
目指したのは、会話が増える生活空間
家族がリビングに集い、つながりが強まる家
社会問題を、家の設計で解決したい
コミュニケーションが増えるプランとは?
冒頭でご紹介した通り、最大の特徴はプランの根底にある、“家族のコミュニケーションが増える家”という考え方だ。
その考えとお施主様の要望を融合させ、この作品は誕生した。
そこでまず、山下さんがこだわっている考え方についてご紹介しよう。
24歳の時に山下さんは独立した。その際、どのような建築設計事務所にするかを考えたという。当時、もっとも気になっていたのは現代社会で問題となっている現象だった。
特に、引きこもりや個性を発揮できない子供が増えていることが気になっていた。山下さんは、その原因のひとつとしてコミュニケーションがうまく取れない子供が増えているのではないかと考え、これを家の設計で解決することはできないかと考えたそうだ。
山下さんはその考えを、「昔は地域で子育てをしていました。私も子供の頃に悪いことをして、近所の大人に怒られた経験があります(笑)。しかし現代社会では近隣とのつながりが減りつつあり、コミュニケーションの量も減っています」。
「であれば、せめて家族のコミュニケーションが増える家を作れないかと考えました。社会の最小単位が家族です。家の中でコミュニケーションが増えて家族のつながりが強まり、さらには地域とのつながりが強まるような家。これが実現できれば、社会問題の一部を解決できるのではないかと考えました」。
この考えは、すべての作品の設計に共通しているという。
たとえば、吹き抜けを多用して家族の気配が常に感じられるようにすることが多いそうだ。1階と2階を分断せず、1つの生活空間として考えるべきだという想いからだ。これであれば、自然にコミュニケーションも増える。
“建築生活空間研究企画室”という事務所名にも、その考えが現れていることが理解できる。
その他にも、コミュニケーションを増やすためにこだわっている点が多数ある。具体的な内容を、次章以降でこの作品をご紹介しながら説明していきたい。
家族の会話を増やすために考えられた
吹き抜けとリビング中心のプラン
・天井を高くしてほしい
・来客時に対応できる和室がほしい
・広いリビングがほしい
というものだった。
これらの要望を、前述した“家族のコミュニケーションが増える”という考えと融合させるとどうなるのか。
山下さんの解は、次のようなものだった。
・天井を高くしてほしい の解決策は、吹き抜けの設置。さらに、2階の子供部屋を吹き抜けの空間に飛び出すように配置し、子供部屋の窓から気配を感じられるようにした。
・来客時に対応できる和室がほしい の解決策として、和室を玄関ホールの横に配置し、直接和室に入ることができるようにした。また、使用しない時は障子を全開にすることで、リビングへと続く広い空間を実現した。
・広いリビングがほしい の解決策は、キッチンを中心にダイニングとリビングが一体となった空間をつくりあげたことだ。家族がいつもこの広大なスペースに集まり、くつろぐことができるプランとした。
“家族のコミュニケーションが増える”ための工夫は、他にもまだまだある。
たとえば2階の子供部屋。将来は2つの子供部屋に改装できるよう、コンセントや梁などの準備をしている。が、現時点では壁もない1つの広い空間だ。これは、小さい時にはリビングやダイニングで家族と過ごしてほしいという考えからだ。
そのため、キッチンの後ろにはスタディースペースを配置。お絵かきをした作品を飾れるコルクボードや棚も用意されており、何気ない会話が日常で生まれるように工夫されている。
2階の寝室と子供部屋は、吹き抜けの空間側に窓がある。この窓を通じ、プライバシーは守りながら、お互いの気配を感じることができる。
このような工夫で、お施主様の要望を実現しながら、“家族のコミュニケーションが増える”プランが誕生した。
詳細はぜひ、写真の説明文をご参照いただきたい。
子育ての大変さがわかるから
育児と家事が楽になる動線を実現
それは“育児と家事が楽になる動線”だ。
お施主様から依頼を受けたのは、3人目の子どもが生まれ、子育てと家事に追われるタイミングだった。ちょうどその頃、山下さんも同じ状況で、慣れない子育てに苦労していたという。
山下さんは「初めての子育てを経験し、いかに子育てや家事が大変なのかを実感しました。お施主様の同じ状況だったので、どうしても毎日の生活を楽に過ごしてもらえるプランにしたかったのです」と、その想いを語った。
キッチンから洗面や浴室などの水回りに直接、最短のルートで行くことができ、子供が寝たり遊ぶことがある和室をキッチンの正面に配置した。その和室は床を40cmほど高くした。高さがあるので、和室で寝る子供をキッチンから見守ることができる。また、床下を収納とすることで、急な来客があってもすぐにおもちゃを片付けることができるようにした。
このようにして実現した、“家族のコミュニケーションが増える家”と“育児と家事が楽になる動線”は、お施主様にとってどのようなものだったのだろう?
その反応は、最初のプランを山下さんが提示した段階で満足し、その場で了承されたほどだったそうだ。
山下さんは、「何の追加意見もなく、ただただ満足していただいたので、かえってこちらが不安になるくらいでした(笑)」とその時の感想を語ってくれた。
実際にお施主様が住み始めてからも、「家事と育児が両立しやすい動線と、家族が集まる空間に、本当に満足しています」という感想だという。
このようにお施主様が満足する作品を、山下さんはどのようにして作り上げているのだろう。
山下さんは、「どんな暮らしをしたいのか、予算を気にせず全部話してもらっています。これを何回も繰り返します」と語ってくれた。何回も聞く中で複数回発言される内容は、お施主様にとって大切なこだわりである可能性が高いからだ。
自分たちの要望を実現するだけでなく、このように家族のコミュニケーションを増やしたり、自分たちが気付いていない課題の解決策を提案してくれる建築家をお探しの方は、いちどコンタクトしてみてはいかがだろう。
撮影:野村 和慎
間取り図
基本データ
| 作品名 | 和みの家 |
|---|---|
| 所在地 | 高知県南国市 |
| 敷地面積 | 373.29㎡ |
| 延床面積 | 164.75㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども3人 |
| 予算 | 3000万円台 |
設計者情報
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