海沿いに別荘を建てたいと望まれたお施主さま。設計を依頼したのは、地元の南房総エリアで活躍する建築家の島﨑さんと石井さんだ。土地の特徴に心得があり別荘建築の経験が豊富だからこそ、海を満喫でき過ごしやすい別荘ができた。不在時は貸別荘としても運用。当初からプランに組み込むことで高い利便性が実現した。
この建築家に上空から見た「AWAKA」。画像左側に海がある。自然公園法の規制を守りながら、海に向かって可能な限り建物の間口を広く取った
外観。1階右側の通路部分は駐車場。玄関にダイレクトにアクセスできる。建物で海が見えなくなってしまうのではなく、建物から海を垣間見せることでリゾート感を高めたかったと島﨑さん。2階外壁は浮造り杉板の上に塗装を施した。特に別荘においてはメンテナンスのしやすさも重要
アプローチから庭を見る。生垣裏の扉は階段下収納。ゲストと顔を合わせず備品などを届けられる。画像右のヤシの木は土地を購入した際に植えられていたものを移植。1階ゲストルームの丸窓を開けると眺められる。その丸窓は、外部からは一般的な窓に見えるように計画(画像中央)
玄関は下足収納の扉を鏡とし、庭を写り込ませた。広々と開放的な仕上がりは、滞在の素晴らしさを期待させる。奥の収納にはゲストが自由に使えるのシーツやリネンを仕舞う。光沢がある唐紙による光の反射が美しい。竹製の取手からも高級感が感じられる
2階エレベーターホールから室内を見る。障子を模した引き戸があり、開け放した瞬間にこの絶景が見える。深い軒が眺望をフレーミングし、洗練された美しさを演出
2階LDKからベランダ、眺望を見る。間口いっぱいに計画した窓は全て引き違い窓で、空間の使い勝手に自由さがある。切妻屋根による深い軒によって日射がコントロールされ、より一層海の眺めを楽しめるようになった
2階リビングエリアからダイニングキッチンを見る。自炊だけでなくケータリングにも対応できる広めのカウンターが使いやすい。食卓では誰もが均等に海を眺められるよう配置を工夫。雰囲気に合わせダイニングテーブル上部の照明は造作した。右の仕切り戸を入ると水回りへ続く
キッチンから2階を見渡す。左側2つの個室は奥が寝室、手前が和室。ゆとりあるつくりに加え切妻屋根を生かした高い天井のおかげで、開放感いっぱいの空間。自然な流れで張り出した軒により、室内には強い日差しが入らない。ソファに座り、ゆったりと海を楽しみながらくつろげる
2階、リビングからキッチン方向を見通す。寝室に設けたエアコンの空気を部屋中に循環させられるよう、仕切り戸と天井までの間を空けた。また風の流れを計算し、高い断熱性も確保している。キッチンの壁面にもエアコンがあるが、寝室のものだけで十分涼しいという
2階寝室。壁面にエアコンを隠し、コンパクトな空間をすっきりと整えた。高級感あるベッドは造作。別荘らしい非日常感を味わえる。東側に計画した窓から朝日が優しく射し込み、気持ちのよい朝を迎えられそう
2階和室。縁には殴り加工を施した。ぼこぼこした床は表情があり美しいだけでなく、足触りもよい。画像右奥、襖紙には青海波の文様が入っている。その左、ニッチのタモ玉杢の柄も含めて和室には「波」を感じさせるモチーフを多く取り入れた。海が室内にも入ってきたよう
1階洗面脱衣室。1階は2階と対照的に暗めの色を取り入れ落ち着いた雰囲気。奥のウッドデッキからはそのまま海へ進むことができる。ゲストが自由に過ごせるための工夫が要所要所に感じられるのも、経験豊富な島﨑さんが手掛けるからこそ
1階ゲストルームには日本古来のモチーフである丸窓を取り入れた。コンセプトである「和のリゾート」を表現するとともに、その窓から見えるのは和の庭園ではなく南国の雰囲気に満ちたヤシが植わった庭とするなど、ユニークさもプラス
1階ゲストルームでは、2階とはまた違う表情の海を眺められる。全体的に暗い色を取り入れたほか、2階の和室とは畳の色合いも変えたと島﨑さん。背面には丸窓。庭を楽しみたい日はお施主さまもこの空間でお過ごしになられていたとのこと
2階浴室。石やタイルなどの素材はお施主さまの要望に沿って選んだ。壁一面を開口し、絶景に包まれるような感覚で入浴できる贅沢空間を実現。面積も広く、家族風呂としての使用もできる