
高気密・高断熱と心豊かな暮らしを両立。
ボール遊びも読書も楽しい、吹抜けのLDK
吹抜けの大空間のまわりには、
気ままに過ごせる居場所がいっぱい
家づくりにあたり、「健康に仲良く過ごせる家」「家の中で子どもがボール遊びをできるような空間」「子どもたちがどこにいても本を読める空間・大きな本棚」という要望をお持ちだったUさま。大輔さんとかおりさんは、これらの要望をどのようにかなえていったのだろうか。
2人はまず1階に、勾配天井のLDKを計画。「ボール遊びができる」に応えるために天井の高い吹抜けとし、ペンダントライトは入れず間接照明とスポットライトを適宜配置していった。このとき本好きなご一家ということを考え、夜でもストレスなく本を読める明るさを丁寧に計算。施主のライフスタイルに細やかに心を配る2人の設計姿勢がうかがえる。
吹抜けのLDKの周囲には、広々したテラスや和室を配置。リビング内の階段に沿って大きな本棚をつくり、2階には吹抜けからLDKを見下ろせるスタディコーナーも設けた。
その結果、テラス越しの庭や2階と大きくつながるLDKを中心に、居心地の異なる居場所がたくさん生まれ、家族がつかず離れずで過ごせる理想的な住まいが完成。
天気の良い日はテラスでお茶を飲み、雨の日は天井の高いLDKで思い切り遊んだり、和室におもちゃを出して遊んだり。夜はリビングで一家だんらん。就寝前のひとときはスタディコーナーやベンチ代わりになる階段で、家族の気配を感じながら本を読む……。
2人は「ボール遊び」のために計画した吹抜けのLDKを起点に、「仲良く過ごせる」「どこでも本が読める」「大きな本棚」も一気に実現したのである。
一見すると、のびやかな自然素材の家。
実は驚くほどのハイスペック
1つは高気密・高断熱。これはもはやスタンダードになりつつあるが、安藤建築設計室は建物の構造・骨格に関する知見が豊富な大輔さんと、現在も大学院で熱環境の研究を続けるかおりさんの最強タッグ。熱環境を整える上での引き出しが実に多く、土地の風土や敷地条件、ライフスタイルに合わせて最適なものを計画してくれる。
U邸では地元の石州瓦を使った大きな屋根をかけ、深い軒で邸内への直射を和らげるパッシブデザインに。山陰の冬は湿気が多いことを踏まえ、断熱材は結露が起こりにくく防カビ・防虫効果を期待できるセルロースファイバー(天然木質繊維)、外壁は調湿性能があるそとん壁(自然素材の外壁材)。内装は素材自体が呼吸する漆喰やスギの無垢材を使っている。
衛生面にも気を配り、玄関からはLDKに行く動線のほか、ウイルス対策として洗面室への動線も確保。帰宅後すぐに手洗いできる。換気対策もしっかり施し、室温を一定に保つ熱交換型の換気システムを導入。国産の換気システムはダクトを使用するものが多いが、ダクト内部の衛生管理に懐疑的だったUさまのために、ダクト不使用のドイツ製を入れている。
空調は階段下に床置き型のエアコンを半分埋め込んで床下エアコンとし、冬は床下からじんわり暖め、のぼる暖気で2階もぽかぽか。床下で暖気が行き渡りやすいよう、家の基礎部分の造りにも配慮した。
夏は床下エアコンが上に噴射する冷気と、2階にある壁付けエアコンからの冷風で家中が快適に。吹抜けのおかげで1~2階が大きなワンルームのようなU邸は、冬は1台、夏もたった2台のエアコンで家中の空調ができてしまう。しかも、高気密・高断熱と風通しのよい窓計画でエアコンを使う時間も減ったそう。「光熱費もかなりお得です」と、Uさまも大満足の快適な住まいとなっている。
数値にとらわれ過ぎない豊かな設計が、
住まい方も豊かにする
「私はドイツ式のパッシブハウスの設計に関わっていた時期があるので、自宅をドイツレベルの高気密・高断熱の家にすることも考えました。でも2人でじっくり話し合い、日本は気候も違うし、『ここに建てるならそういう家じゃないね』との結論になりました」
地方の長閑なエリアでの家づくりは都市部に比べてゆとりがあり、景色や採光条件に恵まれていることが多い。
「けれど、高気密・高断熱の性能数値にこだわり過ぎると設計に制約が増え、大きな窓などをつくりにくくなります。それはそれで1つの考え方ですが、せっかく庭があって光や緑も楽しめる環境なら、性能数値にこだわり過ぎず外とのつながりも大切にしたいと思いました」と大輔さん。そうしてできた安藤邸は、庭と大きくつながる気持ちのよい住まいだ。
U邸も先述の通り高いレベルの気密・断熱性能を備えているが、庭とつながる心地よさや光を感じる豊かさも大切にされている。
家を建てるということは、その土地に住むということでもある。季節ごとに表情を変える空、海、山、光や木々。あるいは家の前を行き交う近所の人々や子どもたち。そういった暮らしを取り巻く環境も、生活を彩る風景の一部として受け入れるような家。
安藤建築設計室の2人がつくる住まいは高い性能を担保しつつ、「その土地で暮らす」ことへの温かな目線が織り交ぜられている。住宅性能は確かにとても重要だ。しかし数値至上主義に走らず地域の風土とともに生きることができる住宅は、人生をさらに豊かにしてくれるのかもしれない。
基本データ
| 作品名 | 富士見が丘の家 |
|---|---|
| 所在地 | 島根県松江市 |
| 敷地面積 | 311.28㎡ |
| 延床面積 | 125.81㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 3000万円台 |
| 施主 | U邸 |
撮影:岡田泰治
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

1つの造作でいくつもの役割 じっくり対話で叶えた優しい空間
戸建と比べ制約の多いマンションのリノベーション。自由度が低いということは、裏を返せば、建築家の腕が最も試される場であるということ。その眺望の良さに惹かれた施主のTさんが、築26年のマンションリノベを依頼したのは、竹味佑人建築設計室の竹味さん。大胆な発想と確かな力量で、家族がゆったりとした気持ちで過ごせる優しい空間に仕上げた極意に迫る。

【注文住宅の事例集】シンプル_一戸建て_神奈川_秋山怜史さん
建築はそもそも、外部環境から人を守るために発達しました。 暑さ、寒さ、風雨。これらからいかにして人を守るか。 しかし、守るだけでは心地の良い空間は実現できません。 そこには、守りながらも、いかに外に対して空間を開いていくか。ということが求められてきます。建築はいつもそのせめぎ合い。気持ちの良い外部空間をとりいれるための試行錯誤は常に行なわれています。

昔ながらの沖縄の暮らしを現代に取り入れた 3枚の屋根と魅力的なテラスがある家
自邸の新築にあたり、海外からの留学生を受け入れるゲストハウスを併設したいと考えていたお施主さま。依頼を受けた建築家の仲本さんは、南側に開けている立地を生かし、沖縄の古民家のような構成を提案した。完成したのは沖縄らしさが堪能でき、なおかつ現代のライフスタイルに合った家だ。

近隣に家が増えても環境を変えずに暮らせる 壁に囲まれた中庭がある、明るい家
新規分譲地に自宅を建てるにあたり、考慮すべきなのはこれから家が増え環境が変わる可能性があること。お施主さまが要望されたプライバシー性や開放感を実現するため、建築家の池田さんが出した答えは「中庭を壁で囲うこと」だった。完成したのは壁の存在を忘れてしまうほど明るく、風通しのいい家だ。

世帯をつなぐ2階テラス。個の独立と家族間の共有を両立した、独立型二世帯住宅
お兄さま一家が戻ることをきっかけに、兄世帯、母・弟世帯の完全独立二世帯住宅に建て替えたいとお考えだったお施主さま。しかし建築家の牧野さんはヒアリングでの家族皆さんの仲のよさから交流できる場所を設けたいと考え、2階テラスを提案。あえて外部に設けたからこそ、独立と共有が両立する家になったという。

素材も間取りも理想を現実にした、納得と愛着の家づくりとは?
無垢のフローリングに漆喰の壁、天井まで届く南向きの大きな窓。東京の下町にあるKさん邸は、周囲を住宅に囲まれているとは思えないほど開放的で明るいお住まいです。家族が一番長い時間、一緒に過ごすリビングを中心に考え、さまざまな工夫でコストを抑えながら、希望どおりのマイホームをつくりあげました。

快適と省エネを両立した高性能住宅のポイントは、”窓”にあり!
建築家に家を頼みたいと思っていたものの、断熱性など住宅性能面に不安を持っていたというAさん。高断熱・高気密の家を建ててくれる建築家を長年探していたなか、ようやく出会ったのが建築家の河辺近さんでした。

内と外が緩やかにつながった、「空間グラデーション」の妙
施主であるHさんが自邸を建てるために選んだ土地は、住宅街のなかにある角地でした。南北に細長い敷地の南と東に面した道路は、それぞれ幅員4mほど。建築家の植村康平さんは敷地を何度も訪れ、Hさんファミリーが暮らす理想的な住空間をイメージしながらプランニングしたといいます。そうして誕生したのが、道路と庭、室内がゆるやかなグラデーションでつながった「カドニワの家」でした。

新旧のいいとこ取りリノベで、憧れの古民家風を実現
旧宅の材料を使いながら、新築の使い勝手を実現するという難題。もともと古民家に住みたかったという施主の希望をも叶えたリノベーションに挑んだのは、木材や漆喰など自然素材を使った住宅を得意とする建築家・松本直子さんだった。



