近隣に家が増えても環境を変えずに暮らせる
壁に囲まれた中庭がある、明るい家

新規分譲地に自宅を建てるにあたり、考慮すべきなのはこれから家が増え環境が変わる可能性があること。お施主さまが要望されたプライバシー性や開放感を実現するため、建築家の池田さんが出した答えは「中庭を壁で囲うこと」だった。完成したのは壁の存在を忘れてしまうほど明るく、風通しのいい家だ。

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竣工後も周辺に家が増える新規分譲地。
変わらぬプライバシー性を確保した中庭

そろそろ自宅を新築したいと情報を集めていたお施主さま。Instagramで「デザインがおしゃれ」と気になっていた池田設計室の完成見学会に出向いたことが、この家を設計した建築家の池田卓也さんとの出会いだった。実際に会って人柄も素敵だと感じ、依頼を決めたそう。

希望したのは、大開口と吹き抜けがある空間と、インナーガレージ、プライバシー性の高い中庭がある家。課題もあった。家を建てるにあたり新規分譲地を購入したため、近隣に多くの家が竣工後に建つことになる。「家のデザインはもちろん、他の家が建ったときに日射や視線などの影響を受けにくくすることが大切だと考えました」と池田さん。

そこで、中庭は家の裏側に配置。さらに壁面で囲い、コートハウス風にした。おかげで中庭でも、中庭と接するLDKでも、外からの視線を一切気にせず過ごせる。さらに、リビングは2階までの吹き抜けとし、中庭に繋がる窓をダイナミックに開口にすることで要望を叶えた。

インナーガレージは道路側に配置。中庭と裏表になるように計画したことで、双方ゆとりあるスペースとなった。ガレージから直接中庭の一角に置いた外部収納にもアクセスでき、使い勝手もよい。

数多く分譲された中から、お施主さまは道路を進んだ突き当りの区画を選ばれた。この「中庭と吹き抜けのあるガレージハウス」は、シンプルなフォルムであるのに、素材選びや仕上げから家そのものに表情がある。道路を進むと正面に見えてくるのがこんな家だったら、周辺一帯の雰囲気がよりよくなって嬉しいと感じ、近くの区画を選ぶ人もいるかもしれない。お施主さまがイメージしていた「おしゃれ」を、池田さんは的確に表現してみせた。
  • 中庭は壁で囲い、高いプライバシー性を確保。太陽光パネルが設置され今後も家が建たないと見込まれた東側に窓を設け、閉塞感をなくした。南からの光が豊かに入り、風も抜けるおかげで、居心地は抜群。床面は木目調のタイルを採用。水に強くメンテナンスがしやすいメリットがある

    中庭は壁で囲い、高いプライバシー性を確保。太陽光パネルが設置され今後も家が建たないと見込まれた東側に窓を設け、閉塞感をなくした。南からの光が豊かに入り、風も抜けるおかげで、居心地は抜群。床面は木目調のタイルを採用。水に強くメンテナンスがしやすいメリットがある

  • 玄関。画像奥、一段床を上げた部分は靴置き兼ベンチ。正面右側の扉は収納。鞄などがしまえる

    玄関。画像奥、一段床を上げた部分は靴置き兼ベンチ。正面右側の扉は収納。鞄などがしまえる

外部からの視線を遮りながら日射を確保。
室内外をひとつに繋げ、開放的な空間を実現

この家の特徴のひとつである中庭。壁に囲まれたコートハウス風というと、閉鎖的な空間を思い浮かべるかもしれないが、それは違う。南東の角に位置する中庭は、東側が恒久的に開けていることもあり壁があっても豊かに日が射し込む。あえてリビングとの窓の部分には2mの軒を出さなくては日射のコントロールが難しいほどだといえば、どれだけさんさんと明るいかがわかるだろう。

加えて、東面に窓を一つ設けたことで、風が抜けるようになった。「東の窓からは遠くに川も見えてきれいなんですよ」と池田さん。視線が伸び、自然の風も感じられる。視線を気にせず、存分に外部の心地よさは感じられる最高の中庭ができた。

中庭の床には、お施主さまが自ら探し見つけた木目調のタイルを入れた。掃除やメンテのしやすさも課題だった今回の家づくり。時を経ても傷みにくいなど、メンテナンスのしやすさはやはり魅力だという。

室内はLDKとフリースペースが一続きになった広々空間。中庭のタイルの色に似た床材を用いているため、庭と室内は一体化している。さらに、先述の通りリビングは2階までの吹き抜けで天井が高く、開放感もばっちり。やはり2階の高さまで設けられた中庭への大開口へ目を向ければ空が見えるが、近隣からの視線は感じない。軒によって日射もコントロールし、お施主さまの「カーテンなしで暮らしたい」という理想を実現している。

2階は寝室や子ども部屋など、個室を集めた。吹き抜けに面してワークスペースを計画したおかげで、2階まで縦の繋がりもできた。お子さまが大きくなったら、子ども部屋の中ではなくワークスペースで勉強をしてもいい、と池田さん。高さはあれど、顔も見えるためLDKの一角で過ごしているような気分になれるだろう。開放的な暮らしを叶えながら大らかに家を、家族を繋いだ素敵なプランニングだ。
  • 1階リビングから家を見渡す。LDKとフリールーム、2階のワークスペースまでもが一体化した空間は開放感があり、広々。白と木目の対比も美しく、温かみがある

    1階リビングから家を見渡す。LDKとフリールーム、2階のワークスペースまでもが一体化した空間は開放感があり、広々。白と木目の対比も美しく、温かみがある

  • ダイニングから1階を見る。キッチンからはパントリーを抜け洗面所まで続く動線がある。その奥、リビング側はホールを抜けてリビングへ進む動線が、背後には脱衣室とウォークインクローゼットが繋がる動線が平行に走っており、流れるように移動できる

    ダイニングから1階を見る。キッチンからはパントリーを抜け洗面所まで続く動線がある。その奥、リビング側はホールを抜けてリビングへ進む動線が、背後には脱衣室とウォークインクローゼットが繋がる動線が平行に走っており、流れるように移動できる

  • 1階キッチン(左)、ダイニング(右)。ダイニングテーブルは別途90cm拡張できる小さなテーブルも造作。画像右、テレビカウンターが壁いっぱいに伸びているおかげで、大人数でも座る場所には困らない

    1階キッチン(左)、ダイニング(右)。ダイニングテーブルは別途90cm拡張できる小さなテーブルも造作。画像右、テレビカウンターが壁いっぱいに伸びているおかげで、大人数でも座る場所には困らない

考え抜かれたうえでのシンプルさだからこそ
「ちょうどいい家」ができる

お施主さまも共感したという、池田さんの家づくりに対する「シンプルだけどちょうどいい建築」という理念。デザインと使い勝手、どちらにも手を抜かずに突き詰めるからこそできることだ。

例えば動線。この家には玄関からLDKへ進む動線が3本あり、平行に直線で走っている。生活する順番を考えながらつくったというこの動線。それぞれ回遊性もあるおかげで、キッチン、パントリー、水回りと、何がしたくてどこへ向かいたいときでも、特に何も考えなくても歩いていればたどり着ける。また、帰宅時にはまず手を洗い、それから荷物を置くのか、着替えるのかなど目的によって最短距離を選べるという。

用途を限定しない目的で計画したフリールームは、LDKに付随する和室のようなイメージだと池田さん。リビング側の角に柱を立て、2つの壁面をパーテーションで仕切った。開放すれば壁がなくなり、リビングとの境界線もなくなる。閉じれば完全なる個室になるため、現在は客間とするほか、普段はお子さまのスペースとして使われているのだとか。お施主さまは将来はここを寝室とし、1階のみで生活するようにしてもよいと思われているとのこと。

家具は可能な限り造作とするのも池田さんのプランニングらしい部分だ。キッチンと一体化したダイニングテーブルは、カウンターが玄関ホールまで伸び、ニッチや手すりの役目を担っている部分もある。段差なくまっすぐ伸びる姿が美しい。

また、ダイニングテーブルと同じ幅でさらに90cm延長できる小さなテーブルも造作した。リビングの壁沿いに造り付けられたテレビカウンターはやはりダイニングまで伸びており、椅子代わりになるため大人数が集うときでも安心だ。

中庭のタイルから室内の床、家具まで素材や色調が選び抜かれ、全体の調和が取れているのも造作家具を多用したからこそ。それだけではない。白と木目ですっきりした雰囲気の室内は、それぞれの場所で壁面の白と木目の比率を考え、まとめた結果として実現したものだ。

「本当に住みやすくて、生活が充実しています」とお施主さま。ともに家づくりをして、あらためて池田さんの家づくりに対する情熱に心を打たれたという。さらに、親しみやすくストレスなく相談することができ、意向を汲み取ってできる限り希望を叶えてくれると大変お喜びになっている。

真摯に向き合い、情熱をもって考え抜かれたシンプルだからこそ、池田さんがつくる家は「ちょうどいい」のだ。
  • 2階ワークスペース。画像左の扉は寝室のもの。寝室の手前には子ども室を計画。電源や、カウンター下に十分な収納も用意し使い勝手が良い。将来はお子さまの勉強スペースとしてもよいでしょう、と池田さん。下からの声も届き、リビングにいるような感覚で勉強できる

    2階ワークスペース。画像左の扉は寝室のもの。寝室の手前には子ども室を計画。電源や、カウンター下に十分な収納も用意し使い勝手が良い。将来はお子さまの勉強スペースとしてもよいでしょう、と池田さん。下からの声も届き、リビングにいるような感覚で勉強できる

  • 1階フリールーム。画面左側にあるリビングとの仕切りには天井から吊るパーテーションを採用。床面のレール不要で、開放時の一体感を高めた。間接照明をラインのように入れ、明るさを確保しながら天井や壁をすっきりと見せた

    1階フリールーム。画面左側にあるリビングとの仕切りには天井から吊るパーテーションを採用。床面のレール不要で、開放時の一体感を高めた。間接照明をラインのように入れ、明るさを確保しながら天井や壁をすっきりと見せた

  • 1階フリールーム。パーテーションを閉じると完全なる個室に変化する。現在はご両親がいらしたときの客間にもされているそう

    1階フリールーム。パーテーションを閉じると完全なる個室に変化する。現在はご両親がいらしたときの客間にもされているそう

  • 2階寝室。1階よりも天井が低く、寝室らしい落ち着きがある。壁の色もグレーを選び、一層くつろげる空間をつくりあげた

    2階寝室。1階よりも天井が低く、寝室らしい落ち着きがある。壁の色もグレーを選び、一層くつろげる空間をつくりあげた

  • 2階子ども部屋。画面左の棚とハンガーラックは隣の部屋と互い違いに計画。シンプルな室内の構成だからこそ、ライフスタイルの変化にも対応できる

    2階子ども部屋。画面左の棚とハンガーラックは隣の部屋と互い違いに計画。シンプルな室内の構成だからこそ、ライフスタイルの変化にも対応できる

間取り図

  • 1F 平面図

  • 2F 平面図

基本データ

作品名
中庭と吹き抜けのあるガレージハウス
施主
F邸
所在地
香川県高松市
家族構成
夫婦+子供1人
敷地面積
241.07㎡
延床面積
166.07㎡
予 算
4000万円台