キーワードは“開放感”と“自由な住まい方” 独創的なアイデアに満ち溢れた、葉山の邸宅

葉山の山裾にあるこの邸宅は、三方向がガラス張りで室内は明るく、風が吹き抜け、開放感に満ちている。それだけではない。この家のすべての場所に、自由な発想による工夫が盛り込まれ、いわゆる“普通”の場所がひとつも見当たらないのだ。住まう人が「毎日楽しく自由に過ごしている」と言う、この家が誕生した背景をご紹介しよう。

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集合住宅を手がけてきた建築家が
個人住宅の設計をする利点とは?

実はこの葉山に建てられた『sunny bitters 葉山の住宅』は、株式会社プラスマイズミアーキテクトの代表である建築家、真泉さんの自邸である。真泉さんはこれまで、都心の集合住宅をいくつも手がけてきた。そんな真泉さんが個人住宅を設計するきっかけになったのは、お子様の誕生だった。自然溢れる環境が良い場所で、子供が自由に気持ちよく過ごすことができる家を建てたいという想いからだった。

しかし、真泉さんは多くの集合住宅で高い評価を得てきたものの、個人住宅の経験は多くない。その点での心配がなかったのかを聞くと、このように答えてくれた。

「一般的に集合住宅の建築に関わる場合、ディベロッパー様やオーナー様からの要望は多くはありません。経営面での要望と法規を満たせば、比較的自由に設計をすることができます。つまり自由な発想で、入居者の方が満足できる、特徴ある物件を作り上げるわけです。その点で、集合住宅の建築家は、アイデアの引き出しが多いと言えるのかもしれません」。

「一方で個人住宅の場合は、御施主様のご要望は間取りなどの要件だけでなく、好みや想いも含めて多岐にわたります。それらを大切にすることはもちろん、自由な発想で設計をしてきた私たちの経験やアイデアを融合させることで、子ども大人もワクワクする家を作りあげることができるのではないかと思いました。そのような化学反応を起こしたかったのです」。

真泉さんはこの葉山の自邸を、施主である真泉さんご自身の家族の要望を満たしながら、驚きや感動にあふれるアイデアを提案するテストケースとして携わったのではないだろうか。次章でご紹介する具体的な内容を、ぜひそのような視点でご覧いただきたい。
  • 中央が居間。右側には段差が付けられた居間。左側にはくり抜かれた壁越しにキッチンが見える。正面奥の出窓には棚が備えつけられている。開放的な空間の中でも、少し囲まれた部分があることで安心感がうまれる効果を狙った

    中央が居間。右側には段差が付けられた居間。左側にはくり抜かれた壁越しにキッチンが見える。正面奥の出窓には棚が備えつけられている。開放的な空間の中でも、少し囲まれた部分があることで安心感がうまれる効果を狙った

  • 三面が窓に囲まれた、明るい居間。どこに座り、どこに寝そべるのも自由だ。奥の居間との境界には段差があり、ここに腰かけると手前の居間の人と同じ目線の高さになる。居場所を探すという、自由な住まい方が実現した

    三面が窓に囲まれた、明るい居間。どこに座り、どこに寝そべるのも自由だ。奥の居間との境界には段差があり、ここに腰かけると手前の居間の人と同じ目線の高さになる。居場所を探すという、自由な住まい方が実現した

  • 壁がほとんどないため、奥にある北側のスペースまで明るい光が届く

    壁がほとんどないため、奥にある北側のスペースまで明るい光が届く

明るく、風通しがよく、開放的な家にしたい
快適で遊び心にあふれる工夫の数々

葉山の土地は旗竿地で、山の裾野にある。そのため住宅街だが高低差があり、明るくて風が抜け、遠方の山の景色がよく見えるのが特徴だ。真泉さんは、この土地の良さを活かす設計をすることにした。

施主として真泉さん夫妻が実現したかった概要は
1.小さくても開放的で、明るく風が抜ける家にしたい 
2.居場所が決めつけられない、流動的で自由な住まい方がしたい 
3.どこにいても大きな気積(床面積×高さ)を感じられる、つながりのある家にしたい
というものだった。

これをどのように実現したのか。
1.小さくても開放的で、明るく風が抜ける家にしたいという要望への答えは、北側以外の3面をガラス張りにしたことだ。大きな窓からは、常に日光が入ってくる。高低差があり道路から家の中がほとんど見えないため、カーテンをすることもなく絶景を楽しむことができる。さらに東西と南北に開口部を設けることで、時間や季節を問わず、風が抜けていく。内部には壁がほとんどなく、北側エリアの床や壁には、あえて明るい色が使われている。そのためもっとも奥のエリアでも、日中は照明が不要なほど明るく、また明るく感じる工夫がなされている。

2.居場所が決めつけられない、流動的で自由な住まい方がしたい 
これを実現するために、多くのアイデアが取り入れられた。ふたつの隣りあった居間には段差が設けられ、高い方の居間の床に腰掛けると低い方の居間の椅子として機能する。階段は一部が大きく張り出してテーブルの機能も兼ね備えている。このテーブルは食卓としてだけでなく、玄関脇の土間の椅子に座る人と向かい合うと打ち合わせテーブルに変化する。文字で表すと理解できないほど、多くのアイデアが盛り込まれているのだ。ぜひ、写真の説明文をご参照いただきたい。実際に今回の取材で訪問した際、居間のどこでインタビューをしましょうかという会話からはじまった。座る場所一つでも選択肢が多く、たしかに居場所が決めつけられない空間だった。

3.どこにいても大きな気積(床面積×高さ)を感じられる、つながりのある家にしたい
この解決策としてもっとも大きな影響があるのは大きな吹き抜けだが、それだけではない。たとえばこの家には階段がふたつあり、回遊することができる。それぞれの階段の上は大きく吹き抜けており、広さを自然に感じ取ることができる。また一部の床はすのこ状になっていて、下の階にいても上部とのつながりを実感できる。さらに柱と壁の間には、少しだけ隙間が空けられている。こうした工夫の積み重ねで、家の中のどこにいても、広がりやつながりを感じることができるのだ。
  • 階段の一部がテーブルとしても機能している。その使い方は自由で、食事や来客の打ち合わせスペースにもなる

    階段の一部がテーブルとしても機能している。その使い方は自由で、食事や来客の打ち合わせスペースにもなる

  • 居間とエントランスエリアにある広い土間。吹き抜けや住宅用最大サイズの窓、壁がないことにより、広がりを感じる。来客が土間の椅子に座れば、すぐに打ち合わせをすることも可能だ

    居間とエントランスエリアにある広い土間。吹き抜けや住宅用最大サイズの窓、壁がないことにより、広がりを感じる。来客が土間の椅子に座れば、すぐに打ち合わせをすることも可能だ

  • 大きな出窓、サンルーム、縁側と捉えることもできる、窓側の居間部分。使い方は無限大だ

    大きな出窓、サンルーム、縁側と捉えることもできる、窓側の居間部分。使い方は無限大だ

  • 居間部分の側面にある窓から見えるのは、遠くまで続く道路と空。ヌケ感、奥行きを感じることができる

    居間部分の側面にある窓から見えるのは、遠くまで続く道路と空。ヌケ感、奥行きを感じることができる

  • 階段横の窓、明かり取りの窓、スケルトンの階段により、階段下や北側の2階にも光が届く

    階段横の窓、明かり取りの窓、スケルトンの階段により、階段下や北側の2階にも光が届く

葉山をはじめとした湘南の土地を
愛する人と、家作りを楽しみたい

7月に移住し、真泉さん夫妻はこの葉山の家での生活を満喫しているという。家に遊びに来た友人は、自由に好きな場所でくつろぎ、友人の子供は2か所の階段を使い、走り回って遊んでいるそうだ。

真泉さんは最後にこう語った。

「葉山や湘南エリアを愛する方は、家に対するこだわりや要望が高い割合が多いと感じています。この地域に根ざし、御施主様と家作りを一緒に楽しんでいきたいと思っています。ですから、ぜひ私たちの住まいの形を見て頂きたいです。住まい手の方々の個性が、のびのび表れる、ワクワクする住まいを一緒につくれたら嬉しいですね」。
  • 2階の居間とバスルーム。暗くなりがちな北側のスペースは、明るい色使いによって心地良い空間へと変化する。床のバイオレットは、お子様が好きな電車の色からヒントを得て採用した

    2階の居間とバスルーム。暗くなりがちな北側のスペースは、明るい色使いによって心地良い空間へと変化する。床のバイオレットは、お子様が好きな電車の色からヒントを得て採用した

  • もっとも北側の寝室から。空間の広さとつながりを感じることができる

    もっとも北側の寝室から。空間の広さとつながりを感じることができる

基本データ

作品名
sunny bitters 葉山の住宅
所在地
神奈川県三浦郡葉山町
家族構成
夫婦+子供1人
敷地面積
154㎡
延床面積
72㎡