石川県にある町家のリノベーションが完了した。この建物は中庭を囲んで町屋部分、収納蔵、そして撚糸工場を改修した住居+事務所の3つで構成されている。延床面積が500㎡にも及ぶ、大規模な建物だ。長い歴史を持つ町家部分を残しながら、快適な生活の実現を目指した、この作品をご紹介しよう。
この建築家にリビングから見た中庭とダイニング・キッチン(写真奥)。今回のリノベーションで中心となる場所だ。以前は中庭に面する場所が廊下と浴室などの水回りだった。そのため、新たな梁をかけるなどの構造改修をおこなった。和風の中庭と町家だったため、窓の高さはあえて低く設定した
リビングから見た中庭。放置されていた中庭は綺麗に整備され、手入れもしやすいものとなっている。高さをあえて抑えた窓の効果で、とても落ち着く空間となった。また、隣家からの視線を遮る効果もあり、レースのカーテンなどを使用せず、常にこの景観を楽しむことができる
中庭には照明が設置されている。リビングは間接照明を施すことで美しい勾配天井を形成し、柔らかな光が白く塗られた天井梁を介して部屋全体を包み込む。外部の視線を気にしなくてもよいので、カーテンを閉めずに夜間でもこの景観を楽しむことができる
キッチンから見たリビング。キッチンの天井は低くし、リビングと強弱をつけることで空間の広がりを演出している
高級感が漂うピロティへのアプローチ。L字型にすることで外部からの視線を遮っている
ピロティ(全景)。1階の部屋だった場所を外部化したため、雨や雪を防ぐ広大なエリアが誕生した。降雪地域ではとても便利で重宝しているという。ウッドデッキ(写真右)の前には庭を眺められる浴室窓が設置されている
ピロティ奥の左に設置されたエントランスドア。右は外部収納のドア。正面のルーバーは中庭との境界にあり、庭の手入れのために出入りすることができる。ドアもルーバーも、すべてヒバ製のオーダーメイド。雨や雪にさらされないので痛むことがなく、耐久性にも優れている
新たに作られた仕事部屋。写真を飾りたいお施主様の要望にこたえ、演出用の照明も用意された。テーブルも造作されたもので、壁の色とあわせて落ち着いた空間となっている
撮影:高橋俊充