公園の延長のような住まい。
桜と共に過ごす大空間リビング

すぐ目の前の公園は、春になると見事な桜並木に。この景色を家にいながらにして楽しみたいというS様ご夫妻。「こもった感じが好き」というご主人と「開放的にしたい」という奥様の相反する思いを上手く実現させたのは、イノウエヨシムラスタジオの「1階の天井を高くしたスキップフロア」というプランだった。

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スキップフロアがもたらすこもりと開放

東京都町田市にあるS邸。すぐ目の前の公園の桜に惹かれ、新規造成されたこの土地を購入されたS様ご夫妻。ご主人は大工さんで奥様はインテリアコーディネーターというお2人。自分たちの手で理想の家を建てたいという思いがあったものの、デザインや設計をどうするか悩んでいたそう。そんな折、目に留まったのが、イノウエヨシムラスタジオの建築デッサン。自分たちの理想の家をデザインしてくれるのはここだと感じだのだとか。

そんなS様ご夫妻は、家に居ながらにして公園の景色や雰囲気を楽しみたいという、お2人共通の思いはあるものの「こもった隠れ家のような感じが好き」というご主人と「開放的な空間にしたい」という奥様の相反する要望をもっていた。

土地は道路から1段上がったひな壇状で、開口を大きく取ればそれだけでも開放感のある建物に仕上がる。しかし、それでは一方のこもった感じが出しにくいのだ。そこでとられたのが、建物の1階リビングの天井高を3.4mと高くし、スキップフロアで中2階、2階へと徐々にスケールダウンしていくプラン。1階と2階を完全分離せず、1つの大きな空間でありながら、開放感のある場所とこもった感じのする場所をシームレスにつなげるというものだ。

Sさん邸の扉を開くと眼前にリビングが広がる。玄関は独立したスペースではなく、ソファー部分まで続く土間のようなしつらえになっている。これは、公園の景色が家の中まで続いているかのような雰囲気を出す、インナーテラスという考え方だ。
一歩足を踏み入れると、奥様のリクエストだという壁一面の本棚に目を奪われる。高い天井まであるその本棚は、インナーテラスと相まって、ヨーロッパの古書店を思い起こさせる。

そしてその本棚には大きく開けられた窓があり、眼前の公園の景色が取り込まれているかのようだ。春にはここから公園の桜が見え、あたかも本棚に桜の絵が飾られたような様相を呈する。そして夏には月を秋には落葉をそして冬には雪をと、四季折々の景色を楽しめるのだ。

リビングには、この窓以外にも方角や大きさ、高さの違う窓がいくつも設けられており、
高い天井と相まって抜群の開放感を実現した。そればかりか、数多くの窓は季節や時間、陽の入り方によって様々な陰影をつくりだし、リビングのどの場所にいても外の環境との一体感を感じられる、なんとも羨ましい空間となっている。

階段を上り中二階へと進むと、まず現れるのが踊り場を有効活用したワーキングスペース。この壁面に造り付けの机を設置した。作業をするときはリビングを背にするため、集中できる一方、リビングとひと続きの空間となっているので、開放感を阻害していないという一石二鳥の効果をもたらした。 
その奥の書斎には、リビングを覗けるような窓があり、隠れ家的要素もある。そしてさらに
階段を上った2階の寝室にはロフトが設けられ、秘密基地のような趣さえ感じさせるのだった。
  • 公園のすぐ側の角地に建つS邸。特に春の桜の季節は格別なのだという。一段高いひな壇上にあるため、外からの視界も気にならない

    公園のすぐ側の角地に建つS邸。特に春の桜の季節は格別なのだという。一段高いひな壇上にあるため、外からの視界も気にならない

  • 高い天井や大きな窓がもたらす開放感、木のぬくもりがもたらす落ち着きが心地よいリビング。天井はLVLという構造用集成材を用いることで、独特の質感がインテリアに趣を添えている

    高い天井や大きな窓がもたらす開放感、木のぬくもりがもたらす落ち着きが心地よいリビング。天井はLVLという構造用集成材を用いることで、独特の質感がインテリアに趣を添えている

  • リビングは、立つ位置や座る位置、向きや時間によって様々な表情が楽しめる。大小いくつも設けられた窓により、外からの木漏れ陽が降り注ぐ

    リビングは、立つ位置や座る位置、向きや時間によって様々な表情が楽しめる。大小いくつも設けられた窓により、外からの木漏れ陽が降り注ぐ

  • 玄関からダイレクトにリビングへ。土間のようなしつらえが、外と中をシームレスにつなぐ

    玄関からダイレクトにリビングへ。土間のようなしつらえが、外と中をシームレスにつなぐ

機能性や快適性にプラスαの価値を

イノウエヨシムラスタジオは、井上亮さんと吉村明さんの建築家ユニット。個人設計事務所や住宅デベロッパーでの豊富な経験を持ち、原価管理に秀で、何百もの施主と直接対話を重ねてきた井上さん。一方の吉村さんは公共施設などの設計や、現場がスムーズに回るように職人さんの仕事を監理してきた経験が豊富だという。

「当社では、まず最初に2人でヒアリングを行い、それぞれがアイデアやプランを持ち寄ります。そして議論を重ねて1つの案に仕上げていくイメージです。プランの大枠が決まると、主にお客さんに寄り添って要望を聞いたりする『顧客寄り』な仕事は僕が担当し、図面や部材、進行管理、現場管理など『現場寄り』な仕事は吉村が担当しますが、部分的に相互に関わりあいながら進めています」(井上さん)

「僕も井上も、居心地の良い空間にしたい、使い勝手のよい家であるべきといった価値観のベースは一緒です。でもそれを実現するためのアプローチには違いがあり、その掛け合いの中で生まれる面白さが、当社独自の魅力だと思っています」(吉村さん)

2人の頭脳からひねり出されるアイデアは、単純計算として2倍。しかしそれは、2人の議論によって磨かれ、より顧客にとって素敵な提案へとなる。

今回の物件はまさにその真骨頂ともいえる。「こもり」と「開放」という相反する要望の実現を、スキップフロアという手法でひと続きの空間としたことだけに留まらない。中2階、2階の部屋の扉をなくしたことで、室内の空気が1つになる。それにより、冬は1階の床暖房を入れるだけで暖気が昇っていき、2階の寝室を温めるという。寒いと思われがちな大きな吹き抜けの短所をも克服する機能面もしっかりと抑えているのだ。

「住んで快適な家、使い勝手がよい家という機能性を重視した住宅ならハウスメーカーでも実現可能です。でも、それを超えた『デザイン性の高さや特徴のある家にしたい』『コストも抑えたい』というのが、お客様の本音だと思います。我々は、そんなお客様の要望を叶えられるご提案ができると自負しています」(吉村さん)

顧客の要望を叶える素晴らしいプランがあったとしても、それを建物として形にできなければ絵に描いた餅となる。イノウエヨシムラスタジオは、技術に秀でた工務店とパートナーシップで実現させているのだという。

「設計図で描いたものが、誰でもどの会社でも作れるかというとそうではありません。工事をしていただく大工さん、工務店の技術力が非常に重要になってきます。これまで数多く住宅に関わってきた経験から、腕のよい職人さんや卓越した技術をもつ工務店さんと深いつながりがあります。そうした方々にご協力をいただきながら、質の高い住宅を作っています」(井上さん)

それぞれが豊富な知識と経験に基づく得意分野を受け持つことで効率的な作業を行い、高い技術力をもつ工務店の協力を経て形へと仕上げられていく。イノウエヨシムラスタジオの仕事のスタイルは、最強のタッグといっても過言ではない。

最強タッグから、「眺望」「機能性」「デザイン性」「コストパフォーマンス」を実現した、最高の家が、今日も生まれていく。
  • ソファー部分の土間は、公園の景色が家の中まで続いているかのような雰囲気を出す、インナーテラス

    ソファー部分の土間は、公園の景色が家の中まで続いているかのような雰囲気を出す、インナーテラス

  • 開放的なリビングから籠もった感じへとシームレスに移行。扉を廃し床暖房の暖気が昇る工夫も

    開放的なリビングから籠もった感じへとシームレスに移行。扉を廃し床暖房の暖気が昇る工夫も

  • 中二階への踊り場を活用したワーキングスペース。振り返ればリビングや2階の部屋の様子がわかるつくり

    中二階への踊り場を活用したワーキングスペース。振り返ればリビングや2階の部屋の様子がわかるつくり

  • 2階には、寝室と洗面や風呂場などの水回り。大容量のロフトはまさに籠もった空間を実現

    2階には、寝室と洗面や風呂場などの水回り。大容量のロフトはまさに籠もった空間を実現

間取り図

  • 1F間取り図+配置図

  • 2F間取り図

  • 中2F間取り図

  • ロフト間取り図

  • 断面図

基本データ

施主
S邸
所在地
東京都町田市
家族構成
夫婦
敷地面積
140.11㎡
延床面積
106.81㎡
予 算
2000万円台