
LDK36.8畳、リビング21.4畳、吹抜け5.5m
大空間と巨大な壁が目を引く、木造住宅
ほぼお任せなのに、ファーストプランでOK
お施主様が納得する訳は、質問内容にあった
お施主様からの要望は少なく、いわゆる“ほぼお任せ”状態。
あえて挙げると、
・広いLDK
・2台止められる広い駐車場
・妻用の広いクローゼット
くらいだったそうだ。
この作品の敷地は300㎡以上の広さがあり、しかも敷地内がひな壇で奥側が高くなっていた。このように敷地が広く、高低差があるような条件下で、ほぼお任せの家を作る難易度は、建築家にとっては高いものとなる。
しかしこの作品では、最初に出したプランがほぼOKとなった。なぜこのように、お施主様が納得できるプランを生みだすことができるのか。田井さんにその理由を聞いた。
「普段から、お施主様へのヒアリングは生活の様子や時間ごとの動線をメインに聞いています。間取りは積極的に聞きませんね」。
間取りを聞かない理由は、パズルゲームのようになってしまい、建築家が関与する意味が薄れてしまうと考えるからだという。
一方で、生活の様子や時間ごとの動線は、お施主様が新しい家で過ごす時の条件となる。だからこそ、詳しくヒアリングをするそうだ。
「最初は生活動線を聞きます。平日と休日別に、家の中のどこで何をしているかを細かく聞くことから始めます」。
「また、現在住んでいる家の嫌なところや不便な点を3つ挙げてもらえるようにヒアリングしています」。
嫌なことや不便なことを3つ聞くことで、現在の不満点がわかります。つまり、その人にとっての障害をとり除き、マイナスがない状態から提案を始められるのです。
今回の要望も、言い換えればヒアリング時点での不満から導き出したものだそうだ。
もう少し広いリビングがいい。もう少しゆとりのある駐車場がいい。もう少しゆとりを持って服を収納したい。こうした不満を、要望として明らかにしたとも言える。
「お施主様が言語化できない、生活スタイルなどの非言語化領域を形にする。無意識に感じているものを要望として汲み取り、可視化する。そして解決できる提案につなげる。それがヒアリングのポイントだと思っています」。
お施主様が自分でも気づいていない好みを、要望として可視化することができるからこそ、最初のプランから満足できるものが提案できるのだろう。
木造でLDK36.8畳、駐車場の間口は7.3m
毎日快適に、美しく生活できる工夫の数々
一般的には鉄骨造やコンクリート造の選択となるが、特殊なSE工法という木造とすることとした。高い耐震性と開放的な空間を、費用対効果高く両立できるからだ。
その結果、木造でもLDK36.8畳・リビング21.4畳・5.5mの吹き抜けを持つ大空間を確保することに成功。駐車場の間口も7.3mとし、大型の車2台が楽に出入りできるものとした。
しかしこれだけでは、お施主様の要望をなぞっただけで不十分だと田井さんは語った。
「お施主様の要望を実現するだけでは不十分だと私は考えます。そこに要望以外の工夫や提案を加えることが、建築家の存在意義だと思うのです」。
この作品の建物内に込められている、要望を超えた工夫の一部をご紹介しよう。
まずはリビングから。吹き抜けに開口を大きく設けて陽光をたっぷりと取り入れる一方、窓の上に庇を設けて光のコントロールもおこなった。パッシブデザインに配慮した工夫だ。
また、吹き抜けを囲う2階の廊下と階段は、ガラス面だけで自立する手摺を採用。柱がなく、開放性を高めて影となる部分を作らないように工夫されている。
また、駐車場から玄関に設けられたシューズインクロークを抜け、玄関ホールからリビングへ移動する動線を綿密に計算。キッチンにはパントリーを配置し、ダイニングには壁面収納を設けた。
壁面収納がリビングでなくダイニングにあるのは、ダイニングで過ごす時間が一番長いことがヒアリングでわかったからだ。そのため、ウッドデッキもリビングではなく、ダイニングに接する場所に設置されている。
妻からは当初、広めのウォークインクローゼットを要望されていた。しかしヒアリングの結果、さらに広く充実したエリアが良いのではと田井さんが判断。いっそのこと衣装部屋を作ることを提案し、実現した。
こうした工夫の数々は、“小さな子どもがいる家庭でも美しく住んでほしい”という田井さんの想いから誕生したものだ。だから生活シーンに合わせ、各所に生活感の出ない工夫が散りばめられている。
この作品の各所には、考えつくされた工夫が他にも多数ある。ぜひ写真の説明文をご参照いただきたい。
住み始めてからわかる、住宅の真価
長く住んでも美観を保てる工夫とは
もっとも特徴的なのは、大きな外壁だ。重厚で美しい外観だが、これは単にデザイン面から考えられたものではない。
田井さんが最初に現地を見た時、せっかく大きな区画の美しい住宅街なのに、どの家も道路から室内が見えすぎることが気になったそうだ。
この敷地は土地の奥(南側)が高くなっており、道路は北側にあるので駐車場や玄関も北側に配置されることになる。
そこで玄関と道路の間に、大きな外壁を設けることとした。これにより玄関や玄関前のホールは道路から見えず、室内も見ることができなくなる。
さらにこの外壁は、他の機能も兼ねている。駐車場の壁となるだけでなく、ワクワクする空間を演出するものでもあるのだ。
先述のとおり、敷地の奥側が高くなっているため、建物や玄関扉は道路から1mほど高い位置に配置せざるを得なかった。しかし毎日の生活で、単純に玄関までの階段を1m登って降りるのは、あまり楽しいものではない。
そこで高い壁を作り、壁と建物の間に階段を設けた。単なる階段ではなく、外部からプライベート空間に切り替わるワクワクする場所とすることに成功したのだ。当然、階段の下から見上げた時のシンボルツリーの見え方や照明の当たり方も計算されている。
さらにこの外壁と階段の奥に、高低差を利用して自転車の駐輪場を設けた。壁と天井に囲まれているので、強い風雨でも問題ない。加えて、どうしても生活感が出てしまう自転車を、外からまったく見えない場所に置くことができる。
まさに、“長く住んでも美観を保つことができる工夫”のひとつだと言えるだろう。
田井さんは、このような特徴的な外観のために、家の内側のプランを変更することはないという。中のプランを突き詰めた結果が、自然と外観に現れるそうだ。そのプランは繰り返しになるが、お施主様が言語化できないものを汲み取るヒアリングから誕生する。
自分でも気がついていない要望を可視化し、提案してくれる。そのような建築家は、とても頼りになる存在ではないだろうか。このような建築家をお探しの方は、いちどコンタクトしてみることをお勧めしたい。
撮影:株式会社ケイ・エスト・ワークス 小林勇蔵
基本データ
| 作品名 | 青葉の住居 |
|---|---|
| 所在地 | 横浜市青葉区 |
| 敷地面積 | 300.21㎡ |
| 延床面積 | 212.46㎡ |
| 家族構成 | 夫婦+子ども2人 |
| 予算 | 7000万円台 |
設計者情報
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