長く都会に住み続けてきた施主が、自分らしく晩年を過ごす家を求め3年の歳月を過ごした中、出会ったのが市中山居の増木奈央子さん。施主とじっくりと寄り添い資金計画や土地探しという「下ごしらえ」から、対話を重ね出来上がった家は、施主が「不満に感じる点が1つもない」と言い切るほどの、大人の住まいでした。
<住まいへのこだわり> 細部まで心を配り、さり気なくデザインし、丹精に造り込んだ住まいは、仕立ての良い麻のシャツのように、様々なコーディネートを楽しめ、着る人を美しく引き立てます。 心地よさ、落ち着き、気品があり、澄み切った空気が流れる住まいを設えます。 <私の暮らし> 庭のブルーベリーやチョークベリーでジャムを作っています。 剪定した草木を器に生け、部屋に飾るのが好きです。 猫のように、時間ごと、季節ごとに居場所を変えて、ゴロゴロしています。
建築家の詳細
杉板の壁が、小さな旅館のような大人の落ち着きを感じさせる外観。庭の内外を仕切る板塀は、屏風のようにあえて完全に閉ざさず、ご近所の方がふらっと入って来られるようにしている。
お茶会やお稽古の日は、増木さんがデザインし、プレゼントした「清風」の暖簾が玄関に。「清風(せいふう)」とは、煎茶を飲み清い風に吹かれるような心持ちを表す。煎茶道の祖といわれる売茶翁(ばいさおう)が、野外で茶席を設ける際に「清風」の旗を掲げたという故事にならったそうだ。
そばを流れる小川を思い起こせるよう、庭には庵治石の水鉢を置いた。夏場には打水効果もあり、水のせせらぎは清涼感を与えてくれる。「八国山から野鳥が水浴びに来て、目を楽しませてくれることもあります」とYさん。
建築家・山口文象設計の「宝庵」をモチーフにした和室。額縁のように切り取られた庭の景色が美しい。庭は玄関から続く土間となっており、庭でも茶席を設けることができる。
LDの上は抜き抜けとなっており、家中に光や風を送り届けてくれる。階段手前の段差は、庭に向かって斜めに振れており、Yさんはこの段差に腰掛け、庭の木々や水鉢を眺めるのがお気に入りだとか。
ダイニングのソファーはシナ材を使った大工さんによる造作でYさんの体に合わせた高さにし、布地は内装や本人に似合うよう色・柄・素材を150種以上のサンプルからYさんと3時間かけ選んだそうだ。
2階へ向かう途中に設けられたワークスペースは、落ち着きがありながら天井の高さからくる開放感がある。Yさんは窓の向こうの景色を眺めて一息つきながら毎日快適にテレワークできているという。
寝室とWICのそばにある水回りは、南向きで明るく、心地よい風が流れる。お風呂の窓先のバスコート越しに空も眺められ、露天風呂気分も味わえる。お湯に浸かりながらお月見も楽しめるのだとか。
2階のデッキテラスは、屋根の下にあるため夏の日差しや雨も遮ってくれる。八国山の景色が楽しめるほか、夏には花火も見えるのだとか。
この家には定位置なんてない。いろんな場所で、それぞれ違った景色や雰囲気、時間を楽しめる場所がいくつも存在する。
撮影:中村晃写真事務所(一部:市中山居、相羽建設)
<住まいへのこだわり> 細部まで心を配り、さり気なくデザインし、丹精に造り込んだ住まいは、仕立ての良い麻のシャツのように、様々なコーディネートを楽しめ、着る人を美しく引き立てます。 心地よさ、落ち着き、気品があり、澄み切った空気が流れる住まいを設えます。 <私の暮らし> 庭のブルーベリーやチョークベリーでジャムを作っています。 剪定した草木を器に生け、部屋に飾るのが好きです。 猫のように、時間ごと、季節ごとに居場所を変えて、ゴロゴロしています。
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