シェアアトリエハウスtede

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築60年が経過する京都市内の木造賃貸アパートの改修です。
かつて学生向けに建てられたアパートを、共同のアトリエハウスとして再生しました。

旗竿敷地に建つ既存アパートは仕上げの劣化や露出した多くの設備配管、光の入りにくい敷地状況により雑多で暗い印象を与えていました。また奥行きの長い住戸が連続するアパート特有の構造により耐震壁が不足し、耐震性も不十分な状態でした。
建物の耐震補強、断熱・防火の性能向上を行いつつ、屋外空間も含めたリノベーションを施し、敷地周辺エリアと時代のニーズに見合った建物へと再生することを目指しました。

1階は工房・アトリエとして使える個室と共用のラウンジとなっています。設備配管やメーター類は新たに設けた設備スペースへ集約し、雑多さを解消しています。
屋外廊下の土間は撤去し、床材を明るいレンガに変更、建物外部は白・グレー系統の塗装を行い、廊下へわずかに差し込む光を拡散させることで明るい屋外廊下へと改修しました。

小さな小窓と玄関ドアが並び耐震壁が不足していた廊下側の既存壁面は、一部を耐震壁としつつ入口を掃き出しのガラス戸とするメリハリのある壁面構成とすることで、暗かった室内に光を取り込んでいます。
また個室への入口は元の壁面から一部後退させたり入口を窄めたりするなど、ガラス戸としつつも廊下からの視線は遮られるように設えています。壁面を後退させた空間は水場や作業スペースとして使えるアルコーブとなっています。

2階は1階の個室ともセットで借りられる単身者用の住戸として改修しています。既存住戸のキッチン廻りは広いものの1人暮らしには使い様のない広さであったため、廊下側に土間を設け入居者が自由にカスタマイズできる空間をつくりました。
土間は室内化した内土間、屋外となった外土間の2種類のパターンがあり、入居者は自身の生活スタイルに合わせて好きなタイプの住戸を選ぶことができます。土間は植栽や自転車をディスプレイする場所、テーブルとイスを置いてテラス的に使う場所、仕事場など入居者によって多様な使い方がなされています。

居室は既存天井に使われていた化粧棟木などを再利用しつつ新旧の材料を組み合わせ、改修前と同じ舟底型の天井としてかつての面影を残しています。
時代のニーズから取り残され行き場を失った木造賃貸アパートに対し新たな役割を与えることで、新築にはできない記憶を継承した空間を持つ、有効な社会資源としての再生を行いました。

基本データ