和モダンな雰囲気を持つ家を新築したいと考えていたお施主さま。依頼を決めたのはこれまでも多くの和の家を手掛けた、建築家の湊さんだ。要望を芯から理解し、デザインが洗練されているだけでなく、心地よく風が抜ける光に満ちた家を実現。鍵となったのは通り土間と深い軒、そして吹き抜けだという。
この建築家に外観。シンプルな切妻屋根と前面に出た下屋が品よく収まる、和モダンな佇まいの家。道路に面しているため、庭、縁側、室内に入って土間と間に複数の要素を入れて距離を取り、室内が見えすぎないようにした
1階土間を中心に、右に縁側、左にLDK。土間の奥にはキッチンや水回りがある。1階は仕切りや建具を可能な限り省きワンルームのように計画。そのうえ土間部分は2階までの吹き抜けとし、家全体を緩やかに繋げた。視線が外や上に伸び、実際よりも広く感じられる
1階、土間からLDK、和室(左)を見る。土間の背面は縁側へ続く窓があり大きく開口している。対面にも窓(画像中央奥)を設け、家の中を気持ちよく風が抜けるようにした。和室は生活に馴染むスタイルながら地窓、障子、山葭の天井など本格的な設え
キッチンから1階を見渡す。土間を挟んでリビングダイニング(右)と縁側(左)、和室(奥)にそれぞれ段差を設け、居場所を多くした。土間の奥、左側には玄関がある。和室は客間としても使用するため、入ってまっすぐアクセスできる位置に計画した
南西側から見た外観。画像左、砂利敷きの部分は駐車場。家の外壁にセンサー付きのライトも設置した
駐車場から縁側、庭を見る。使い勝手を考え、縁側はゆったりとした幅で計画。軒は縁側よりもさらに張り出しており、常に窓を開放して暮らせる。雨どいは、雨が落ちる様子も見たいとの要望から玄関部分のみ設けた。雨が落ちる下は排水を考慮しマスをつくり、その中を砂利敷きにした
縁側。軒を深く出し、さらに高さを抑えて日射をコントロールした。窓を開けて生活できるため、より一層内部と外部の繋がりがあいまいになり、風や光、雨までも感じながら心地よく暮らせる
1階、リビングから縁側を見る。縁側に出る窓は土間からもリビングからも段差を上がった上に計画。おかげで、窓からの景色がフレーミングされ、より印象的に見えるようになった
2階、ワークスペース。家族がそれぞれ集中したいときにこの場所で過ごすという。LDKから離れ、しかし繋がりは感じられる場所に、と吹き抜けに面して計画した。窓から光が入り、庭も見えるので雰囲気よく過ごせる。壁面には棚を設け、作業に必要なものを置いておけるようにした
土間から縁側、リビングダイニング、和室、吹き抜けを見る。中央上、2階に設けられた小窓はご主人の書斎のもの。施工途中で希望があったが、夫妻の寝室のクローゼットを拡張する形で実現した。「できる限り、できませんとは言いたくありませんから」と湊さん
外観。内部は照明が多く設置されているわけではないが、吹き抜けやスケルトン階段のおかげで光が回り明るい。縁側の窓は障子を閉めることもできる
撮影:ブリッツスタジオ 石井紀久