滋賀県栗東市に、独創的な作品が誕生した。前面道路側に象徴的な境界壁を持ち、建物は敷地を対角線に横切る三角形。それ以外は広大な庭とウッドデッキとなっている。 “子どもが安全に過ごせる”ことと、“パノラミックな田園風景を暮らしの中に取り込む”ことを両立した、工夫に満ちあふれるこの作品をご紹介しよう。
この建築家に
長方形の敷地を斜めに分割し、三角形の建物と庭とするプラン。庭側の窓が敷地の対角線にあることで、妻が生まれ育った田園の風景をどの部屋からも楽しむことができる
道路側の境界壁は敷地いっぱいに建てられ、視線をカットする役割も持つ。一方で手前の水田側は高低差もあるため、境界壁は設けていない。眼前に広がる水田の光景を楽しむためのプランだ。広い庭やウッドデッキでは、BBQやテントを張って楽しんでいるそうだ
子どもの安全面を考慮し、前面道路側に大きな壁を設置。周辺への威圧感が出ないように、デザイン上の工夫もなされている。壁と屋根、そしてその間のスリットの窓に分割し、それぞれの位置・角度・色を計算することで軽やかな印象を持たせた
壁の奥まった位置に玄関ドアがあるため、子どもが道路に飛び出す危険はない。大きな軒下は、屋根付きのカーポートの役割も持つ。棟木に向かって取り付く登り梁が、船の竜骨のようで迫力があり美しい
キッチンから。正面にあるリビングダイニングの先には、妻が幼少期を過ごした原風景である水田が広がる。いつでもこの光景を見ることができ、心が休まるそうだ。左には子どものスタディスペース。ガラスの仕切りなのでキッチンから様子が見え、とても安心できるという
庭の芝生と水田の景色を満喫できるリビング。ハイサイドライトは光や風を取り込むだけでなく、風景や軒とのつながりや軽さを追求して配置された。風景を最大限に楽しむため、サッシは特注の特大サイズを採用
リビングのソファーから見た室内。開放感を存分に味わえる。2階のワークスペースとも大きな開口部でつながっている。スタディスペース(テレビ後ろ)にいる子どもの様子もわかる。家族のコミュニケーションを増やすため、室内に壁を極力作らず、緩やかなつながりを持たせる考えだ
壁一面に収納を設け、大容量の収納を実現した。テレビの右側には録画機器などを収納するスペースを用意。壁と同色にして配線を隠すことで、驚くほどスッキリした印象となった。ガラス越しに見えるスタディスペース奥の壁は、チョーク塗装。自由に絵などを描くことができる
2階のワークスペース。正面奥はLDK、ワークデスクの前は子供部屋につながっているので、家族の気配を感じられる。四方をハイサイドライトや窓で囲まれているため、明るさは十分。その一方で、玄関前の深い軒(右)と絶妙な勾配天井の高さにより、適度な包まれ感を感じられる
近江富士と呼ばれる三上山を背後に持つ、旧中山道の古い街並み。周辺環境との調和を考え、一部2階建てだが平屋のように見えるデザインを採用。近隣家屋でも採用されている切り妻屋根や、似た色を採用することで違和感や威圧感をなくした
LDK夕景。各所に間接照明が組み込まれ、梁や天井が美しく浮かび上がる。調光ができるため写真では少し暗く見えるが、実際にはこれ以上追加の照明が必要ないほど明るさは十分だ。ウッドデッキには庭でアウトドアを楽しむ時に雰囲気が楽しめる、マリンランプを配置
庭側外観夕景。室内から漏れ出る光が美しい。夜間でも境界壁のおかげで、外部からの視線を気にせず過ごすことができる。蛍の季節には、窓から庭の木にいる蛍を眺められるそうだ。妻は「毎年、とても神秘的で贅沢な時間を感じることができて満足です」と語ってくれた