
迷ったときは建築家に相談!
2000万円台で実現した、2つの「壁」を持つ注文住宅

髙濱 史子
たかはま ふみこ
髙濱史子建築設計事務所
東京都 世田谷区
1979年生まれ。2003年京都大学卒業。東京大学大学院に進学、スイス連邦工科大学チューリヒ校留学、Christian Kerez、HHF Architectsでのインターンシップを経て2007年同大学院修士課程修了。2007年より2012年までHerzog & de Meuron勤務。2012年 +ft+/高濱史子建築設計事務所設立、神戸大学学術推進研究員。2013年-2015年東京大学特任研究員。2017年工学院大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師。2015年35歳以下の若手建築家によるガラス建築の設計競技にて最優秀賞を受賞、AGC Studioにて実寸大展示を行った。主な作品に「展示壁のある住居」「Christian Dada Singapore」ほか。著書に『海外で建築を仕事にする』(共著、学術出版社)。
いかにして"建築家に依頼すると高そう…"というイメージ払拭させるか?
「確かに、ハウスメーカーさんに依頼することで得られる安心感は分かります。ただ、ハウスメーカーさんが建てる住まいの場合、基本的にたくさんの選択肢のなかから絞り込んでいく"パターンオーダーメイド"になりますが、建築家に依頼すると"フルオーダーメイド"になります。しかも、トータルコストで比較したとき、ハウスメーカーさんよりも安価で抑えられるプランをご提案することができますし、限られた予算のなかで理想の住まいをつくりあげることも建築家の仕事なんです」と髙濱さんは語ります。
髙濱さんの熱心かつ誠実なプレゼンテーションを受け、迷った末に自分たちの住まいを託すことにしたBさんご夫妻。文字通り"フルオーダーメイドの住まい"をつくることになった。
「Bさんご夫妻からのご要望は"吹き抜けが欲しい""パブリックなところから2階に行ける"”キッチンや吹き抜けから子どもたちの様子が眺められるようにしたい""子どもが3人になったことを想定した住まい""本や書籍を収納できるプチ図書館が欲しい"といったものでした。全体的に、2人のお子さんのことを考えたご要望が多かったです」と髙濱さん。
B邸のプランを練りあげている過程においても、お子さんはどんどん成長する。ハウスメーカーは、はじめにすべての仕様を決めてから家をつくり、完成したらそこで終わり…というイメージがある。しかし、建築家が手掛けた住まいは、設計から完成するまでの工程はもちろん、その後も"家の主治医"として頼れる存在であることも大きな安心材料といえそうだ。
「2つの大きな壁」がもたらす効果。完全オーダーメイドだからこそ実現した住まい
B邸が建つ敷地は、ひな壇上に造成された傾斜地の一角、間口が狭く、奥行きが深い。また、この辺りは宅盤が道路に対してほぼ2階の高さにあり、敷地境界いっぱいに住宅を建てるため、塀をぐるりとまわし1階レベルに駐車場、その上に2階建ての計3階分の壁面が道路に迫っているケースが多い。そのため前面道路との関係性は乏しく、圧迫感を与えてしまっている。その点、B邸は2台分の車が横置きできるオープンな駐車スペースから階段を上がった先に玄関がある。
「お施主様の要望を実現するのと同時に、その住宅がどのように周辺環境と関係を結ぶかをいつも大事に考えます。今回B邸を設計するにあたり、通りへ圧迫感を与えず、なだらかにつながりつつもプライバシーを確保できる状態を考えたところから、2つの大きな壁のアイデアが生まれました。まず1つめは屋外の壁です。この壁は1.5階建ての高さにすることで擁壁による圧迫感を抑える役割を担うとともに、リビングの延長として、前庭空間を生み出す効果もあります。そして2つめは屋内の壁です。ダイニングとキッチン、そしてダイニングと子ども部屋を緩やかにつなぎつつ、常に家族のアクティビティの中心にある、拠りどころのような存在となることを意図しています」と髙濱さんは語る。
コストを抑えるため、極力シンプルな間取りにしたことで、開放感のある住まいが実現した。1階は玄関とリビングがあり、その奥にダイニング、キッチンと続き、敷地の一番奥にトイレ・洗面所・浴室がレイアウトされる。2階は、階段を上がった先から順に、子ども部屋、プチ図書館、クローゼット、Bさんご夫妻の寝室という構成になっている。
1階のキッチンからは、ダイニング、リビング、屋外にある前庭を見渡すことが可能だ。ダイニングとキッチンを仕切る"屋内の壁"が、生活感のあるものを隠す役割を担うだけでなく、B邸におけるアクセントとなっている。傾斜地にあるB邸の特性を巧みに活かし、リビングとダイニングにわずかな段差を設け、デッドスペースには収納棚が用意される。しかも、収納スペースと床の設置部分に敢えて"抜け"を設けるなど、さりげなく開放感のある空間となっている。2階にある本棚は"屋内の壁"の裏側につくられ、あくまでも自然に、まるで図書館にいるかのようなディスプレイを実現。"本や書籍を収納できるプチ図書館が欲しい"というBさんご夫妻のリクエストを見事に叶えたのだ。
「Bさんご夫妻と一緒に、一家のライフスタイルを詳細にイメージし、棚の寸法・幅から動線を含めたあらゆる"日常の暮らし"を想定してプランを練り上げました。その都度、施主様にとってベストのプランを考える”ことが、私たちのやりたいことなんです。また、階段状になっている家具の目立たないところや棚の中などは、Bさんご夫妻に塗装をお願いするなど、部分的にご協力いただいたことが、コストダウンにつながっています」と髙濱さんは語る。
ハウスメーカーか?それとも建築家か?どちらに依頼するのがベストか悩んだとき、それぞれのメリット・デメリットを把握して見極める必要がありそうだ。ハウスメーカーに依頼すると"何となく安心感がある"のは事実だろう。しかし、"自分たちだけの理想の住まいにとことん向き合ってくれる"という点においては、やはり建築家に依頼することに一日の長がある。それはなぜか?ハウスメーカーと比較して、1つの案件に対して向き合える時間が長いからだ。
注文住宅といえども、青天井の予算という人は限られている。施主が提示する限られた予算でベストな提案を練り上げるのも建築家の仕事だ。家づくりに悩んだとき、建築家に相談することで、それまで想像もつかなかったようなアイデアや構想が浮かぶこともある。さらに、髙濱さんのような女性建築家ならではの視点によるアドバイスもあるはずだ。住まいづくりは、家族にとって一生の思い出となるビックイベントだ。迷ったときは、ぜひ建築家にも相談してみて欲しい。事実、髙濱さんも"どこまでもおつきあいします"と力強く語ってくれている。
間取り図
基本データ
| 所在地 | 広島県 |
|---|---|
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 2000万円台 |
| 施主 | B邸 |
設計者情報

髙濱 史子
たかはま ふみこ
髙濱史子建築設計事務所
東京都 世田谷区
1979年生まれ。2003年京都大学卒業。東京大学大学院に進学、スイス連邦工科大学チューリヒ校留学、Christian Kerez、HHF Architectsでのインターンシップを経て2007年同大学院修士課程修了。2007年より2012年までHerzog & de Meuron勤務。2012年 +ft+/高濱史子建築設計事務所設立、神戸大学学術推進研究員。2013年-2015年東京大学特任研究員。2017年工学院大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師。2015年35歳以下の若手建築家によるガラス建築の設計競技にて最優秀賞を受賞、AGC Studioにて実寸大展示を行った。主な作品に「展示壁のある住居」「Christian Dada Singapore」ほか。著書に『海外で建築を仕事にする』(共著、学術出版社)。
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