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世界的なアーチストの家に学ぶ?!真似したい住みやすさとは

 目指したのは、いい絵が描ける仕事場と快適に暮らせる住居の両立。住まい手への丁寧な心遣いが、画家の創作活動を支える上質なアトリエ住宅を生みだしました。

創造性を支える、感性のままの快適な空間とアトリエの機能性

 ニューヨークのアパート最上階に住居を兼ねたアトリエを構え、世界で活躍する女流画家。施主であるS様が日本での家づくりを依頼したのは、たまたま生家の隣りの住宅設計を手がけていた酒井正人さんだった。「日本にもアトリエを兼ねた住まいを」と、都内の生家の建て替えを検討していたS様の目にとまったのが、隣地で建築中のRC住宅。モダンなデザインが気に入り、手掛けているのが酒井さんだということを工事挨拶状で知ったS様は、添えられた名刺の連絡先に電話。自邸の建て替えについて相談し、とんとん拍子で依頼先は酒井さんに決まったという。


 S様が望んだのは、絵を描く環境が整った快適な住まい。大作も制作できる大きな壁面スペースや高い天井など、アトリエ機能を満たしていることはもちろんだが、画家の創造性を支える快適な住まい。心がやすらぐ、友人や家族と交流できる、片付けやすく整った空間であることも求められた。

 築50年の木造住宅から、コンクリート打ちっぱなしのシンプルモダンなRC住宅へ生まれ変わった新居は2階建て。1階はホームパーティも開ける大空間のLDKや和室など。アトリエは2階にあり、約46畳、天井高は3・8mと十分な広さが確保されている。南側には左右幅8mの絵画制作用の大壁面、対となる北側には3m四方の大開口とスリット窓をもうけ、柔らかな自然光がアトリエを満たす。大きなキャンバスを搬出入するための運搬装置も吹き抜けに備えつけた。


 ベストな住まいを生み出すためにヒアリングを重視する酒井さんは、ニューヨークまでS様のアパートを訪ね、空間やモノがどう使われているか見てきたという。そこではさまざまなサイズが入り混じったキャンバスや画材、家具が混在し、S様はもっと整然とした空間での暮らしを望んでいることがわかった。「話を聞いていると暮らし方やモノの使い方のクセ、悩みがわかってきます。そこから提案につなげていきました」。

 たとえば、新居のアトリエに設置した大きなオープン棚は、高さと奥行きを最大サイズのキャンバスに合わせることで大中小のキャンバスをひとまとめに片付けやすく。後付けでロールスクリーンをつければすっきり目隠しもできる。また、アトリエの壁際に並べたユニット式の可動ローテーブルは画材を置く棚でありながら、来客時などはスツールとしても使える。多目的に使える家具を取り入れることで余計なモノを増やさずに暮らせるという提案だ。

 と同時に、ニューヨークのアトリエにある仮眠スペースを念頭に新居のアトリエにもロフトを設けたり、バス・トイレ・洗面を欧米風のオールインワンタイプにするなど、ニューヨークと東京を行き来するS様の生活ギャップを埋める配慮も設計に取り入れた。一方で、日本ならではの住まいを楽しむ空間として、和室は茶室風のしつらえに。家族の思い出がつまった庭を眺める和室はS様のインスピレーションをはぐくむやすらぎの場になっているようだ。


 いい絵が描ける仕事場と快適に暮らせる住居をどう両立するか。住まい手への細やかな心遣いが画家の創造性を支える居心地のよいアトリエ住宅として実を結んだ。
  • アトリエは大きな壁面スペースと十分な天井高を確保。左側のキャンバス収納用のオープン棚、正面の画材を並べるための可動式ローテーブルなど、使いやすさを考えた収納スタイルも提案。照明は可動式のスポットライトに

  • ホームパーティも開く1階のLDKはゆったり広くとられている。キッチンはカウンターと大容量のスライド収納を壁面にレイアウトし、スペース効率を上げた。カッシーナのダイニングセットは酒井さんがS様とショールームを巡ってセレクト

1年中、光がやわらかく入ってくる北側に窓を開く

 アトリエは北側に窓を設けた。一般的に北窓というと暗いというイメージで敬遠されがちだが、「それはじつは誤解なんです」と酒井さん。「大きな開口がとれるなら北窓はむしろおすすめ。南向きに大きな窓をとると、夏場は強い直射日光が照りつけて室内が暑くなりすぎてしまうケースもありますが、北からの光は季節や時間ごとの影響をうけにくく、安定した光が得られるんです」。北窓から入るおだやかな光は絵画制作にも適し、日没までアトリエを満たすほどよい明るさはS様にも喜ばれているという。
  • 2階アトリエへと続く、上昇感のある階段

お家のデータ

所在地
東京都
家族構成
一人暮らし
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