
3人の建築家のアイディアが結集!
斜面地で実現した理想の住まい
スキップフロアを採用し
1階と2階の空間をゆるやかに結ぶ
さっそくHさんと共にその土地に足を運んだatelier thuの3名。実際に見てみると、北側が斜面。この斜面の土砂を、フェンスのようなもので防いでいるという状態だった。「通常だと斜面側の土砂を擁壁で受けるのですが、そのためには造成が必要でした」。と、振り返る。
しかし、造成するとかなりコストがかかってしまうため、限られた予算内に収めるのは難しい…。どうするのが最善か3人でアイディアを出し合った結果、造成はせず、既存建物を解体して残された平地の部分に家を建てることに。さらに建物基礎を立ち上げて、北側の土砂を受けるというプランを考え出した。
ちなみにHさんの希望は、「ウッドデッキのある平屋」である。しかし、残された平地の面積を考えると、平屋では必要な居住スペースを確保するのが難しい。そこで思いついたのが、建物は2階建てにするものの、1階と2階とで空間が分断されないよう。スキップフロアで一体化するという方法だった。
「ロフトの寝室を元に、各場所の床レベルを変化させることで、外観は平屋のような建物になるよう、高さのボリュームを抑えていくことにしました」。と話すatelier thuの3名。こうして、フロアの高さに変化を付けた建物のイメージが出来上がったのだという。
もともと敷地は小高い丘の中腹で、南側の大半が傾斜地。敷地の北側には小さな緑地が残っていたこともあり、建物を斜面に沿うようにつくることで、北側の森と南側の斜面が家の空間を通してつながり、豊かな空間ができるのではと考えたのだそう。3人が思い描いていたのは、斜面をデメリットと考えず、土地を最大限に生かした住まい。そのゴールに向かって3人の英知が結集し、H邸はいよいよ完成を迎えることとなる
3人でコンペをするように
アイディアを出し合い提案
1階に降りると、そこにはリビングダイニングとキッチン、そして水回りが。リビングダイニングは、南側の開口部や寝室のトップライトから太陽光が降り注ぐ、とても明るい空間だ。キッチンに立った時に南側の丘を望めるよう目線の高さを考えて設計されており、住宅地であるにもかかわらず、森の中にいるような気分を味わうことができる。
このように開いた空間に対し、クローゼットやお風呂など外に開かない空間は、道路側に配置。プライベートな部分は外の視線などが気にならないよう、細やかに配慮されている。
実際にこの家に住み始めたHさんからは、「休みの日の朝には鳥や草木の揺れる音などが聴こえてきて、とても癒されます。また、高さを抑えた美しい外観にもとても満足しています」。と喜びの声が届いているそう。また、「外観や内装は木のみで作られているので、これからの経年変化を楽しみたいと思います」。とも話されているという。
これに対し、「私たちも5年後、10年後を見て設計しているので、経年して家が土地になじんでゆく姿をお客様に楽しんでほしいですね」と話すatelier thuの3名。木材の色が変わったり、生活感が出てきたり…。これからの変化がとても楽しみだという。
傾斜地という課題はあったものの、それをものともせず、みごとにHさんの理想通りの住まいをつくりあげた、坪井さん、細貝さん、上田さん。最後に、3人でプランニングすることの良さはどこにあるのかを尋ねてみたところ、こんな答えが返って来た。
「アイディアや知識が3倍になることですね。もともと3人とも毛色が違う建築事務所に勤めていたので、それぞれが違うアプローチで提案でき、土地の可能性を最大限に探ることができたのだと思います」。
まるで、3人の設計者がコンペをするように、プランを練り上げていったというatelier thu。3人の個性豊かな建築家たちの、今後のさらなる活躍が楽しみだ。
間取り図
基本データ
| 作品名 | Sou |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県生駒市 |
| 敷地面積 | 274.59㎡ |
| 延床面積 | 112.61㎡ |
| 家族構成 | 夫婦 |
| 予算 | 2000万円台 |
設計者情報
この建築家が建てた家
この実例を見た人はこちらも読んでいます

もはや建築物ではなくアート。約200㎡のマンションを美しくリノベーション
長い海外生活を経た後に日本で暮らしているという依頼主のAさん。生活の基盤を日本国内に置くすることが決まり、それを機に、現在の住まいであるマンションのリノベーションを決意。そんな、海外経験が豊富なAさんが選んだパートナーは、STAR(有限会社エスティエイアール)代表の佐竹永太郎氏でした。Aさんが思い描くハイセンスな世界観を見事に具現化した住まいを紹介します。

ピアノを楽しみ、お昼寝も。家族をつなぐ吹抜けの広い土間
ハウスメーカーとの打ち合わせで「ピアノの部屋が欲しい」と要望したら、ピアノがぎりぎり入る小さな部屋を提示され、しっくりこなかったSさん。新たに相談を受けた建築家の松岡淳さんが提案したのは、なんとピアノを土間で楽しむという斬新なアイデアだった。しかもこの土間には、ほかにもさまざまな役割があるという。S邸の象徴的な空間となった大きな土間の魅力とは?

施主に寄り添いじっくりと下ごしらえ 自然と人に生かされて暮らす、大人の住まい
長く都会に住み続けてきた施主が、自分らしく晩年を過ごす家を求め3年の歳月を過ごした中、出会ったのが市中山居の増木奈央子さん。施主とじっくりと寄り添い資金計画や土地探しという「下ごしらえ」から、対話を重ね出来上がった家は、施主が「不満に感じる点が1つもない」と言い切るほどの、大人の住まいでした。

施主と建築家の切妻屋根への想いが結実 水平の軒がつくる凛とした佇まいの家
この家は、切妻屋根の家を熱望する施主と、切妻屋根の美しさに魅了された建築家の出会いによって誕生した。「平成29年度松本市景観賞 建築物・工作物部門賞」を受賞したこの家は、数多くの独創的なアイデアであふれている。施主の要望をすべて叶え、より快適に過ごすための提案も組み込まれたこの家の誕生秘話に迫る。

多趣味を受けとめるナチュラル空間!安心快適も実現した秘密とは
ビルトインガレージ、緑豊かなウッドテラス、パン台のある広々キッチン……。多趣味なNさん夫妻のために建築家の長谷山泰三さんがつくったのは、無垢材を贅沢に使った明るく心地よい住まい。空間の魅力だけでなく、安心・快適な性能も併せ持つ心強い家だ。

正面は「田」の字形のコンクリート外壁。防火地域ながらも、外壁の安心に囲まれて家族の将来を見守り続ける木造の家
20年~30年後、50年後、100年後の未来を見据え、家族構成の変化や、その時々に住まう人のライフスタイル、将来的なリノベーションなども考慮して設計している「裕建築計画」の浅井さん。キーワードは「長く住み継げる」&「ライフスタイルの変化に順応できる」家。今回紹介するK様邸は名古屋の商業地、防火地域にあり、難しい諸条件を斬新な発想で解決して、末永く住み継いでもらえる住まいだ。

建売住宅と注文住宅の”良いとこどり”、第三の家づくりとは!?
家を建てるときに、たいていの人はハウスメーカーや工務店に依頼をします。こだわりの注文住宅であっても、デベロッパーができる範囲で対応したり、工務店の営業マンや社長と話しをしながらプランを立てていく人が多いものです。ですが、あなたのこだわりを建築家が受け取り、直接反映する家づくりができるとしたら、それが最高ですよね。設計のプロ、建築家大川さんの新たな取り組みを紹介します。

土地の特徴に対する最適解として誕生した 駐車場まで伸びる大屋根が目を引く邸宅
大分県宇佐市に、とても特徴的な邸宅が完成した。目の前には公園や田畑が広がり、背後には1m高い地盤に造成された住宅街が広がっている。いわば自然と住宅地が切り替わる場所に建てられたこの作品は、土地の特徴をとらえ、その最適解を見つけ、お施主様の要望を低コストで実現した力作だ。その詳細をご紹介しよう。

三方を住宅に囲まれた密集地なのに明るい! 光溜まりがもたらした寛ぎを感じられる住まい
敷地の三方向を隣家で囲まれた住宅密集地。そこに「明るく清潔感のある家を建てたい」と施主のOさんから相談を受けたのは、光や風を上手に取り入れ快適な住まいを創ることに定評のある、m+h(エムアンドエイチ)建築設計スタジオの林さん。林さんがO邸に施した秘策は、“光溜まり”でした。






