
お気に入りのアンティーク家具ありきで設計。
「自然とともに暮らす」平屋
デンマークの家具デザイナー、フィン・ユール邸に憧れて
釣りが趣味でルアーも自作するというY様と、ゆくゆくはカフェをやりたいという夢を抱く奥様は、自然を楽しむ暮らしを求めて、この土地を購入した。ご主人の勤務先は三重県四日市市で、通勤は1時間半ほどかかるというが、それも覚悟の上。ご夫婦ともに家具が好きで、特にデンマーク製家具のコレクターでもあり、椅子やチェストなど、いい時代のアンティーク家具を所有。家づくりを進めるにあたっての一番の希望が、そんな家具たちが素敵に収まる家だった。
“家具ありきの家”、それは飛騨高山の家具メーカー「キタニ」の家具づくりの思想とも共通している。同社ショールームのすぐ横には、見学施設としての「フィン・ユール邸」があり、この「フィン・ユール邸のような家にしたい」というのがY様の希望だった。素材にはアルミサッシは一切使わず、北欧産のチークを中心とした木材と、コンクリートを主として使用した、自然とともにある家。そんなY様の夢をカタチにしたのが、「トミタ建築設計スタジオ」の富田さんだった。Y様お気に入りの広葉樹の無垢材を使い、すべてオリジナルで造作する家具屋さん「ハンドワークデザインスタジオ」の紹介で、Y様邸では、チーク材を使ったキッチンや洗面などの造作家具もここが手掛けたという。
ランドスケープデザインも学んだ経歴のある富田さんは、家の周囲にある集落や風景に溶け込むデザインを意識した設計が根幹にある。また、名古屋芸術大学で講師も務めており、「天然のものから製品まで、ひとつでも多くの素材を知りたい」と、自然農の米づくりを教えてもらいに行ったり、柿の葉でお茶を作ってみたり、わざわざ湧き水を汲んできて、その水でお茶を淹れたり。大学内の専門外のコースで草木染めを習うなど、積極的にいろいろなことを学び、建築設計へと生かしている。
そして、「お施主さんは、完成してから30~40年はその家に住むのだから」と、設計士自身の「こういう家が建てたい」という作家性よりも、暮らしやすさや、40年後も、50年後も、60年後もその建物がそこにあることを、何よりも大切にしている。そんな富田さんの設計への思いや、デンマーク製家具の良さを共有できたことが依頼する決め手になった。
“場所性” を大事にすることで、暮らしやすさも叶える
また、「建物の中で一番傷みやすいのが外壁。日本家屋には、昔から深い庇があり、これは日本の気候条件を考えて、建物の外壁を少しでも雨風や強い日差しから守るための知恵でした」と、庇をできる限り深く出すことを提案。ところがY様は「庇はない方がいい」という考えだった。それでも、「建物が40~60年後にも、そこにあることが大事」と考える富田さんにとって、ここは譲れない部分でもあった。そこで、Y様との話し合いのために、庇の深さや出し方などを変えた9パターン程のデザイン見本を作って見てもらい、相談することで、結果、約30cmの庇を出すことで合意。
外壁はコテ塗りの質感を出したいと職人さんと話しながら、コテの痕をつけるように仕上げていったり、内壁の壁塗りを自身の手で行ったりと、Y様自らも手を掛けた家づくり。「施主自身も、どんどん家づくりに参加した方がいいと、富田さん自身も思っている。「Yさんは、まさにそう。いい出会いになり、いい家づくりを一緒にさせていただけたと光栄に思っています」。
そんな富田さんが、一番、苦労したのは、お施主さんの思いを叶えることと、予算とのギャップ部分をどう埋めていくか。Y様邸では延床面積を30坪までに抑えたり、はめころし窓を多用したり、通常は空間ごとに異なる基礎を打つところ、例えば、寝室とウォークインクロゼット部分をひとつの基礎にしたり。数ヶ月に一度のペースで、富田さんとY様、工務店担当者と一緒に減額会議を行ったという。「お施主さんの夢を、まず、建築家と工務店とで共有して描き、予算面を含めてどうやってカタチにしていくかを三者で話していいました。もちろん、最終的にはお施主さん自身に決断してもらいますが、三者が同じ方向を向いて、同じ景色を見ることが大事なんです」と富田さん。
「プランも予算も意匠も満足です」というY様だが、庭に大きな木を植え、レンガテラスを作り、猫の遊び場となるテラスも作り…など、まだまだ手を掛けていく予定だとか。Y様の見る景色には、実はまだその先があるのだ。
基本データ
| 所在地 | 三重県多気郡多気町 |
|---|---|
| 敷地面積 | 1230㎡ |
| 延床面積 | 101㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども1人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | Y邸 |
設計者情報
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