イメージはラグジュアリー・ビーチリゾート
心身ともに癒やされる、セカンドハウス

千葉県一宮町は九十九里浜の南端に位置し、サーファーの聖地と呼ばれている。この地に特徴あふれるセカンドハウスが誕生した。落ち着いた外観が周辺の景色に溶け込み、まるで高級ビーチリゾートのヴィラのようだ。室内も同様に洗練された内装で包まれている。都心の喧騒から離れ、心身ともに癒やされる空間を目指したこの作品をご紹介しよう。

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大好きな高級ホテルをイメージした
ビーチリゾートのようなセカンドハウス

この作品は、都内の自宅とは別の生活拠点を望んでいたお施主様のセカンドハウスだ。設計をしたのは、株式会社カワムラアーキテクツの川村さん。川村さんは、このプロジェクトがはじまったきっかけがコロナ禍だったため、とにかく心身ともに癒やされるような空間づくりを目指したそうだ。

お施主様が持つイメージは、かなり明確なものだった。

・ビーチリゾートのヴィラのようなイメージ
・寒い時期でも楽しめるように、ファイヤーピットや薪ストーブなどを設置したい
・プール代わりになるような、庭に面したホテルライクで気持ちの良い浴室が欲しい

こうしたイメージの根本にあるのは、お施主様がとても気に入っているアジアン・ラグジュアリーホテルだったそうだ。

川村さんは、このようなイメージをじっくりと会話をすることで具体化させていった。そのプランを見ていこう。

特にLDKは大開口の窓でインナーテラスに面しており、天井材はどちらもレッドシダーの板張りが贅沢に使用されている。この天井材が連続していることで、都心では味わえない開放感のある空間となっているのだ。

また、インナーテラスも非常にゆとりがあるサイズとなっている。幅が2m以上もあり、さらに1m近い軒をその先に設けている。このため、雨の日でもくつろぐことができ、夏は日差しをさえぎる効果もある。

もちろん、薪ストーブや庭で焚き火などをするファイヤーピットなど、お施主様の要望はすべて叶えている。浴室はまるで露天風呂のような開放感で、窓ではなく全面開放できる扉がついている。まさにビーチリゾートにある浴室のようだ。

その他にも、様々な工夫が各所に取り入れられている。ぜひ、写真の説明文もご参照いただきたい。
  • ビーチリゾートのヴィラというお施主様のイメージを実現した外観(南側)。無垢の黒いセメント板とレッドシダーの壁、そして片流れの屋根によって、周囲に圧迫感を与えずに高級感と洗練されたイメージを醸し出している

    ビーチリゾートのヴィラというお施主様のイメージを実現した外観(南側)。無垢の黒いセメント板とレッドシダーの壁、そして片流れの屋根によって、周囲に圧迫感を与えずに高級感と洗練されたイメージを醸し出している

  • 西側の田園から見た外観。狭い生活道路に面している西側にはあえて大きな窓を設けず、まるで隠れ家のようだ。西側に流れる屋根としたことで高さが抑えられ、道路を歩く人に圧迫感を与えていないことがよくわかる

    西側の田園から見た外観。狭い生活道路に面している西側にはあえて大きな窓を設けず、まるで隠れ家のようだ。西側に流れる屋根としたことで高さが抑えられ、道路を歩く人に圧迫感を与えていないことがよくわかる

  • 出窓のように飛び出している部分は、キッチンの小窓。通行する人からは中が見えず、キッチンからは田園風景を見ることができる高さに設置されている。片流れの屋根には樋がなく、スッキリしたデザインになっている

    出窓のように飛び出している部分は、キッチンの小窓。通行する人からは中が見えず、キッチンからは田園風景を見ることができる高さに設置されている。片流れの屋根には樋がなく、スッキリしたデザインになっている

景観になじみ、圧迫感がなく、品のある外観
外壁の素材や屋根の勾配に隠された工夫

前章で、お施主様が持つイメージを具体化させた概要をご紹介した。しかしこの作品には、川村さんが提案した数々のプランも取り入れられている。ここでは、その提案の一部をご紹介しよう。

特に川村さんが気を配ったのが、外観だ。この土地は田畑に面しており、もともとは空き地だった。そこにインパクトがあるデザインの建物が建つと、どうしても違和感が出てしまう。

そこで外壁の素材や、屋根の向きや傾きを工夫することで、景観になじみ、圧迫感を与えない、品のある作品を作り上げた。

外壁材は経年とともに風合いが出る外壁材を採用した。無垢の黒いセメント板と、レッドシダーの壁を使用することで、落ち着きながらビーチリゾート感も漂う外観が実現できた。

屋根は片流れ形状として平屋に近い見え方にし、周囲に対する圧迫感を軽減している。屋根の向きにも工夫をこらし、西側にある道路側を低くすることでボリューム感を抑えている。

この作品はセカンドハウスとして使われるため、不在時の防犯対策にも留意した。LDKの窓はほぼ全面に配置されているため、普通の雨戸ではカバーすることが難しく、デザイン性も劣る。そこで空港や施設の店舗でシャッターとして使用されている、ステンレスカーテンを採用した。これにより、モダンなデザインと防犯対策を両立することができたのだ。

川村さんの提案は、外構にも及ぶ。広いインナーテラスに接する前庭には、焚き火などができるファイヤーピットを設けた。しかし基礎の高さがあるため、そのままではインナーテラスから、階段などで庭に降りる必要がある。そこで造園会社と協働し、前庭を高くすることで高低差をなくして外と中の連続性を確保した。

川村さんは、周囲の自然や環境と一体となった、調和した建物の中での暮らしが好きだという。そのため今回の作品のように、外構や造園の専門家と協働するケースがとても多いそうだ。
  • 玄関ドアは、レッドシダー製。取手はお施主様と一緒に鎌倉の工房へ行って制作依頼した直径13mmの黒皮鉄

    玄関ドアは、レッドシダー製。取手はお施主様と一緒に鎌倉の工房へ行って制作依頼した直径13mmの黒皮鉄

  • LDKからインナーテラス、前庭を望む。天井にはレッドシダーの板材が使われており、重厚感を感じられる。インナーテラスと庇まで同じ素材が使われているため、外と内の連続性を感じることができる

    LDKからインナーテラス、前庭を望む。天井にはレッドシダーの板材が使われており、重厚感を感じられる。インナーテラスと庇まで同じ素材が使われているため、外と内の連続性を感じることができる

  • リビングから見たキッチンと薪ストーブの団らんスペース。キッチンの後ろに設置された大型テレビは、スポーツバーをイメージした。薪ストーブの前は一段低くなっており、床に腰掛けて談笑することもできる。紺色のソファーも特注で制作したものだ

    リビングから見たキッチンと薪ストーブの団らんスペース。キッチンの後ろに設置された大型テレビは、スポーツバーをイメージした。薪ストーブの前は一段低くなっており、床に腰掛けて談笑することもできる。紺色のソファーも特注で制作したものだ

当初は週末利用の予定だったセカンドハウス
快適さのあまり、平日も利用することに

お施主様の感想をお伝えしよう。

「当初は週末に過ごす予定でしたが、快適なので今はかなりの時間をここで過ごしています」
「友人が来た時、ファイヤーピットにキャンドルを飾り、お酒を飲む時間が最高です」
「薪ストーブは想像以上に効果があり、1台で家全体が暖かくなります」 
「キッチンはダイニングテーブルが一緒になっていて、とても便利です」

いかがだろう。ビーチリゾートのヴィラのようなイメージが形になっただけでなく、さまざまな提案によって、より快適な生活が実現し、とても満足されている様子が目に浮かぶ。

さいごに、川村さんがこだわっていることをご紹介しよう。
「大前提として、お施主様の要望は100%実現することを目指しています。そのうえで、より快適で良くなりそうなアイデアをどんどん提案することを心がけています。それが、建築家に依頼するメリットだと思うからです」。

「お施主様にとって、満足できる家を生み出すことを重視しています。そのために大切にしているのが、お施主様との対話です。どのような趣味や嗜好なのかを理解し、一緒に作り上げていくことが大切ですね」。

実際、この作品では多くの場所の素材にこだわっている。たとえば玄関の取手や外部のシンクを製作してもらうために、鎌倉の工房をお施主様と訪れたそうだ。お施主様もその工程を楽しみながら、家を一緒に作るという貴重な経験ができたのではないだろうか。

興味を持たれた方は、いちどコンタクトしてみてはいかがだろう。
  • LDK上部はすべて吹き抜けで、空間の広さを強く感じることができる。写真右側の上部には客間が設けられている。キッチンと一体になったカウンターは、食事をするだけでなくパソコンで仕事をすることもあるそうだ

    LDK上部はすべて吹き抜けで、空間の広さを強く感じることができる。写真右側の上部には客間が設けられている。キッチンと一体になったカウンターは、食事をするだけでなくパソコンで仕事をすることもあるそうだ

  • 細い特注の手すりの効果もあり、スッキリした印象の階段

    細い特注の手すりの効果もあり、スッキリした印象の階段

  • 書斎コーナー。落ち着いてリモートワークをする時に活用されている。デイベッドもあるため、休憩もできる

    書斎コーナー。落ち着いてリモートワークをする時に活用されている。デイベッドもあるため、休憩もできる

撮影:ナカサアンドパートナーズ

基本データ

作品名
一宮のセカンドハウス
所在地
千葉県長生郡一宮町
家族構成
夫婦
敷地面積
189㎡
延床面積
118㎡
予 算
6000万円台