで、外部と内部をうまく隔てている印象だ。

右手に開放的な中庭を眺めながら7ⅿほどある細長い廊下を進むと、その先に横長のリビング・ダイニングスペースが。さらに先の廊下を進むと、奥様の趣味室と、Fさんが趣味のゲームを楽しむ部屋がある。リビング、寝室からは直接中庭に出ることができるようになっており、室内と、外部空間である中庭を自由に行き来できるのも魅力のひとつ。旦那様が喫煙されるということで、たばこを吸いに気軽に外に出られる環境はとても便利なのだという。
中庭をなるべく広く取るため、廊下や水回りなどはコンパクトに抑えられている。


リビングの先にある階段を上ると、2階にあるのは主寝室と、事務作業を行う部屋。寝室にはホテルライクなふかふかのカーペットが敷かれており、掃きだし窓から見える中庭の視覚的な広がりもあって、独特の浮遊感を感じる。2階の窓から外を見ても、見えるのは中庭のみ。外の視線がまったく気にならないため、カーテンも必要ないのだという。
  • 横に長いつくりで庭との関係性を強く持ったリビング・ダイニング。奥には2階に続く階段がある

    横に長いつくりで庭との関係性を強く持ったリビング・ダイニング。奥には2階に続く階段がある

  • モールテックスで土間のようなニュアンスを持たせた玄関。左にある和室には段差を設けており、靴を履くときこの段差をベンチとして使うことができる

    モールテックスで土間のようなニュアンスを持たせた玄関。左にある和室には段差を設けており、靴を履くときこの段差をベンチとして使うことができる

設計事務所としてスタイルを限定せず
お客様の要望を柔軟に叶えていきたい

室内にいる限り、住宅密集地であることを忘れてしまうような開放的な住まいが完成し、Fさんもとても喜んでいらっしゃるそう。「中庭にいると静かで、とても落ち着きます。家にいるよりも中庭にいることが多いんです」と話していらっしゃるという。中庭でテントをしたりバーベキューをしたり。新居での生活を満喫されているそうだ。

今回の家づくりにあたっては、「提案したことはほぼそのまま受け入れてもらうことができ、とてもスムーズに進めることができました」と話す葛西さん。もともと葛西さんのところにはmizuiro architectsのデザインを気に入って来てくださるお客様が多く、「自由に提案してほしいです」と言う方が大半なのだそう。

「mizuiro architectsという社名は、お客様によっていろいろな色になりたいという想いを込めてつけられているんです。うちはこういうスタイルです。と決めずに、お客様のご要望に沿った家づくりをしていきたいと思っています」と語る葛西さん。「これからも、近隣に溶け込み、閉鎖的になりすぎない家をつくっていきたい」と、熱い想いを語ってくれた。
  • 階段側から見たリビング・ダイニング。中庭の景色を楽しみながらくつろぎの時間を過ごすことができる

    階段側から見たリビング・ダイニング。中庭の景色を楽しみながらくつろぎの時間を過ごすことができる

  • リビング・ダイニング側から見た廊下。幅も広めなので、椅子を置いて中庭を眺めることができる、単なる通路ではなく居住スペースのひとつとなっている

    リビング・ダイニング側から見た廊下。幅も広めなので、椅子を置いて中庭を眺めることができる、単なる通路ではなく居住スペースのひとつとなっている

撮影:JIGEN FOTOGRAFIAR

間取り図

  • 間取り図

基本データ

作品名
中佃の家
施主
F邸
所在地
青森県青森市
家族構成
夫婦
敷地面積
362.36㎡
延床面積
138.29㎡