自宅を建て替え、一緒に暮らすことにしたお施主のお母さまと息子さん夫妻。建築家の平井さんは、今までのスタイルを守りながら1つの家で暮らすためには、適切な距離を保つことが大切と語る。平井さんは家族の距離、テナントとの距離、そして街との距離が抜群のバランスで保たれる家をつくりあげた。
【特記事項】本作品は、木島千嘉建築設計事務所と共同設計
2階、水回り空間へ続くドアの前から玄関方向を見る。家の奥から玄関まで一直線に視線が抜け、また効果的な窓の配置により外も見える。日光も豊かに入り、木目が感じられる床や建具と相まって温かな雰囲気の2階。外断熱のため快適温度が保ちやすく、一日気持ちよく過ごせる
2階、お母さまの寝室。敷地の関係で整形になりづらい部分を逆に生かし、視線の抜けをつくった。「建て替えを機に荷物を減らすといっても思い出の品など、限界がありますよね」と平井さん。お母さまの思い出の品もしまえるよう、壁一面に収納棚を造作した
3階、リビングから書斎、寝室方向を見る。木造耐火住宅として設計していたときのプランを残し、勾配天井をそのままコンクリート打ち放しで実現した。天井には照明を極力設けず、ツルツルしたコンクリート面に照明を当て、その反射で室内を照らしている
2階テラス。ダイニングと一続きにしているため、自然な流れでテラスに出られる。正面の和室は小上がりのようになっており、段差を利用して縁側のようにつかってもよいとのこと。テラスには屋根があり、雨の日も洗濯物が干せるのが便利
和室の吹き抜けを見上げる。ハイサイドから光が入り和室はいつも明るい。3階部分は抜けておりお互いに吹き抜けを通して気配が感じられるのに加え、空気が循環し、熱環境にもよい効果を与えている。画像左、窓を装飾する欄間や床柱は以前の家のものを引き継いだ
3階、リビングから寝室方向を眺める。リビングと画像左の書斎は床レベルを変え、感覚的に空間を区切った。リビングから見て距離や方向が違う窓が複数開口され、細かく空間を区切っているのに閉塞感や圧迫感がない。画像中央、手洗いの奥はトイレ
3階寝室からリビング方向も視線が抜ける窓を設けた。リビングには外を眺めながら作業できるテーブルを配置
3階リビングから、書斎、吹き抜けを見る。コンクリート打ち放しの勾配天井と、吹き抜けのラインが美しい。リビングは左のカウンターにテレビなどを配置。右の書斎は壁に向かってテーブルがあるため視線の方向が変わり、仕事中など夫婦で感覚的な距離をとることができる
撮影:淺川 敏