北は北海道から南は九州まで、移住先を探すため日本各地を訪ねたというクライアントご夫妻。そしてようやく巡り合ったのが、北アルプスを一望する山間の集落の土地だった。その素晴らしいロケーションを活かした「土間の家」を手掛けたのは、建築家の坂利春さん。さて、どんな家となったのか、これから見ていこう。
この建築家に小川村の小根山中腹の小さな集落に佇む「土間の家」。周辺に建っている家屋や環境と馴染むよう、古民家を“新築”した
土地の東側から家の正面を見る。内壁同様、外壁も真壁造りとなっていて、周囲の家屋とも違和感なく馴染んでいる。外壁の漆喰は左官職人が施工
居間兼食堂から西側の景色を望む。晴れていれば雲の向こうに北アルプスの峰々が姿を表すという。家の外と中のコントラストが、美しい陰影のグラデーションを生み、漆喰壁のコテ跡を浮かび上がらせる
土間から居間を見る。骨太の柱や古材を使った梁などを見せる真壁の仕上げが、“古民家らしい”雰囲気を醸し出している。居間の左側に見える空間は台所となっている
居間から台所を見る。奥様が提供する薬膳料理などに使う調味料や調理器具が整然と並んでいる
台所。キッチンの引き出しや扉はもちろん、トップのステンレスもクライアント自らバイブレーション加工を施している
南側の台所から北側を見る。クランクした土間の右手には、陶芸などをする工房をレイアウト。左手はゲストとクライアントの寝室が2間あり、その間に緩衝帯となるよう洗面所とトイレをレイアウト
土間に据えられた薪ストーブ。暖房機器は主にこの薪ストーブだけで、竈で煮炊きするときの熱が補助的な役割を果たすという。土間の三和土とストーブ裏の壁に蓄熱され、冬でもそれほど寒くないとか
居間西側の窓を開け放つと、家周辺の緑との一体感が生まれる。季節や天候、時間帯によってさまざまに表情を変えるこの風景は、何時間見ていても飽きない