梁などの構造材をあえて露出「現しの家」特集2

お家を垂直方向に支える「柱」、水平方向に支える「梁」など
構造材をあえて露出する、そんなデザインが今、話題に。

柱や梁を露出することで、天井高が上がり、より開放的な空間に。
また、ハイサイドライトが取り込め、より明るい空間に仕上げることも可能。
さらには、インテリアデザインの幅も広がり、日々の暮らしにより一層、
彩(いろどり)をもたらしてくれます。

今回は、そんな多様性に富んだ「現(あらわ)しのある家」をご紹介いたします。
ぜひみなさまの住まいづくりの参考にしてください。

切妻屋根そのままの形を表現した天井。 木の温もりあふれる生活空間で絶景を享受

熊本県熊本市 / 切妻と土間の家

なんとこの天井、金具を使用していないのだ。切妻屋根のフォルムや木材の美しさをそのまま見せようと、一般的な梁や金具を使って固定する方法ではなく、両側からくる垂木を削り、組み合わせて固定する方法を採用した。垂木の本数が多い理由は、そのうえでがっちりとした構造を実現するために、屋根を強くする必要があったからだという。おかげで、整然と垂木が並んだ姿が壮観な、木の雰囲気が存分に感じられる天井ができた。

切妻屋根の下は先述の土間、LDK、奥さまの書斎や子ども部屋としてのフリースペースなどがある。土間Aを含むLDKはワンルーム空間で、土間Bとの間、また逆側にあるプライベートな居室の間は壁や引き戸で仕切った。そのうえで壁面の上部に空間をつくり、視線がぬけることで奥行きが感じられるように計画。天井の美しさを損なわず、そのうえ室内に広々とした印象を与えている。

将来を見据えた間取りの開放的な住居。 木の温もりは構造材を活用して表現

佐賀県鳥栖市 / 萱方の住宅

大らかに囲う天井は、仕上げ材を省き木の構造材を現しにした。「普段は日の目を見ることが少ない梁などの構造材ですが、美しく並べれば魅力的に見せることができます」と山口さん。要望に応えるために新たに素材をプラスするのではなく、必要な素材を活用することでコストダウンも実現した。

窓も的確に計画し、窓際のリビングなどは豊かに光が入る。しかしそれだけだと、どうしても中心に向かうにつれて空間が暗くなってしまうと山口さん。そこで、屋根の頂部に天窓を計画した。家の中心から入れた光を、壁の上部の空間を通してそれぞれの居室まで届け、2階全体を明るくしている。加えて壁面にはスポットライトの多くを上向きに設置。天井に反射した光が、広い範囲を明るく照らすという。

施主と建築家の切妻屋根への想いが結実 水平の軒がつくる凛とした佇まいの家

長野県松本市 / 松本岡田の家 − 切妻六.五間堂 −

目時さんの工夫は、切妻屋根をはじめとする基本プランにとどまらない。室内空間にも、
日々の生活を豊かにするためのアイデアにあふれている。

広い空間が単調にならないようにLDKは漆喰の白と黒を基調とし、差し色として自然な木の色を持つヤマザクラを造作家具として使用した。目時さんは室内の色合いを決める際に、一度スケッチをモノクロにして確認している。こうすることで濃淡がわかるそうだ。

ブラックウォールナットのフローリングも貼り方を工夫し、ヘリンボーン柄にすることで変化をつけている。とても広いLDKなので、できれば幅の広い床材を使いたかったのだが、それらはとても高価だ。そこで通常の幅の床材をヘリンボーン柄にすることで、視線を奥に向ける効果を狙ったという。

家族や親せき、ご近所さんとの「縁」を育む 老境を迎える夫婦のための、縁側のある家

島根県出雲市 / 里方の家

リビングにあえて扉を設けることで、来客にリビングを見せずに和室へといざなうことができる。普段は扉を開け放つことで庭の景色も楽しめる。扉1枚あることで「パブリック」と「プライベート」の切り分けを見事に成し遂げた。

リビングは切妻屋根の形状を活かした天井現し。高さ方向と、眼前に広がる庭の景色からもたらされる開放感抜群の居心地の良さだ。杉板の床や天井、珪藻土の壁が柔らかく上質な空間をもたらしている。

「ほっとできる空間になるよう、慣れ親しんできた自然素材を選びました。また、できるだけ県産材を使用することで地産地消にもつなげています」と岡さん。

「45度回転」はメリット満載。多様な居場所と、のびやかな広がりを

東京都大田区 / 大田区の家

この家は切妻屋根だが、片山さんは屋根の一部(道路からは見えない)を90度回転させて、LDKの天井に起伏の変化をつけた。LDKは現し天井なので、異なる方向から垂木が延びて合わさる複雑な美しさが生まれ、LDK全体がアートのよう。屋根の回転による隙間を利用した三角形のハイサイドライトなど、外部の視線が入らない窓も多数あり、道路側以外の3面は隣家があるにもかかわらず採光は抜群。、東西南北全てからの光が届き、時間帯ごとに日差しや空の変化を感じる気持ちの良い住まいとなっている。

あえて選んだのは旗竿地。住宅が密集する エリアで手に入れた、明るく心地よい暮らし

熊本県菊池郡 / 武蔵丘の家

LDKは、先述の通り庭に向かう大きな窓が南側にある。小さいボリュームの玄関が向かいにあるため直射日光は入らないが、庭が明るいおかげで柔らかな光を得られる。また、隣家の庭を挟むおかげで視線が届きにくい東側にも大きく開口し、さらに隣家が迫る北側にも、すりガラスの羽目殺しの窓を設けた。このように、間接的に光を入れられる場所はきっちりと開けて陽だまりのような空間を実現した。

3区画の一番奥の旗竿地だからこそ、通る人も車も限られておりプライバシーをより一層保つことができたと大谷さん。庭に木を1本植えただけで、道路側からの視線もしっかりと遮ることができた。お子さまたちが安全にのびのびと遊べるのはもちろんのこと、今ではご両親などが遊びにきたとき、玄関からではなく庭を突っ切り、直接リビングの窓を介してやりとりすることもあるのだとか。これも、旗竿地だからこその思わぬ利点だといえるだろう。

沖縄の気候風土、文化を熟知した匠がつくる 混構造と赤瓦屋根の二世帯住宅

沖縄県与那原町 / 与那原の家

それでは邸内を見ていこう。まずは親世帯から。玄関を入り歩を進めると見えてくるのが広々としたLDKだ。コンクリートの壁でありながらも、床や家具、現しの天井の垂木が木の温もりを感じさせてくれる。これぞ混構造の生むほっこり空間。大開口の先に広がる庭からの開放感、三角屋根高さ方向の広がりをもたらしている。屋根下には窓が設けられ、光を室内に導くほか、風の通り道にもなるという。赤瓦屋根にいくつもの役割を持たせてしまうことには驚かされる。

リビングの隣には、仏壇を備えた和室。扉を開け放つことで1つの大空間ともなる。
「沖縄は、先祖を大事にする文化があり、折に触れ親せきが集まって仏壇に手を合わせることが多いんです」と大城さん。そのため、大人数が集まっても十分対応できるよう配慮したゾーニングとしたのだという。

光あふれる明るい室内 大小さまざまな窓が光も景色も

愛知県豊田市 / 緑豊かな中庭のある平屋の住まい(豊田市の平屋)

林邸は、リビングとダイニングキッチンはあえてゾーンを分けている。庭にせり出すように箱(棟)を配置することで、角が数多くできる。その角にも窓をつけることで、景色の広がりや風の通り道を作り出した。

リビングもダイニングキッチンも垂木を現しにして木の力強さを感じさせてくれる。リビングは片流れで空間に高さからくる開放感も感じさせてくれるし、一方のキッチンは山型で、包まれる・守られるような安心感のある空間となっている。

渋く、ダイナミックな印象のLDK。 変形敷地だからこそ広々と感じる空間構成

兵庫県伊丹市 / 野間の家

落ち着いた雰囲気を実現したのは間接照明だ。キッチンの収納棚の上に照明を入れ、壁面を照らしたり、ポイントポイントで天井に光を当てたりすることで好みの雰囲気をつくりあげた。

それだけではない。お子さまがまだ小さいこともあり、生活のスタイルや必要な明るさが変わることもあるかもしれない。そこで、天井の垂木にダクトレールを設置。天井のダイナミックさは損なうことなく、電球の位置や数を自在に変えられるようにした。