仲間が集う大人の秘密基地?
地元で実現した理想の“BASE”

家は、家族が快適に暮らす場所であるとともに、仲間や親戚が集う場所でもある。
生まれ育った地元に戻って暮らしたいと思った施主のOさん。実家の隣にある20坪の敷地に、建築家の大川さんが実現したのは、気の置けない仲間が自然に集まる、くつろぎの空間だった。

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大胆かつ巧妙な仕掛けで、楽しさと暮らしやすさを両立

Oさん邸を一言で表すなら「大人の秘密基地」。そこには大川さんが緻密な計算にもとづいて考えた、暮らしやすさと楽しさを併せ持った数々の仕掛けが散りばめられている。

外観に目をやると、モスグリーンのガルバリウム鋼板の外壁の一部がポコッと飛び出し、木板で覆われている。一瞬、まだ工事中?と思わせるが、これも大川さんの秘密基地っぽさの演出の1つ。バルコニーの下には、フックが取り付けられていて、ブランコを引っ掛けると、駐車スペースが遊び場に早変わり。さらに玄関扉を開けるとそこは土間になっており、フラットなアプローチが続く。扉で仕切れば玄関と小さな部屋にもなるユーティリティースペースが生まれる。

よく仲間が集まり飲み会が開かれるという広々とした(面積以上にそう感じる)リビングには、三方から陽が差し込み、つい長居をしてしまいそうな、居心地のよい空間。
3mのロングキッチンは、奥様の使い勝手とインテリアに合わせた特注品。「料理を作りながら、会話に参加できますし、いちいち廻り込まずに、すぐに料理を出せるのも気に入っています」と奥様。
ダイニングテーブルの奥には、なんとベンチが!そう、ここが外壁の出っ張りの正体。来客が我先にと座る、とっておきの場所なのだそう。

天井にはスピーカーが埋め込まれており、Oさんの趣味の1つである音楽を臨場感たっぷりに味わうこともできるという。

光あふれる階段を上り、2階に上がると、寝室、子供部屋、そして洗面・浴室が設けられている。その3部屋をつなぐスペースには、カーペットの上に洗濯機が鎮座している。一見、なぜこんなところに?と思う大胆な配置だが、ここにも大川さんの緻密な計算があった。

1フロアのスペースが広くとれないこの物件では、トイレは1階の1ヶ所のみというのがセオリー。とはいえ、それでは不便に感じることもあるだろう。であるならば、洗濯機を洗面室に置かず、バルコニー脇にもってきて、洗面室の空いたスペースに家族用トイレを設置しようと考えた。むしろそのほうが家事動線もよくなるし、デザイン性の高い洗濯機を置くことで、おしゃれにみせることもできる。
「1階だけでなく2階にもトイレがあるので、下に人が来ていても下に降りずに子供をお風呂に入れたり、寝かせたり、全て上で済むのが便利です」と奥様。

そして、この家の秘密基地っぽさの一番のポイントが、広々としたロフト。子供の絶好の遊び場だ。布団を運び入れれば、十分に来客用の寝室となることだろう。
このロフトの入口には、窓とエアコンが。「この窓やエアコンで、ロフトだけでなく、子供部屋まで空気が流れるようになっています」と大川さん。
気づくと、ロフトへの階段の途中に子供部屋への採光・通風のための開口がある。さらには、階段の1段目は、奥が木の格子になっており、1階へ光を導くとともに通風口の役割も担っているのだ。さらにこの1段目は他よりも広く、かつ下部が収納になっており、ちょっとした小上がりになるという一石三鳥の仕掛け。
この家の随所にみられる、大川さんのこうした工夫には、目を見張るばかりだ。
  • 外観 /白い壁とモスグリーンのガルバリウム鋼板とのコントラストが美しい。バルコニー下には、ブランコも

    外観 /白い壁とモスグリーンのガルバリウム鋼板とのコントラストが美しい。バルコニー下には、ブランコも

  • 1階 土間/ユーティリティースペースとして活用できる土間。扉で仕切れば、それぞれ玄関と小部屋として利用可能

    1階 土間/ユーティリティースペースとして活用できる土間。扉で仕切れば、それぞれ玄関と小部屋として利用可能

  • 1階 リビング/明るく広々としたリビング。ここに大勢の仲間が集まる

    1階 リビング/明るく広々としたリビング。ここに大勢の仲間が集まる

共に壁を塗ることで、仲間にとっても自分の家に

「実はこの壁、自分で塗ったんです。気づきました?」とOさん。いやいや全然気づきません!
「今回、大川さんに無理を言って、分離発注でできないかとお願いしたんです」
通常、家の建築では、施工は1つの工務店が一括で請け負うことが多い。それをOさんは、「リビングの壁の塗装は自分たちでやりたい」「キッチンや作り付けの家具などは、知人の会社に依頼したい」とリクエストしたという。そういったケースでは、工務店との交渉が難しくなることもあるというが、ここでも大川さんが間に入り、上手に調整してくれたばかりか、壁の塗装までサポートしてくれたという。
人当たりのよさ、フットワークの軽さというまさに大川さんの真骨頂。

「壁の塗装は地元の仲間もたくさん手伝ってくれました。完成してからも『俺がここ塗った』『お前の塗ったあそこはムラがある』なんて友達同士で話してたりします。手伝ってくれたのはありがたいんですが、お礼に開いた飲み会のほうが高くついちゃったりして(笑)」と語るOさんは、とても嬉しそうだった。

自ら作業をするだけでなく、家族や仲間も一緒になって家づくりを手伝う。家づくりがみんなにとって素敵な思い出づくりにも繋がった。

今回、この家を建てたことで、Oさんは地元という「ベース」に戻ってきた。そしてOさん家族にとってここは、これから「基盤」を築いていく場所。やがて子どもたちは、ここを「基点」として旅立っていくだろう。また仲間にとっては、集い楽しむ「基地」でもある。

そう、この家はみんなにとってホームベースなのだ。

【建築家 大川三枝子さん コメント】
ひとことで言うと「家づくりは楽しい!」です。家は住む人にとって一生ものなので、いつも真剣勝負なのです。こうしたらどうかな?ああしたら良いかもと、いろいろ考え提案させていただくのが、とても楽しい作業です。また、完成後もお食事に呼んでいただいたり、友達のようなお付き合いをさせていただくのも、嬉しいことです。これからも、マジメに楽しみながら、建主の方と一緒になって家を作り上げていきたいと思います。

【施主コメント】
「ひとつも不満に感じるところがない」「大川さんにお願いしてよかった」というのが正直な感想です。いろいろなアイデアやコスト面も考慮した提案力、柔軟でしなやかな対応力はもちろんなのですが、何よりも大川さんの話しやすい雰囲気や人間性が、我々に合っていました。仲間の1人のように感じていて、今後もいろいろと相談にのっていただきたいと思っています。
  • ロフト/広々としたロフトは、まさに秘密基地。上部に設けた窓やエアコンで、空気の流れを確保

    ロフト/広々としたロフトは、まさに秘密基地。上部に設けた窓やエアコンで、空気の流れを確保

  • 2階子供部屋 /ロフトへの階段には開口があり、空気の循環と光を取り込む。階段下部分にも窓を作り、明るさを確保

    2階子供部屋 /ロフトへの階段には開口があり、空気の循環と光を取り込む。階段下部分にも窓を作り、明るさを確保

  • 2・3階 階段/ロフトへと続く階段の1段目は、ちょっとした小上がりスペース。下部が収納となっている他、奥が格子状になっており、1階への採光と通風の役割を担う

    2・3階 階段/ロフトへと続く階段の1段目は、ちょっとした小上がりスペース。下部が収納となっている他、奥が格子状になっており、1階への採光と通風の役割を担う

撮影:アトリエあふろ(古川公元)

基本データ

施主
O邸
所在地
東京都板橋区
家族構成
夫婦+子供2人
敷地面積
69.19㎡
延床面積
76.24㎡