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芸術性も居心地も、たいせつな音楽室をとことん優先する空間とは

 玄関から階段を降りると、そこは白い壁の明るい音楽室でした。壁には絵が飾られ、グランドピアノの向こうには窓いっぱいに庭の緑が広がっています。自然と音楽が生まれてきそうな、気持ちのよい音楽室は、この家の中心的な存在になっていました。

家族と仲間が集える、家の導線は音楽室を中心に

 きっかけは築50年になる住宅の耐震改修だった。ついでに、大きな家の和室部分をなくし、空いたスペースに離れのようなかたちで建物をつくることにした。フルートの演奏家である娘さんの新たな住まいだ。そこで、設計者として白羽の矢がたったのが渡辺さんだった。

 この家の隣に建っているのは、2002年に日本建築学会賞も受賞しているW・HOUSE、渡辺さんのお父さまである渡辺明さんが設計した集合住宅だ。かつては、そこに渡辺さんも住んでいて、「簡単にいえば、お隣さんですね。小さい頃から良く知っていて、その関係でご依頼をいただきました。」という。お父さまの事務所を引き継いだ渡辺さんは、隣に建つW・HOUSEとの関係性にも常に気を配った。

 新たな家を建てるスペースは決して広くはなかったが、盛り込みたい要素は多かった。娘さんが使う音楽室をはじめ、家族が集える和室、駐車場…。特に、音楽室ではちょっとした発表会もできたらという希望があった。初めは8畳程度だった音楽室は検討を重ねるうちに大きくなっていき、最終的には10畳ほどの広さに。1階の大半を音楽室が占めることになった。その代わり、居住スペースを最低限にとどめることでバランスをとった。母家があるので、浴室はなく洗面シャワー室のみ、キッチンも簡易的なものだ。

 フルートの演奏家で、教室も開いている娘さんにとって、音楽室で過ごす時間は長い。広さだけでなく、居心地の良さも重要だった。そこで、半地下の音楽室には外の緑が見える窓をつけ、明るく開放感のある空間に。絵画を飾るためのピクチャーレールと暖炉をつけたいという希望も叶えられ、特に演奏をしない時でもゆったりくつろげるような部屋になった。「先日、1年検査で伺いましたが、やっぱり音楽室はいいとおっしゃっていましたね」と渡辺さん。広々と快適な音楽室は、フルートのレッスンや演奏仲間との練習などで、日々、活用されているそうだ。完成時にはオープニングコンサートを催し、部屋に入りきれないほど、お客さんがつめかけたという。

 人が集う音楽室は、この家の中心的な存在。そこで、渡辺さんは音楽室へ至るまでの経路にもひと工夫した。「玄関を道路面よりも高くしていて、一度あがってから玄関にはいるんです。そして、音楽室に階段を降りて入っていくという演出を考えました。生徒の親御さんが迎えにくると、まず玄関まであがって、階段室のドアを静かに開ける。すると、壁に小窓がついていて、階段を降りる途中で、音楽室のなかの様子を伺うことができます」。レッスンが一段落したところでドアを開ければ、演奏を中断せずに済むというわけだ。

 この家は娘さんがメインに使う建物だが、ご家族も使う。そこで、2階にはご家族の希望も反映された。洗面シャワー室には奥さまがご友人とともに絵付けをしたタイル。「タイルに絵を描きたいというのは、最初からおっしゃっていました。そこで、床一面にタイルを広げて絵を描いていただいて。それをそのまま壁に貼るようにしました。1枚も欠けたり、割れたりすることなく見事に1枚の絵になりましたね」と渡辺さん。

 演奏家の住まいには、音楽室を中心として、芸術を楽しむご家族のセンスがあちこちに発揮されていた。
  • 2階の個室部分は、手前の母家と同じ木の外装に。個室の影がうつっているのが、渡辺明さん設計のW-HOUSE

  • 玄関へ至るアプローチ部分。道路面から少し上がってからはいるようになっている。左下に植わっているのは、元を辿れば皇居にあったという五葉松

  • 家の中心になっている音楽室。南側の窓には、庭の緑が広がる

家族が集う和室には、かつての面影も残して

 お正月には毎年、親戚が集まっていたという以前の和室。新しい建物では、その役目を引きつぐ和室を2階に設けた。解体時に床の間の地板や床柱を残し、床の間に再利用、当時の面影を残している。年に数回はお茶の席も設けるということで、おもてなしにふさわしいしつらえに。床の間は背後の壁が引き出し式になっており、最大限に引き出すと、もともと持っていた掛け軸を3幅かけることができる。普段は一部を開けて、床の間の飾りを楽しみつつ、窓から外の景色を同時に眺められる。ご主人が丹精を込めて育てた緑も一枚の絵のようだ。
  • 2階の和室。床の間の壁を引き出して、掛け軸をかざり、外の緑を見せている

  • 壁を1枚しまって、障子を2枚ひいた状態。ガラッと雰囲気が変わる

お家のデータ

家族構成
夫婦

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