「家は一生に一度の買い物」といわれるなか、同じ建築家に再び依頼をする施主は極めて稀だろう。思いがけない展開で二軒目の家づくりに踏み切ったMさんが選んだのは、10年前に一軒目を手がけたhaの保坂裕信さんだった。しかし順調に進むかと思われたプロジェクトに突如降りかかった予算の大幅削減。一時は実現が危ぶまれながらも、明るく開放的な理想の住まいへと昇華させた保坂さんの真価に迫る。
この建築家に洗面所とバスルームはシンプルなホテルライク仕様。女性が多いため長いシンクに2つの水栓があるのもうれしい。長いカウンターは、洗濯物を畳むなどの作業にも便利だ。
階段を上った2階は閉じられた印象の外観からは想像もつかない光景が広がる。思わず「おおー」と声をあげてしまいそうなほど明るく開放的な空間。
吹き抜け上部の四角いフレームは、構造的な役割を担うと同時に、この住まいのデザインアイデンティティでもあるという。
テラスは、洗濯物を干したり観葉植物を育てる場としての実用性と、道路側から適度な距離をとるためのバッファゾーンとしても機能する。プライバシーを守りながらも陽の光が入るよう、大きな開口と吹き抜けとした。
2列型のレイアウトはコストを抑えつつデザインの統一を図るため、既製品と造作部材をハイブリッドさせた。
ピクチャーウインドウの先には、青空が広がり、「大空がつかまえられそう」なほど。階段の一段目は、テレビ台の役割を果たすため録画機器などが収納できる。赤外線が通過できるよう、一部をガラリとした。
3階の吹き抜けからリビングを見下ろす。ピクチャーウインドウは、近隣からの視線が直接入らないため、夜でのオープンで過ごせるという。夏場は、ロールスクリーンで日差しをカットすることも可能。
3階は双子のお子さんたちの個室が左右に並ぶ。壁が四角く切り取られ、その先の景色を楽しむことができる。
四角く切り取られた壁の向こうに、さらに四角いフレームが重なって見える構成が印象的。開口の連続が生み出すリズムが、空間に豊かな表情を与えている
室内の開口から、屋外の開口へと連なる様子は、額縁で景色を切り取ったかのよう。
約22畳という実寸以上の広がりを感じるのは、吹き抜けがもたらす縦方向の伸びやかさと、ピクチャーウインドウが生み出す視線の抜けによるもの。