のどかな景色と家族の居場所が1つになる、
通り土間のある家

S邸は、家の中を通り抜けることができる「通り土間のある家」。子どもが駆け回りたくなるような、緑を望むのびやかな空間で家族が憩う──。そんな幸せを生み出した、コーデザインスタジオの小嶋直さんに話を聞いた。

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自然豊かな景色と薪ストーブ。
映画で憧れたあの家を

設計を担当したコーデザインスタジオの小嶋直さんと、施主のSさまご一家をつなげたものは陶芸だった。Sさまは、小嶋さんと仕事のお付き合いがある陶芸家の作品を初めて購入したお客さま。家づくりを託す建築家を探していたSさまに小嶋さんを紹介したのが、その陶芸家の方だったのだ。

同じ陶芸作品を好むのだから、感性が通じるところもあったのだろう。Sさまはすぐに小嶋さんへの依頼を決め、家づくりがスタートした。

プランに対するSさまの要望は、「北海道を舞台にした、とある映画に出てくるカフェのような家にしたい」というもの。そのカフェは薪ストーブのある木のぬくもりにあふれた空間で、大きなガラス窓越しに雄大な自然を一望できる。

S邸の敷地も、南に隣家がなく緑が広がる好条件に恵まれていた。そこで小嶋さんは、1階の南側に薪ストーブのあるダイニングやリビングを配し、南に大開口を設けた住まいを提案。1階北はキッチンや水まわり、寝室などのプライベートゾーンは2階とした。

これだけならよくある理想的な間取りのように思えるが、小嶋さんは「土間がほしい」というSさまのもう1つのリクエストにも応え、大きな通り土間をプランニング。この通り土間が、暮らしを豊かにする開放感と心地よさを生み出すこととなる。
  • S邸は住宅街に立つが、南(写真右)の正面は住宅がなく開けており、のどかな景色を眺めることができる。大きな敷地内にはSさまのご実家もあり、ときには広々した芝生に親族が集まってバーベキューなどを楽しむそう

    S邸は住宅街に立つが、南(写真右)の正面は住宅がなく開けており、のどかな景色を眺めることができる。大きな敷地内にはSさまのご実家もあり、ときには広々した芝生に親族が集まってバーベキューなどを楽しむそう

  • 西から見たS邸外観。玄関は西にあり、ポーチは車寄せとして使える贅沢な広さ。ストーブ用の薪を雨にぬれずに置いておけるよう、屋根も大きく取ってある。あらわし仕上げの屋根の構造材は、ピーラー(木目が細く美しい良質なベイマツ)を使用

    西から見たS邸外観。玄関は西にあり、ポーチは車寄せとして使える贅沢な広さ。ストーブ用の薪を雨にぬれずに置いておけるよう、屋根も大きく取ってある。あらわし仕上げの屋根の構造材は、ピーラー(木目が細く美しい良質なベイマツ)を使用

  • 南の庭から邸内を見る。土間のダイニングの先は土間テラス、スギ床のリビングの先はウッドデッキ。邸内から外に向かって同じ素材の床が連続することで、内と外の一体感が増し、開放感もアップ

    南の庭から邸内を見る。土間のダイニングの先は土間テラス、スギ床のリビングの先はウッドデッキ。邸内から外に向かって同じ素材の床が連続することで、内と外の一体感が増し、開放感もアップ

家に入ったのに、まだ外?
そんな錯覚を覚える通り土間

S邸の通り土間は大きいが、ただ大きいのではなく、楽しみや快適性も与えてくれる。

最も大きな魅力は、屋外並みの開放感を味わえることだろう。西の玄関土間から邸内に入ると、同じく土間の玄関ホール。そこから右に折れたら板張りの床に変わるのかと思いきや、土間はまだまだ続き、広い土間のダイニングへ出る。そして南に向かった掃き出し窓の先には、緑に彩られた抜け感のある景色。玄関から庭へ続くL字の通り土間が屋外と大胆につながり、家の中に入ってきたのに、まだ外にいるようなおおらかさが持続するのだ。

土間のダイニングの横には板張りのリビングがあるが、2つの空間に仕切りはない。南向きの大空間が土間と板張りの異なる仕上げでスペース分けされており、異なる居心地のよさを楽しめる。また、小嶋さんはテラスにもひと工夫し、リビングの先はウッドデッキ、土間の先は土間テラスに。邸内のそれぞれの床と合わせることで住空間が外へ続くようなのびやかさが生まれ、テラスはSさまご一家がピクニック気分でお弁当を広げるお気に入りスポットになった。

薪ストーブもある通り土間は温熱環境にも役立っている。土間の蓄熱効果で夏はひんやり、冬は薪ストーブと日差しの自然な暖かさをキープ。あまりに快適なのでSさまご一家は素足で過ごすことが多いそう。お子さまたちも家の中と外を自由に回遊し、元気に駆け回っているという。

S邸の通り土間がもたらす屋外との一体感や心地よさは、もはやSさまが理想とする映画のカフェを上回るのではないか。「さすがは土間づくりが得意な小嶋さん」と唸ってしまう。
  • 1階ダイニング。玄関から続く通り土間はL字に折れてこのダイニングへつながり、ここから土間テラスを介して屋外へ続く。掃き出し窓は天井との間に壁がなく、右の壁も残さないすっきりとした設計で、邸内と屋外の境界が曖昧になり、半戸外のような開放感が生まれている

    1階ダイニング。玄関から続く通り土間はL字に折れてこのダイニングへつながり、ここから土間テラスを介して屋外へ続く。掃き出し窓は天井との間に壁がなく、右の壁も残さないすっきりとした設計で、邸内と屋外の境界が曖昧になり、半戸外のような開放感が生まれている

  • 1階。土間のダイニング(手前)と板張りのリビング(奥)は仕切りがなく、1つの大空間として使える。テラスへの掃き出し窓はガラスとガラリの2層構造。ガラリは網付きで、網戸の役割も果たす。またガラリには鍵もあり、ガラリを閉めただけでも防犯対策が可能

    1階。土間のダイニング(手前)と板張りのリビング(奥)は仕切りがなく、1つの大空間として使える。テラスへの掃き出し窓はガラスとガラリの2層構造。ガラリは網付きで、網戸の役割も果たす。またガラリには鍵もあり、ガラリを閉めただけでも防犯対策が可能

  • 北欧テイストの1階リビング。乳白ガラスのペンダントライトは、施主さまが益子の陶器市で出会ったガラス職人にオーダーしたもの。写真右にはキッチン、奥にはダイニング、ゲストルームがある。1階は仕切りの壁や扉がほとんどなく、各スペースがおおらかにつながる

    北欧テイストの1階リビング。乳白ガラスのペンダントライトは、施主さまが益子の陶器市で出会ったガラス職人にオーダーしたもの。写真右にはキッチン、奥にはダイニング、ゲストルームがある。1階は仕切りの壁や扉がほとんどなく、各スペースがおおらかにつながる

土間に「暮らし方」を映し出し、
人生を豊かにする住まいをつくる

S邸についてはもう1つ、トピックがある。「このお宅はとても素直な造り。敷地の北に建物、南に庭があり、間取りは南にリビング・ダイニング。セオリー通りのシンプルな住宅です」と小嶋さん。ところがS邸は、小嶋さんが代表を務めるコーデザインスタジオのHPを見たクライアントから、人気が高い住宅の1つなのだという。

S邸が多くの人を惹きつける理由は、やはり半戸外の大きな土間と、屋外との一体感。加えて、珪藻土の壁、構造材を見せたあらわしの天井、無垢のスギ床といった良質な自然素材の質感や、仕切りが少なく家族がゆるやかにつながる間取りも好まれているようだ。

小嶋さんはいう。「確かに僕は、内と外が曖昧になるような家づくりを心がけています。周囲の環境をうまく取り入れた住宅は、暮らしを豊かにすると考えているからです」。だからこそ小嶋さんがつくる家は、内と外の中間領域的な土間を活かした設計がおのずと多くなったのだろう。そこに、小嶋さんのポリシーである「暮らし方をつくる」が効いてくる。土間という空間に施主の好きなことや理想の暮らしをかけ合わせ、その家だけの独創的な土間をつくり出してくれるのだ。

「最近感じるのは、たとえ小さな敷地でも、自然に寄り添って暮らせる住宅を求める方が増えてきたということです。僕に依頼してくださる施主さまに、そういう方が多いだけかもしれませんけれど……(笑)」と話す小嶋さん。もし、暮らしの中に気持ちのよい光や緑、風があり、人生も豊かにする家づくりを望むなら、小嶋さんは想像以上の形で期待に応えてくれるだろう。
  • 土間の玄関ホールから玄関を見る。土間はダイニングまでL字でつながる。写真左は玄関脇のゲストルーム

    土間の玄関ホールから玄関を見る。土間はダイニングまでL字でつながる。写真左は玄関脇のゲストルーム

  • 玄関ホールとダイニングに面したゲストルーム。親族が宿泊する際は日当たりのよいこの部屋でくつろいでもらえるが、写真のように引き戸を引き切って開放することもできる

    玄関ホールとダイニングに面したゲストルーム。親族が宿泊する際は日当たりのよいこの部屋でくつろいでもらえるが、写真のように引き戸を引き切って開放することもできる

間取り図

  • 1F間取り図

  • 2F間取り図

お家のデータ

施主
S邸
所在地
千葉県野田市
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
255.58㎡
延床面積
127.66㎡
予 算
2000万円台

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