岡山県西粟倉村、「百年の森林構想」に基づいて完成した、室内も屋外も木々に溢れたホテル「100年の森のホテルSHIORI」。設計を担当した建築家の大類さんは、ひとりでも大人数でもホテルステイが楽しめることはもちろん、非日常感を味わいながらゆったりとくつろげる空間をつくりあげた。
全景。切妻屋根が宿泊施設の建物。左端が共用棟。そこから時計回りに、C棟(1棟)、B(2棟)、A棟(3棟)。A棟の下に川が流れており、ホテルへは左下の橋を渡ってアプローチする。そのため、ホテル内は日常から一つ離れた世界という感覚が得られるよう計画した
北側高所から見た全景。手前3棟並ぶのはA棟。下を流れる川の向こうには山がそびえている。川が流れ、さらに南からの光を受け止めた山の木々が美しいことから、リビングからテラスまでを一体化させて外に出やすくし、存分に楽しめるように整えた
西側高所からの全景。左側に並ぶのはA棟、右に2つ並ぶ棟はB棟。収容人数は同じながら、大きな平屋のA棟に対して、B棟は高さを抑えたコンパクトな2階建て。B棟の2階からは、A棟からも見える美しい山が眺められる。場の持つイメージを踏まえ、宿泊施設は全て切妻屋根とした
共用棟。中央の扉が入口。1階は中央に設けたフロントより左側に宿泊者専用レストラン、右側に外来者向けのレストランがある。エリア分けることで、内部で宿泊者と外来者の動線がぶつからないよう考慮した
完成予想図。周りの山々は杉などの針葉樹が多いため、敷地内に植えた木は雰囲気の異なる広葉樹、さらに落葉しない常緑樹を選んだ。木々が成長してくれば、こんなにもさらに緑豊かな空間になる
宿泊者用レストラン個室は、高級感ある仕上げを取り入れた
外来者向けレストラン。テーブル間の天井にはロールカーテンを設置。テーブルの向きも変えられるおかげで、簡単にレイアウトが変更できる
A棟テラス。リビングの大きな開口からシームレスにつながり、室内も屋外もゆったりした感覚が得られる。川が流れる音も聞こえて気持ちがいい。写真右、木材の壁で囲っているのは浴室と中庭。向かい側からの視線を気にせずに外気浴が楽しめる
A棟。キングベッドの辺りから玄関方向を見渡す。ラグジュアリーなA棟は、ヒノキの床に加えて天井にもヒノキを張った。壁は漆喰の塗壁とし、木や自然素材の温もりが存分に感じられる空間をつくり上げた。薪ストーブで暖を取る、そのちょっとしたひと手間が贅沢な時間を演出する
玄関方向から全体を見渡す。玄関を入ると上質な素材にあふれた大空間が広がり、特別な時間の始まりを期待してしまう。A棟は、内装のタイルなどの色合いをすべて変えたという。「リピートでいらしたときに違うお部屋にお泊りいただくのもいいですね」と大類さん
B棟外観。村で推進している「百年の森林構想」の取り組みから、全棟の外壁は地域の木材を使用した。軒を深く出して外壁が受けるダメージをコントロールするなど、劣化の対応ももちろんしているが、実は木材はとても強く、素材自体がだめになることはほぼないとのこと
B棟1階リビングダイニング。2階までの吹き抜けによって開放感抜群の空間。A棟よりもカジュアルに仕上げたB棟は、グループでわいわいと楽しむのに向いている。雪が降るほど寒いという西粟倉村。大きな開口部は木製サッシを採用し、デザイン性と断熱性能を両立させた
B棟2階、メインベッドルーム。大人数での旅行では、LDKと寝室が分かれているとプライバシーも確保しやすくありがたい。吹き抜けを挟んだ壁面の窓からは、北側の美しい山が眺められる
C棟、共用リビング。仕事ができるカウンターやくつろげるソファ、テーブルなど、状況や気分に合わせて居場所を選択できる。カウンターの奥は個室への扉が並ぶ。低めの壁を配置し、さらに段差を付けることで、個室とパブリックスペース間での意識の切り替えを促している








