限られたスペースを有効活用!
築40年、37平米のマンションを素敵にリノベーション

都心にほど近い街で暮らす、kurachiffon 瀧内未来一級建築士事務所代表の瀧内未来さん。築40年ほどのマンションをリノベーションしたという物件は、自宅兼仕事場として、日々の生活を送りつつも、使い勝手や生活導線を考えながら設計をしていったそうです。以前は、日当たりや風通しがよいとはいえない部屋に住んでいたという瀧内さん。今回は、切望していた日当たり、そして風通しのよい新たな住居を造り上げていった過程や、リノベーションの魅力についてお話しを伺いました。

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根気強く希望の条件を満たす物件を探して見つけた今の住まい

それまで、賃貸マンションで暮らしていた瀧内さん。以前の住まいは日当たりと風通しがあまりよくなかった。あるとき、お子さんが喘息になってしまったことをきっかけに、引っ越しを検討するようになったという。瀧内さんが新たな住まいに求めた条件は、1.日当たり・風通しがよい 2.リフォームされていないこと 3.子どもの保育園が変わらなくて済む…というものだった。こうして、10数件もの物件巡りをした末に巡り会ったのが今の物件というわけだ。

「予算内で収まりながらも、南西向きで日当たりもよく、都会でありながら、ベランダに洗濯物や布団も外に干せる。季節を問わず日当たりが良好なので、ひさしが必要なほどです。しかも、駅にも近く、立地もいい。もちろん、子どもの保育園も変わらずに済む物件でした」と語る。

こうして、ようやく希望条件に見合う物件を探し当てた瀧内さん。しかも選んだマンションは、マンションに長く住んでいる方との隔たりもなく、ご近所づきあいもあるということで、当初の予定にはなかった希望をも叶えた物件だったのだ。
  • 小上がりの部分が、ワンルームながらも区切られていない“別の部屋”のような感覚になる。小上がりの下はベッドになっている

    小上がりの部分が、ワンルームながらも区切られていない“別の部屋”のような感覚になる。小上がりの下はベッドになっている

  • ロフト上のスペースは、子どもたちが遊び場でもある。ロフト部分の床は透明なポリカーボネート製となっており、ロフトで遊ぶ子どもたちの様子が分かる

    ロフト上のスペースは、子どもたちが遊び場でもある。ロフト部分の床は透明なポリカーボネート製となっており、ロフトで遊ぶ子どもたちの様子が分かる

自分自身の住まいをリノベーションし、暮らしているからこそ分かることがある

瀧内さんにとって理想の住まいを見つけることはできた。次のステップは新築時からそのままの間取りと設備であった部屋のリノベーションである。瀧内邸の元々の間取りは2DK(37平米)だった。そこで“狭さを感じない間取り”を心掛けたという。こうして、物件の購入後すぐではなく、まずは引越をし、部屋の特徴を暮らしながら捉えた上で、リノベーションの計画が始まった。

「実は2年ほど住みながらじっくりとプランを練った後、ちょうど同じマンション内の別の部屋を2ヶ月ほど貸してもらえることになり、リノベーション工事に着手することができました。日当たりの問題はクリアできたので、風通しにも気を配りました。ベランダと反対にある玄関側のトイレを間仕切ってしてしまうと風が入らないため、隣にある収納室の間に扉を付けて、さらに収納室
と小上がりの間の壁も開口し、風が抜けるようにしました。小上がりのスペースは家族団らんにも使えますし、洗濯物をたたむときにも便利です。ロフトの下は収納室になっていて、ウオークインクローゼットを兼ねているだけでなく、小上がりの下にはベッドを収納しています」と瀧内さん。

瀧内邸の玄関を入り、左手には大きなキッチンカウンター、右奥には勉強机が置いてあり、小上がりのスペースもある。さらに小上がりにはハシゴが掛けられ、ここはロフトスペースとなっている。

2DK(37平米)のマンションに家族で住まうことで、小上がりのスペースを造れば、確かにスペースは狭くなる。しかし、衣類を収納する家具やベッドを置いたり…ということを繰り返しているうちに、すぐに手狭になってしまう。そこで、小上がりとロフトのスペースを縦方向に作ることで床面積を増やし、家具を置かずにさまざまなものを集約することで、限られたスペースでも広々とした空間を作り出すことに成功している。小上がりと収納室の間の通風採光の45センチ角の開口窓から、脱いだ衣類を収納室の洗濯カゴに入れられたりもするので、小上がりが散らからない。また開口窓の下には両側から引き出せる引出があり、洗濯物をたたんでそのまま引出にしまえるという逆の動線も可能だ。さりげなくも、女性らしい細やかな設計が行き届いていることが分かる。

瀧内邸を訪れてみてもうひとつ印象的なのは、大きなキッチンカウンターだろう。壁には奥行き30センチの可動棚が備えつけられているものの、扉がなく、出し入れや収納もスムーズにできそうだ。これなら、収納したまではよいものの、奥の方にしまいこんでなかなか使う機会がない…といった食器類や調理器具もなくなるだろう。キッチンカウンターの隣がテーブルとなっており、できあがった料理をサッと置ける。玄関をあがってまっすぐ進めばリビングスペースに、右はトイレやバルスルームや洗面フロア、左はキッチンスペースと、動線が極めてシンプルであることが分かる。

瀧内邸は瀧内さんの住まいであり、ご自身が手掛け、そしてリノベーションした案件でもある。そんな瀧内さんにリノベーション対する思いを伺った。

「欧米には新築の建物がほとんどないそうです。スクラップ&ビルドで町並みが変わっていくことに抵抗があります。だからこそ、今ある姿を残していきながら、よい物は残しつつ、次の世代に引き継いていけたらと思っています」と瀧内さんは熱っぽく語ってくれた。ちなみに、物件選びにも同行してくれるという。

瀧内さんに曰く「物件の購入を検討している方にお伝えしたいのは、日当たり・窓の眺望・風通しは重視してください」とのことだ。リノベーションのプランを考えることは楽しいし、夢が膨らむだろう。しかし、物件選びを間違えてしまうと、どれほど素敵なプランを練り上げても、快適な住まい空間を創ることは困難なケースもある。瀧内さんご自身が自ら体験し、実践しているので、とても説得力がある。

リノベーションの魅力は、“自分で造り上げる空間”に加えて、新築に比べてコストが抑えられることだろう。瀧内さんが手掛けるリノベーション物件は、マンションはもちろん、戸建てでもOKだ。狭小住宅を手掛けることが多く、延べ床面積は増やせない。そこで、立体的にすることを心がけているという。

新築物件には新築物件ならではの良さがあるだろう。しかし、リノベーションならではの魅力も必ずあるはずだ。住まう人や家族が暮らしやすいよう、住まいを素敵にリノベーションする。自らの住まいで実践し、暮らしている瀧内さんだからこそ伝えられること、実現できることがあるに違いない。
  • 仕事の合間にくつろぐこともできる、ハンモック状の椅子。小上がりで遊ぶ子どもとの目線もちょうどいい感じだ

    仕事の合間にくつろぐこともできる、ハンモック状の椅子。小上がりで遊ぶ子どもとの目線もちょうどいい感じだ

  • 朝食を準備して、そのままここで食事もできる、使い勝手抜群のカウンターキッチン。子どもと一緒に料理をして、ここで一緒に食べられる

    朝食を準備して、そのままここで食事もできる、使い勝手抜群のカウンターキッチン。子どもと一緒に料理をして、ここで一緒に食べられる

  • キッチンは、すべてオープンにして、横からも向かい側からも子どもが手伝えるようにしてある。帰宅したらすぐに手が洗えるように、玄関の近くに洗面所がある

    キッチンは、すべてオープンにして、横からも向かい側からも子どもが手伝えるようにしてある。帰宅したらすぐに手が洗えるように、玄関の近くに洗面所がある

  • ゆっくりディナーを楽しみたいときには、キッチンのカーテンを引く。間接照明の光に包まれて、昼間とは違った雰囲気が醸し出される

    ゆっくりディナーを楽しみたいときには、キッチンのカーテンを引く。間接照明の光に包まれて、昼間とは違った雰囲気が醸し出される

基本データ

施主
T邸
所在地
東京都台東区
家族構成
夫婦+子供2人

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